第18話 勝利と代償
黒牙団との死闘を乗り越え、
藤沢組はついに“生き残る力”を手に入れた。
だが――
戦いが終わったからといって、
文太の苦労が終わるわけではない。
むしろ、ここからが本番。
戦後処理、負傷者のケア、
集落の復旧、物資の再配分、
そして移住希望者の急増。
さらに、文太の胸に走る“あの痛み”が、
戦いの後になってむしろ強くなっていく。
文明の発展と、文太の異変。
藤沢組の未来が大きく動き出す第18話。
黒牙団“兄貴軍団”を撃退してから、一夜が明けた。
集落は、まるで祭りのように賑わっていた。
ゴブリン達は勝利の余韻に浸り、
ミドジは戦利品を整理し、
ミドリは怪我人の手当てをしている。
ヤスは――
「組長! 昨日の俺、マジでカッコよかったっすよね!」
「うるせぇよ……」
俺は頭を抱えていた。
(……なんか、胸が重い)
昨日の戦いの後から、
胸の奥に“冷たい石”が入ったような感覚が続いている。
痛いわけじゃない。
苦しいわけでもない。
ただ――
妙に、冷たい。
(なんだよこれ……)
ヤスが俺の顔を覗き込む。
「組長、顔色悪いっすよ? 寝不足っすか?」
「お前のせいだよ……」
「えぇ!? 俺なんかしましたっけ!?」
(お前が強すぎるんだよ……)
✦集落の復興と、文太の違和感
ミドジがやってきた。
「組長、昨日の戦いで壊れた柵の修理を始めますのじゃ!」
「おう、頼む」
ミドジは胸を張る。
「しかし、黒牙団を二度も撃退するとは……
藤沢組、最強なのですじゃ!」
「いや、最強なのはヤスだよ」
ヤスがドヤ顔で親指を立てる。
「へへっ!」
(……こいつの能力、やっぱり何かある)
昨日の戦いの最中、
ヤスの周りに“黒い靄”のようなものが見えた気がした。
気のせいかもしれない。
疲れていたのかもしれない。
だが――
胸の冷たさは、気のせいじゃない。
(……なんだよこれ。嫌な感じしかしねぇ)
✦文太、倒れる
昼過ぎ。
俺は畑の見回りをしていた。
「組長、こっちの畝、昨日より伸びてますよ!」
「お、おう……」
(……なんか、視界が揺れる)
ミドリが心配そうに駆け寄ってきた。
「組長、大丈夫ですか? 顔色が……」
「だ、大丈夫だよ……」
そう言った瞬間――
視界が真っ白になった。
「――っ!」
膝が崩れ、地面に倒れ込む。
「組長ーーー!!」
ミドリの声が遠くなる。
胸の奥の冷たさが、
今度は“鋭い痛み”に変わった。
(……なんだよこれ……)
意識が、暗闇に沈んでいく。
✦目覚め
気がつくと、俺は自分の家のベッドにいた。
ミドリが涙目で覗き込んでいる。
「組長……! よかった……!」
ミドジも心配そうに立っている。
「組長、突然倒れたのですじゃ……」
ヤスは――
「組長! 死んだかと思ったっすよ!!」
「縁起でもねぇこと言うな!!」
俺は起き上がろうとしたが、
胸の奥がズキッと痛んだ。
(……やっぱりおかしい)
ミドジが言う。
「組長、医者を呼びますか?」
「いや……大丈夫だ」
(医者なんていねぇしな……)
ヤスが腕を組む。
「組長、もしかして……
俺が昨日、ちょっと頑張りすぎたせいっすかね?」
「お前の“ちょっと”は信用ならねぇんだよ!!」
ヤスは頭をかく。
「でも、俺……能力使ってないっすよ?」
「……本当にか?」
「本当っすよ!
組長が“使うな”って言ったから、我慢したんす!」
(……じゃあ、この胸の痛みは何なんだよ)
ミドリが手を握ってくる。
「組長……無理しないでくださいね……?」
「お、おう……」
(……なんだよこれ。
戦いが終わったのに、全然安心できねぇ)
胸の奥の冷たさは、
まるで“何かが削られている”ような感覚だった。
だが――
この時の俺はまだ知らなかった。
この違和感こそが、
“能力の代償”の始まりだということを。
読んでくれてありがとう。
第18話は、黒牙団編の“後始末”と、
文太の身体に起きている“異変”が本格的に動き出す回だった。
戦いが終わると、
どんな組織でも必ず“戦後処理”が必要になる。
藤沢組も例外ではなく、
文明化したからこそ抱える問題が一気に押し寄せてくる。
そして今回から、
文太の胸の痛み――
後に明かされる“寿命の代償”の伏線が濃くなっていく。
ここから物語は、
文明の発展と文太の異変が同時に進行する“第二章”へ突入する。
次回は、藤沢組の発展をさらに加速させる
“新たな技術”と“新たな問題”が登場する回。
文太の胃痛は悪化するけど、
街は確実に前へ進む。




