第21話 繁栄の兆し
黒牙団との戦いから時間が経ち、
藤沢組は再び平穏を取り戻しつつあった。
街は復興し、移住者は増え、
文明はさらに加速していく。
だが――
その裏で、文太の胸に走る“あの痛み”は
日に日に強くなっていた。
戦いの疲労か、
能力の代償か、
それとも別の何かか。
そんな中、藤沢組に
“ある知らせ”が届く。
それは、藤沢組の未来を大きく揺るがす
新たな波乱の始まりだった。
文明の発展と、文太の異変。
そして新たな章の幕開けとなる第21話。
黒牙団との戦いから、さらに数日が経った。
集落は――いや、もう“村”と呼んでもいい規模になっていた。
水路は広がり、
畑はどんどん拡張され、
長屋は次々と建てられ、
移住者も増えている。
ミドジは建築班を率いて木材を運び、
ミドリは読み書き教室を開き、
ヤスは――
「組長! 見てくださいよ!
子供達に“竹とんぼ”作ってあげたっす!」
「お前……また能力使ってねぇだろうな?」
「使ってないっすよ! 竹は昨日切ったやつっす!」
(……本当にか?)
胸の奥が、またズキッと痛んだ。
(……くそ、またかよ)
痛みは一瞬だが、
冷たい感覚だけが残る。
ヤスが心配そうに覗き込む。
「組長、また顔色悪いっすよ?」
「お前のせいだよ……」
「えぇ!? 俺なんかしましたっけ!?」
(お前が強すぎるんだよ……)
✦文明化が進む藤沢組
ミドジがやってきた。
「組長、長屋がまた一棟完成しましたのじゃ!」
「おう、助かる」
ミドジは胸を張る。
「これで移住者もさらに受け入れられますのじゃ!」
「そうだな。
黒牙団を倒したことで、周辺の集落から人が来る。
その受け皿を作るんだ」
ヤスが言う。
「組長、最近“人間”も来るようになりましたよね」
「そうだな。
ゴブリンだけじゃなく、犬っぽいのとか、猫っぽいのとか……
なんか色々来てるな」
ミドジが頷く。
「藤沢組は、今や“安全で、腹いっぱい食える場所”として有名なのですじゃ!」
(……それは良いことだ)
胸の冷たさが、またズキッと痛む。
(……良いことなんだけどよ)
✦文太、胸の異変を隠し続ける
ミドリが駆け寄ってきた。
「組長、また胸が痛むんですか?」
「だ、大丈夫だよ……」
「大丈夫じゃない顔してます!」
(……バレてる)
ヤスが言う。
「組長、やっぱり医者呼んだ方が……」
「医者なんていねぇよ!!」
(……なんだよこれ。
戦いが終わったのに、全然治らねぇ)
胸の冷たさは、
まるで“何かが削られている”ようだった。
✦繁栄の裏で、影が濃くなる
その日の夕方。
俺は集落の高台に立ち、
広がる畑と長屋を見下ろしていた。
(……すげぇな。
ちょっと前まで、ただのゴブリンの集落だったのに)
ミドジが隣に立つ。
「組長、藤沢組は……
本当に大きくなりましたのじゃ」
「ああ。
みんなが頑張ったからだ」
ヤスが後ろから走ってくる。
「組長ー!
今日の収穫、めっちゃ多かったっすよ!」
「おう、よくやった」
ミドリが微笑む。
「組長、読み書きできる子が増えてきましたよ」
「そうか……良いことだ」
(……みんな、成長してる。
文明が、確かに前に進んでる)
だが――
胸の奥の冷たさは、
日に日に強くなっていた。
(……なんだよこれ。
なんで治らねぇんだよ)
ヤスが心配そうに言う。
「組長……本当に大丈夫っすか?」
「大丈夫だよ……」
(……大丈夫じゃねぇけどな)
胸の冷たさは、
まるで“寿命が削られている”ようだった。
だが――
この時の俺はまだ知らなかった。
その“影”が、
ヤスの能力と深く繋がっていることを。
読んでくれてありがとう。
第21話は、黒牙団編の余波が落ち着き、
藤沢組が“次の段階”へ進むための
静かな転換点となる回だった。
文明が発展すれば、
当然それを見つける者も増える。
今回の“知らせ”は、その象徴。
そして同時に、
文太の胸の痛み――
後に明かされる“寿命の代償”が
いよいよ無視できないレベルに近づいていく。
ここから物語は、
文明の発展と文太の異変が同時に進行する
第二章の核心へ突入する。
次回は、藤沢組の未来を左右する
“重大な選択”が迫られる回。
文太の胃痛は悪化するけど、
街は確実に前へ進む。




