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第15話 黒牙団、動く

藤沢組が文明化し、街としての形を整え始めた頃。

その発展ぶりは周囲の集落にも噂として広まり、

ついに“望まぬ相手”の耳にも届いてしまう。


――黒牙団。


略奪と暴力で周辺を支配する武装集団。

彼らは藤沢組の急成長を“脅威”と判断し、

偵察部隊を送り込んでくる。


文明の光が強くなるほど、影も濃くなる。

藤沢組は初めて“外部勢力との戦い”に直面する。


文太は組長として、

ヤスは相棒として、

ゴブリン達は仲間として――

初めて“守る戦い”に挑む第15話。

藤沢組が街で商売を始めてから、数日が経った。


ノコギリ、鉋、釘、ハンマー――

文明の利器は飛ぶように売れ、街の職人達は驚愕し、ギルドに“準治安維持組織”として正式に認められた俺達、藤沢組。

身分の保証がなされているので面倒なことも減った。


(……なんか、順調すぎて逆に怖ぇな)


そんな不安を抱えながら、俺――藤沢文太は、

集落の見回りをしていた。


ミドジが駆け寄ってくる。


「組長、大変なのですじゃ!」


「またか……今度は何だ?」


「黒牙団の偵察部隊が、近くの森に現れたとの報告が……!」


「黒牙団……?」


ヤスが横から口を挟む。


「組長、ほら、例のマジでヤバい奴等っすよ。

 ゴブリンの村を襲って、女や子供をさらって、男は殺すって悪者っす」


「お前、なんでそんな詳しいんだよ」


「ギルドマスター言ってたっすけど、一緒にいましたよね?大丈夫っすか?」

「あ」

(そうだ、怒りに燃えたんだった!ヤスに心配されるくらいヤバくなったのか、俺……

 いや、お前が俺に普段から心労かけ続けてるからってのが一番の理由だろ!……しかし、そんな大事なことを……ホントに俺大丈夫なのか?!怖っ)


若年性の痴呆なのではと本気でビビる俺に、ミドジが真剣な顔で言う。


「組長、黒牙団は、我らの集落を狙っている可能性が高いのですじゃ」


「……」

(そうだな。ゴチャゴチャ心配してる場合じゃねぇな。

 ……ついに“戦い”が来た)


俺は深呼吸した。


「よし、迎え撃つぞ!」


ヤスが拳を握る。


「組長、俺がやります! 能力使えば一瞬で――」


「ダメだ!!」


俺は即座に怒鳴った。


ヤスがビクッとする。


「な、なんでっすか……?」


「……お前の能力は、使いすぎると何か“良くない”気がするんだよ」


(ヤスの能力を使うたびに、胸がざわつく。

 嫌な予感しかしねぇ。最近特にそう思うようになったが、考えてみればチート過ぎる能力には、代償ってのがなけりゃ都合が良すぎるだろ……)


ヤスは不満そうに頬を膨らませた。


「組長、俺の能力、そんなに信用ないんすか……?」


「信用してるよ! してるけど……

 なんか、こう……“命削ってる感”があるんだよ!」


「えぇ……?」


ミドジが口を挟む。


「組長の勘は、妙に当たるのですじゃ。

 ここは慎重にいくべきかと」


ヤスは渋々頷いた。


「……わかりましたよ。

 じゃあ、能力は使わずに戦います」


(よし……ないとは思うが、用心に越したことはねぇって事で、これで少しは安心だ)



✦黒牙団、襲来

その日の夕方――


「敵襲ーーー!!」


見張りのゴブリンが叫んだ。


俺達は急いで集落の入口へ向かう。


そこには――

黒い革鎧を着た男達が十数名。

顔には牙のようなペイント。

手には剣や斧。


「うわ……なんか、悪役感すげぇな」


ヤスが呟く。


「組長、あいつら絶対悪党っすよ」

「ああ、だな」

(確かに見た目でわかるな……)


黒牙団のリーダーらしき男が前に出た。


「おい、ゴブリン共。

 ここが“藤沢組”とかいう新興勢力の巣か?」


「巣っ?!」

(失敬な!こんだけ発展させてきたこの集落を見て、巣だと?!)

余りに酷い評価を受けショックで言葉に詰まった文太。


「俺達は黒牙団。

 ここら一帯は全部、俺達の縄張りだ。

 勝手に村を作ってんじゃねぇよ」


(……あー、こういうタイプね。

 ヤクザ時代に腐るほど見た!

 クソが、散々、雑用ばかり押し付けやがって!)


昔のムカつく思い出を思い出させやがってと言うイラつきと組を守る組長の使命感から、俺は前に出た。


「悪いが、ここは俺達のシマだ。

 帰ってくれ」


黒牙団の連中が一斉に笑う。


「人間がゴブリンの親分だってよ!

