第24話 能力の秘密(完結)〜寿命と文明の行方〜
ヤスの能力が“文太の寿命”を削っていた――
その衝撃の真実が明かされ、藤沢組は大きな転換点を迎えていた。
文明は発展し、街は広がり、
ゴブリン達は未来へ向かって歩き始めている。
だがその裏で、
文太は胸の冷たさという“死の影”を抱えていた。
それでも彼は歩みを止めない。
文明を作るのは能力ではなく、
仲間の努力と、積み重ねた日々だと知っているから。
そして――
湧き水がもたらす“救済”と、
未来へ続く文明の物語が、
ここでひとつの結末を迎える。
映画のラストシーンのように、
壮大で、少し笑えて、胸が熱くなる第24話。
ヤスの能力が“俺の寿命”を代償にしていた――
その真実を知ってから、数日が経った。
俺は、胸の冷たさを抱えながらも、
いつも通り集落の見回りをしていた。
ミドジは建築班を率いて長屋を建て、
ミドリは読み書き教室を開き、
ヤスは――
「組長! 今日は能力使ってませんよ!
ほら、手ぶらっす!」
「当たり前だろ!!
俺の寿命が減るんだぞ!!」
「へへ……」
(……こいつ、絶対またやらかすな)
だが、胸の冷たさは、
以前よりも“軽く”なっていた。
理由はわかっている。
あの山の湧き水だ。
あれを飲むと、胸の冷たさが和らぐ。
まるで寿命が戻っていくような感覚がある。
(……あの声の野郎、俺にだけ救済措置つけてたんだな)
まぁ、理由はどうあれ助かる。
✦文明の発展
集落は、もはや“村”ではなかった。
水路は街を巡り、
畑は果てしなく広がり、
長屋は整然と並び、
移住者は増え続けている。
ミドジが胸を張る。
「組長、藤沢組は……
もはや一つの“街”なのですじゃ!」
「そうだな……
みんなが頑張ったからだ」
ミドリが微笑む。
「組長、読み書きできる子が増えてきましたよ」
「そうか……良いことだ」
ヤスが言う。
「組長、最近“人間の商人”も来るようになりましたよ!」
「そりゃそうだろ。
うちの野菜は品質が違うからな」
(……文明ってのは、こうやって広がっていくんだな)
胸の冷たさは、
湧き水のおかげでほとんど消えていた。
✦未来の話
夕方。
俺は高台に立ち、
広がる街――いや、“フジサワクミ”を見下ろしていた。
(……すげぇな。
ちょっと前まで、ただのゴブリンの集落だったのに)
ミドジが隣に立つ。
「組長、藤沢組は……
本当に大きくなりましたのじゃ」
「ああ。
みんなの努力のおかげだ」
ヤスが後ろから走ってくる。
「組長ー!
今日の収穫、めっちゃ多かったっすよ!」
「おう、よくやった」
ミドリが微笑む。
「組長、みんな幸せそうですよ」
「そうだな……」
(……これでいい。
能力なんていらねぇ。
みんなで作った文明こそ、本物だ)
胸の奥が、温かくなった。
✦そして、未来へ
――時は流れ、数百年後。
フジサワクミは、
世界に名を轟かせる一大商業都市となっていた。
石畳の道路を自動車が走り、
高い建物が立ち並び、
多種多様な種族が行き交う。
第15代 藤沢組 組長、
ガルバス・フジサワが街を訪れていた。
彼の祖先――
藤沢 文太
そしてその従者、
ヤス。
彼らが築いた文明の始まりの地に、
初代組長の銅像が建てられることになったのだ。
✦除幕式
「では、我らゴブリンの地位向上と発展の礎を築かれた
偉大なる指導者、フジサワ様とヤス様の銅像の除幕式を行います!」
布が外され、
銅像が姿を現す。
そこには――
胸を張って立つ文太と、
その横で笑うヤスの姿があった。
ガルバスは静かに呟いた。
「見えますか……
この発展を遂げた街の姿を。
ご先祖様のおかげで、ゴブリン達はこんなに豊かになりましたよ」
一筋の涙が頬を伝う。
✦そして現在
「って、感じでな!」
俺は鍬を持ちながら、
不平を言うゴブリン達に未来予想図を語ってやった。
「だから今は、俺の言うこと聞いて働け!!
未来の子孫が豊かになるんだよ!!」
「えぇ〜、子孫が豊かでも、俺達は?」
「誰だよ、ガルバス・フジサワって!?」
「組長、サボってるだけじゃないですか?」
「うぐぐ……お前ら……!」
ゴブリン達は笑いながら作業に戻っていく。
「……頑張れよ」
俺はタバコを吸い、空を見上げた。
胸の冷たさは、もうない。
湧き水のおかげで寿命は戻ったし、
ヤスの能力も封印した。
これからは――
みんなの努力で文明を作るんだ。
「よし、働け働け!
文化的な明日のために、俺は止まらねぇぞ!!」
今日も、藤沢文太はゴブリン達を働かせる。
文明のために。
未来のために。
そして――
みんなの幸せのために。
~~【完】~~
読んでくれてありがとう。
第24話は、文太の寿命問題にひとつの答えが出て、
藤沢組の文明が“本物”へと変わる節目の回だった。
文明は能力で作るものじゃない。
誰かの努力、積み重ね、汗と笑顔で作られるものだ。
文太がそう気づいた瞬間、
藤沢組はただの集落から“街”へと進化した。
そして未来の描写――
数百年後のフジサワクミは、
文太とヤスの生きた証が形になった世界。
文明は続き、
人々は豊かになり、
初代組長の銅像が街を見守る。
だが現在の文太は、
そんな未来を語りながらゴブリン達に鍬を持たせている。
笑えて、泣けて、
そして“文明とは何か”を考えさせられる締めの回。
短い間でしたが、読んでくれてありがとうございました。




