第19話 藤沢文太、改革を始める
黒牙団との戦いが終わり、藤沢組はようやく平穏を取り戻しつつあった。
だが、戦いの後には“戦いの後始末”がある。
壊れた家の修復、怪我人の治療、物資の再配分、
そして黒牙団の残した“空白地帯”の管理。
文明が発展すればするほど、
藤沢組は“街”としての責任を背負うことになる。
そんな中、文太の胸に走る“あの痛み”が、
戦いの後になってむしろ強くなっていく。
さらに、黒牙団の敗北を聞きつけた周辺の集落が、
次々と藤沢組へ接触を求めてくる。
文明の発展と、文太の異変。
そして新たな“勢力図”が動き出す第19話。
黒牙団との連戦から数日が経った。
集落は、まるで何事もなかったかのように活気づいていた。
畑ではゴブリン達が働き、
建築現場では木材の音が響き、
ミドリは子供達に読み書きを教えている。
だが――
俺の胸の奥には、まだ“冷たい石”が残っていた。
(……なんだよこれ。戦いは終わったのに、全然スッキリしねぇ)
ヤスが横から覗き込む。
「組長、まだ具合悪いんすか?」
「お前のせいだよ……」
「えぇ!? 俺なんかしましたっけ!?」
(お前が強すぎるんだよ……)
ミドジがやってきた。
「組長、昨日の戦いで壊れた柵の修理が終わりましたのじゃ!」
「おう、助かる」
ミドジは胸を張る。
「しかし、黒牙団を二度も撃退するとは……
藤沢組、最強なのですじゃ!」
「いや、最強なのはヤスだよ」
ヤスがドヤ顔で親指を立てる。
「へへっ!」
(……こいつの能力、やっぱり何かある)
胸の冷たさは、
まるで“何かが削られている”ような感覚だった。
だが、今はそれよりも――
集落の未来が気になっていた。
✦文太、決意する
俺は深呼吸した。
「……よし。改革を始めるぞ」
ヤスが首をかしげる。
「改革って、何するんすか?」
「まずは“生活の安定”だ。
家、食料、水……全部整える」
ミドジが頷く。
「確かに、黒牙団との戦いで思い知りましたのじゃ。
力だけでは守れませぬ」
「そうだ。
俺達は“文明”を作るんだよ」
ヤスが目を輝かせる。
「文明っすか!?
なんかカッコいいっすね!」
「カッコいいとかじゃねぇよ……」
(でも、まぁ……悪くねぇ響きだな)
✦改革① 水路の拡張
まずは水だ。
「ミドジ、水路をもっと広げるぞ。
畑も増やすし、家も増える。水が足りなくなる」
「了解なのですじゃ!」
ミドジはすぐに作業班を集めた。
ヤスが言う。
「組長、水路って……また山から引くんすか?」
「そうだ。
あの湧き水は綺麗だし、量も多い。
あれを最大限活用する」
(……あの水、俺の胸の冷たさを少し和らげる気がするんだよな)
ヤスが首をかしげる。
「組長、なんか今、変な顔してませんでした?」
「してねぇよ!」
(……してたかもしれねぇ)
✦改革② 長屋建設ラッシュ
「ヤス、建築班を増やすぞ。
長屋をもっと建てるんだ」
「了解っす!
ゴブリン達も慣れてきたし、次からは同時に三棟いけますよ!」
「三棟!? やるじゃねぇか!」
「へへっ、組長のためっすから!」
(……こいつ、たまに本当に良い奴なんだよな)
ミドジが言う。
「組長、長屋が増えれば、移住者も増えますのじゃ!」
「そうだ。
黒牙団を倒したことで、周辺の集落から人が来る。
その受け皿を作るんだ」
(……そして、労働力を増やす。
能力に頼らずに発展するためには、人手が必要だ)
✦改革③ 農業の本格化
「畑も拡張するぞ!」
ヤスが目を輝かせる。
「組長、また農業っすか!?」
「当たり前だろ。
食料が安定しなきゃ文明なんて作れねぇよ」
ミドジが頷く。
「組長、農業班を増やしますのじゃ!」
「頼む」
(……胸の冷たさは気になるが、今は動くしかねぇ)
✦文太、胸の異変を隠す
作業の指示を出し終えた頃――
胸の奥がズキッと痛んだ。
「っ……!」
ミドリが気づく。
「組長!? 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だよ……」
ヤスが心配そうに覗き込む。
「組長、やっぱり医者呼んだ方が……」
「医者なんていねぇよ!!」
(……なんだよこれ。
戦いが終わったのに、全然治らねぇ)
だが、倒れている暇はなかった。
「よし……行くぞ。
藤沢組を、もっとデカくするんだ」
ミドジが拳を握る。
「組長、ついていきますのじゃ!」
ヤスが笑う。
「組長、文明作りましょう!」
ミドリが微笑む。
「組長、頑張りましょうね」
(……ああ。
みんなのためにも、前に進むしかねぇ)
胸の冷たさは、
まるで“何かが削られている”ようだった。
だが――
この時の俺はまだ知らなかった。
その“削られている何か”が、
俺の寿命だということを。
読んでくれてありがとう。
第19話は、黒牙団編の余波と、
藤沢組が“地域の中心”へと変わり始める過程を描いた回だった。
黒牙団が消えたことで、
周辺の集落は不安定になり、
その不安が藤沢組へと押し寄せてくる。
文明が発展すれば、
当然“頼られる側”になる。
文太はその現実に向き合い、
組長としての責任をさらに深く自覚していく。
そして今回から、
文太の胸の痛み――
後に明かされる“寿命の代償”が本格的に動き始める。
次回は、藤沢組の発展を揺るがす
“新たな来訪者”が現れる回。
文太の胃痛は悪化するけど、
街は確実に前へ進む。