 面白ぇじゃねぇか!」


「おい、あいつ殺して、ゴブリン共は売り飛ばそうぜ!」


「見ろよ、女のゴブリンは高く売れそうだ!」


「その前に俺達で楽しみましょうぜ!ヒヒヒ」


ミドリが震える。


「組長……怖いです……」


俺はミドリの頭を撫でた。


「大丈夫だ。絶対に……守るから」


(交渉決裂!俺は、完全に頭にきたぞ!)


ヤスが前に出る。


「組長、行きます!」


「おっしゃ、行っけぇーー!ヤーース!」


✦ヤス、暴走する

ヤスは地面を蹴り、黒牙団の中へ飛び込んだ。


「うおおおおおお!!」


バキッ!

ドゴッ!

ガスッ!


黒牙団の男達が次々と吹っ飛ぶ。


「な、なんだあいつ!?

 動きが速すぎる!!」


「人間じゃねぇ!!」



「黒牙団の奴等がヤスに暴れられて浮き足立ってやがるけど……強すぎない?」

(……ヤス、能力使ってねぇよな?)


俺は不安になって叫んだ。


「ヤスーー! 能力使ってないよなーー!?」


「使ってないっすよ!

 ただの“素の力”っす!」


「お、おう、そうか」

(素でこれかよ……)


ミドジが槍を構える。


「組長、我らも参るのですじゃ!」


「おう、行け!突撃開始、休み続け!」


「者共!組長の指示により、全員突撃じゃぁ!」


ミドジの声に藤沢組構成員であるムキムキゴブリン達が武器を掲げて地鳴りのような声を上げ、突撃を開始した。


「うおおおおお!!」


黒牙団の男達は次々と倒されていく。


(……つ、強ぇな、うちの組)



✦黒牙団リーダー、登場

「チッ……雑魚共がやられちまった」


黒牙団のリーダーが剣を抜いた。


「お前が親分か?」


「そうだ。俺は黒牙団副頭領、ガルドだ」


(副頭領……? 頭領じゃねぇのかよ)


ガルドは俺を睨む。


「人間がゴブリンを率いるとは……

 気に入らねぇ。

 お前から殺す」


「待てっ!」

向かってこようとしたガルドを止めるために言った。

何か策があると思ったのだろう、ガルドが立ち止まり、警戒して構えている。


「俺、弱いからやめて」

(人間、話せばわかる。暴力から何も生まれない)


「は?

 はぁああ?

 ここまでやっといって、ふざけんじゃねぇぇ!」


(あ、やっぱ駄目か)


ガルドが文太へと怒り心頭で向かってきた!

そこに、ヤスが割って入る。


「組長に手ぇ出すなよコラァ!!」


ガルドが剣を振るう。


ギィィィン!!


ヤスが素手でガルドの剣を止めた。


(素手ぇぇ?!)


「なっ……!?」


ガルドも俺も腕で普通に剣撃を受け止めてる信じられない光景に驚いた。


ヤスが笑う。


「組長に手ぇ出す奴は、全員ぶっ飛ばす!」


ドゴォッ!!


ヤスの放った右フックを受けたガルドは吹っ飛び、地面に叩きつけられた。


黒牙団の残党が叫ぶ。


「に、逃げろ!!」


「副頭領がやられたぞ!!」


黒牙団は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。



✦勝利と不安

「勝った……勝ったと思っていいよな?」


ミドジが胸を張る。


「組長、我らの勝利なのですじゃ!」


ミドリが笑顔で抱きついてくる。


「組長、すごいです!」


ヤスが親指を立てる。


「組長、楽勝っすね!」


(……いや、楽勝だけども。

 ヤス、強すぎるだろ?!ちょっと怖いんですけど)


被害が出ずに撃退したことには安堵した。

だが――

俺の胸には、別の不安があった。


(黒牙団……副頭領であの迫力。

 頭領が来たらどうなるんだ……?

 完全にヤス頼みになるが、大丈夫なのか?)


そしてもう一つ。


(ヤスの能力……

 やっぱり、何か“代償”がある気がする)


この時の俺はまだ知らなかった。


――その“代償”……。

読んでくれてありがとう。

第15話は、藤沢組が避けて通れない

“外部勢力との衝突”がついに始まる回だった。


文明が発展すれば、

それを脅威と感じる者も必ず現れる。

黒牙団はその象徴であり、

藤沢組が“街”として成長するための最初の壁。


この回では、

ヤスの能力の“戦闘面での本領”が初めて描かれ、

文太が組長として“守る覚悟”を固める重要なターニングポイントになっている。


ここから黒牙団編は一気に加速し、

第16話・第17話でクライマックスへ突入する。


文太の胃痛は悪化するけど、

藤沢組は確実に強くなる。

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