第4話 鉄砲玉とリモコン
雨の夜。
藤沢とヤスは、破門されたまま“鉄砲玉”として現場に向かう。
冷たい雨、黒服たちの影、
そして、逃げ場のない空気。
藤沢は震え、
ヤスはなぜか元気で、
二人の温度差はいつも通り。
だが、この夜は“いつも通り”では終わらない。
藤沢の覚悟と、
ヤスのバカが、
最悪の形で交差する。
――雨の夜の“本番”が始まる。
雨は、夜の街を容赦なく叩きつけていた。
ビルのネオンが雨粒に砕け、地面に滲んで揺れている。
冷たい風が吹き抜け、濡れたアスファルトの匂いが鼻を刺した。
藤沢文太は、ビルの影に身を潜めながら、懐のドスを握りしめた。
手が震えているのは、寒さのせいか、それとも恐怖か。
(……いよいよだな。
鉄砲玉なんざ、誰かがやらなきゃいけねぇ役目だが……
まさか自分がやる日が来るとはな)
横を見ると、ヤスが立っていた。
雨に濡れた金髪がピンと立ち、妙に元気そうだ。
「兄貴、納得いかないっすよ!
あんなもん部屋に置いとく方が悪いっすよ!」
「……黙れ。最後くらい貢献しねぇとな」
藤沢は低く言った。
ヤスの声が大きいと、黒服に気づかれる。
ビルの前には黒塗りの高級車が停まり、
黒服たちが傘も差さずに立っていた。
雨の中でも微動だにしないその姿は、まるで石像のようだ。
「ヤス、寒くないか?」
返事がない。
「ヤス?」
振り返ると――
ヤスが立ちションしていた。
「バカ! 今かよ!!」
「いや、緊張すると出るんすよ……」
藤沢は頭を抱えた。
(……こいつといると、緊張なんて続かねぇんだよな)
ヤスはスッキリした顔で戻ってきた。
「兄貴、準備万端っす!」
「……お前だけな」
その時――
ビルの扉が開いた。
ターゲットが姿を現す。
黒服が傘を差し出し、ターゲットを車へ誘導しようとした瞬間。
藤沢は息を呑んだ。
「行くぞ!」
雨を蹴り、藤沢は飛び出した。
懐のドスを握りしめ、一直線にターゲットへ向かう。
だが――。
「どこ見て歩いてんだ、コラァ!」
横から黒服がタックルしてきた。
「ぐっ……!」
藤沢は地面に叩きつけられ、息が詰まる。
「何者だテメェ!」
(終わった……)
視界が揺れる中、藤沢は叫んだ。
「行けぇぇえ、ヤス!!」
その瞬間――
ヤスが藤沢と黒服の上を、
バク転しながら飛び越えた。
「死ねぇぇえ!!」
ヤスは腹巻きから“得物”を抜き、
ターゲットに振り下ろした。
バキッ!!
「……リモコン?」
ターゲットは頭を押さえて倒れたが、致命傷ではない。
藤沢は目を見開いた。
(おい……なんでリモコンなんだよ……)
ヤスは真剣な顔で言った。
「兄貴……ドスとリモコン、似てるんすよ……」
「似てねぇよ!!」
その瞬間――
銃声が響いた。
パン! パン! パン!
「兄貴ぃぃぃ!!」
ヤスの身体が跳ね、
蜂の巣になって倒れた。
「やめろぉぉぉ!!」
藤沢が叫ぶが、
黒服の刃が藤沢の腹に突き刺さる。
ドスッ。
ドスッ。
ドスッ。
血が雨に混ざり、地面に広がっていく。
(ヤス……今、病院……連れてってやるからな……)
藤沢は手を伸ばすが、
その手はヤスに届かない。
視界が暗くなっていく。
雨の音が遠ざかる。
――こうして二人は死んだ。
静かで、あっけなく。
まるで、誰にも惜しまれない命のように。
だが、この死は終わりではなかった。
二人の物語は、
ここから始まるのだ。
読んでくれてありがとう。
藤沢はタックルされ、
ヤスはリモコンを武器と間違え、
ターゲットは軽く負傷し、
黒服は激怒し、
最後は銃とドスで地獄絵図。
この二人、どう見ても鉄砲玉に向いてない。
だが、ここで死んだことで、
ようやく“異世界編”が始まる。
次回、藤沢とヤスは――
まさかの森で目を覚ます。
引き続き、この不運な二人を見届けてほしい。




