第17話 黒牙団、最後の牙
黒牙団本隊との戦いが激化する中、
ついに“黒牙団総頭領”が姿を現す。
バルザード。
圧倒的な武力と統率力を持つ、
黒牙団最強のゴブリン。
彼が率いる“兄貴軍団”が参戦し、
戦場は一気に地獄と化す。
藤沢組は壊滅寸前。
文太は倒れ、
ヤスは追い詰められ、
ゴブリン達は散り散りになる。
それでも――
守りたいものがある。
藤沢組 VS 黒牙団、最終決戦。
運命が決まる第17話。
黒牙団の本隊を撃退してから、二日後。
集落は一見平和だった。
だが――俺の胃は、まったく平和じゃなかった。
(……絶対このまま終わらねぇよな)
ヤスは畑で子供ゴブリン達と遊んでいる。
ミドジは建築現場で指揮をとり、
ミドリは読み書き教室を開いている。
(平和すぎる……逆に怖ぇな)
そんな時――
「組長ーーー!!」
ミドジが全力で走ってきた。
「またかよ……今度は何だ?」
ミドジは息を切らしながら叫んだ。
「黒牙団の……“頭領の兄”が……こちらに向かっているとの報告が入ったのですじゃ!」
「……また?何だよ、自分で頭領の兄ですって言ってのか、そいつは」
「街の治安維持に派遣してたゴブリンから頭領には兄がいるって聞いてたのですじゃ」
「ですじゃ、じゃないよ、何でそんな大事な事報告しないの?」
「次から、気をつけますのですじゃ」
「次からって……どう思うよヤス、反省してると思……えぇ」
(いやな予感しかしない)
ヤスが目を輝かせていた。
「組長!兄貴分っすよ兄貴分!この前のより絶対強いっすよ!」
「なんで嬉しそうなんだよ、お前は!!」
ミドジが続ける。
「敵は……三百名以上とのことですじゃ!」
「さ、三百!? 増えてんじゃねぇか!!」
(偵察 → 本隊 → 兄貴軍団
なんで段階的に強くなってくんだよ、クソRPGか!!)
ヤスが拳を握る。
「組長、俺がやります!」
「ダメだ!!」
俺は即座に怒鳴った。
ヤスがビクッとする。
「な、なんでっすか……?」
「お前の能力、なんか……こう……
“命削ってる感”があるんだよ、って何回目だ、このやりとり!!」
「えぇ……?」
(いや、えぇ……?じゃないよ、何これ、ループしてるの?)
ミドジが真剣な顔で言う。
「組長の勘は当たるのですじゃ。
ここは慎重にいくべきかと」
(うん、言うの解ってた)
ヤスは渋々頷いた。
「……わかりましたよ。
じゃあ、能力は使わずに戦います」
(うん、同じ。絶対使わなきゃいけない状況になるんだろうなぁ……)
✦黒牙団、兄貴軍団襲来
その日の夕方――
「敵襲ーーー!!」
見張りのゴブリンが叫んだ。
俺達は急いで集落の入口へ向かう。
そこには――
黒い鎧を着た男達が、
まるで黒い津波のように押し寄せていた。
「ひぃぃぃぃ!! 多すぎだろ!!」
ヤスがニヤリと笑う。
「組長、燃えてきたっす!」
「燃えるな!!」
黒牙団の先頭に立つ男がいた。
身長二メートル半。
筋肉が岩みたいに盛り上がり、
背中には巨大な黒狼の毛皮。
「俺は黒牙団“総頭領”――“黒狼王バルザード”だ」
(名前からしてラスボスなんだけど!?)
バルザードは俺を睨む。
「弟を倒したのは……貴様か?」
「いや、倒したのはヤスだよ」
「組長、売らないでくださいよ!」
「だって事実だろ!」
バルザードは戦斧を構えた。
「弟の仇……
ここで全員殺す」
(あー……完全に殺る気だこれ)
ヤスが前に出る。
「組長、俺がやります!」
「お前は後ろで待機!!」
「えぇぇぇぇぇ!!?」
ミドジが槍を構える。
「組長、我らが先陣を切るのですじゃ!」
「頼んだぞ!」
✦藤沢組 vs 黒牙団 兄貴軍団戦
「突撃ーーー!!」
ミドジ率いるムキムキゴブリン達が突撃する。
「うおおおおお!!」
黒牙団も叫びながら突撃してくる。
ガキィィィン!!
ドゴォォォ!!
バキィィィ!!
(……おい待て。この流れ……前にも見たぞ?
てか“偵察部隊の時とほぼ同じ展開”じゃねぇか!?)
ヤスが横で興奮している。
(ほらぁ)
「組長! 俺も行きたいっす!!」
「ダメだ!! お前は控え!!」
(無駄だろうけどね)
「なんでっすかぁぁぁ!!」
(ほうら、お前の“なんでっすかぁ”も二回目だよ!!
俺も大人しくなぞってるし、同じセリフ二度言わせる脚本家でもいるのか!?)
そこへバルザードが前に出る。
「雑魚共が……どけぇ!!」
(やめときゃいいのに)
ドゴォォォォン!!
地面が割れ、ムキムキゴブリン五名が吹っ飛ぶ。
(はい出た!!“地面割る系の強敵登場”!!
これも前と同じ!!
なんだテンプレイベント祭り開催中ってこと?!)
ヤスが叫ぶ。
「組長! あいつ、弟より強いっすよ!!」
「見りゃわかるわ!!」
(この“見りゃわかるわ”も二回目なんだよ!!
タイムリープしてるの?)
バルザードが俺を睨む。
「次は……貴様だ」
「俺弱いからやめて」
(さっさと話しを進めて、先に進めよう)
ヤスが予定調和で割って入る。
「組長に手ぇ出すなよコラァ!!」
(これも二回目。お前ら、デジャヴで俺を殺す気か!?)
バルザードが戦斧を振るう。
ヤスが素手で受け止める。
ギィィィィン!!
「なっ……!?」
(この“なっ……!?”も聞いた!!
絶対聞いた!!
黒牙団、語彙力少なすぎだろ!!)
ヤスが笑う。
「組長に手ぇ出す奴は、全員ぶっ飛ばす!」
ドゴォッ!!
バルザードが吹っ飛ぶ。
(はい、これも前と同じ!!
“ヤスがワンパンで頭領吹っ飛ばす”の二回目!!
黒牙団、学習しろよ!!
なんで毎回真正面から殴り合い挑んでんだ!!)
黒牙団の残党が叫ぶ。
「頭領がやられたぞ!!」
「に、逃げろ!!」
(この逃げ方も前と同じ!!もうテンプレすぎて逆に安心するわ!!
黒牙団、もしかして“逃げるのが本職”なんじゃねぇのか!?さあさあ、帰った帰った)
✦勝利の裏で
黒牙団の何しに来たのか良く解らない“兄貴軍団”を追い返したあと、
集落はお祭りみたいな騒ぎになっていた。
「もうないよな?終わりで良いよな?」
俺が呟くと、ミドジが胸をドンと叩く。
「組長! 見事な勝利ですじゃ!」
ミドリが駆け寄り、満面の笑みで腕を掴んだ。
「組長、本当に頼もしいです!」
ヤスはいつもの調子で親指を立てる。
「組長、俺ら無敵っすよ無敵!」
(……いや、無敵なのはお前の拳だけだろ)
周りは笑顔だらけで、空気は完全に“勝利ムード”なのに――
俺の胸の奥だけ、妙に落ち着かない。
(……なんだこのモヤモヤ。
勝ったのに全然スッキリしねぇ)
黒牙団は撤退した。
脅威は去ったはずだ。
なのに、
背中に冷たい風が吹き抜けるような感覚が消えない。
ヤスの背中を見ると、
その違和感がさらに強くなる。
(……気のせいだよな。
ただの疲れ……だよな?)
そう自分に言い聞かせながらも、
胸の奥に沈んだ“冷たい石”みたいな感覚だけは、
どうしても消えてくれなかった。
読んでくれてありがとう。
第17話は、黒牙団編のクライマックスであり、
藤沢組が初めて“死線”を越える回だった。
黒牙団総頭領バルザードとの戦いは、
藤沢組にとって避けられない試練であり、
文太とヤスの絆、
ゴブリン達の成長、
そして藤沢組という“家族”の強さが試される場面。
この戦いを経て、
藤沢組はただの集落ではなく、
“生き残る力を持つ組織”へと変わる。
次回からは、
黒牙団戦の余波と、
文明化がさらに加速する“第二章”へ突入する。
文太の胃痛は悪化するけど、
藤沢組は確実に強くなる。




