表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

第1話 雨の夜、鉄砲玉

雨の夜、鉄砲玉として震える藤沢の脳裏に浮かんだのは――

一年前の、最悪で最高な“出会い”だった。

湿った畳、チカチカする蛍光灯、

そして、金髪のバカ。

雨の夜。

極道の男と、金髪のバカが、ひとつの“仕事”に向かう。

これは、

鉄砲玉として生きてきた藤沢文太と、

なぜかいつも隣にいる金髪のヤスが、

雨の夜に迎える“運命の瞬間”の物語。

まだ誰も知らない。

この夜が、二人の人生を大きく変える“始まり”になることを。

夜の街に、冷たい雨が叩きつけていた。

街灯の光が雨粒に砕け、アスファルトの上で白く滲む。

雨音は、まるで街の鼓動をかき消すように激しく、重い。

その雨の中で――

35歳の藤沢文太と、17歳のヤスは殺された。

静かで、あっけなく。

……というか、ぶっちゃけヤスの致命的な勘違いのせいで、目も当てられない形で。

◇◇◇

■殺される30分前

コンクリートの壁に背中を預け、藤沢は荒い呼吸を整えていた。

雨は容赦なく叩きつけ、ジャケットの中まで冷たさが染み込んでくる。


(落ち着け……深呼吸だ。震えてんのは寒さのせいだ……多分な)


懐のドスを握りしめる手が、わずかに震えている。


(……ヤスの教育係を命じられた日も、こんな雨だったか)


ふと、あの日のことが脳裏をよぎる。

同時に、この1年でこいつがやらかしてきた「伝説級の数々」も。


(……ヤス。お前、本当に色々やらかしたよな)


先月の抗争の時、武器を持っていけと言ったら、こいつは間違えて『テレビのリモコン』を懐に差して現場に突っ込みやがった。

あの時、敵の組員全員が「え、何それ?」と攻撃を止めて凍りついた光景は、今でも俺のトラウマだ。

だが、そんなバカなヤスだけが、うだつの上がらない俺を「兄貴」と慕ってくれた。


「兄貴、どうしたんすか?」

ヤスがキョトンとした顔で覗き込んでくる。

雨に濡れた金髪が、妙にピンと立っていた。アホの角かよ。


「いや、独り言だ」

「緊張してるんすか? 兄貴でも緊張するんすね。でも安心してください。今日こそは俺、最高の獲物を仕込んできましたから」


ヤスが懐を愛おしそうに撫で回す。

(……まあ、あそこまで自信満々だ。今日はちゃんと『ドス』を持ってきてるんだろうな)

藤沢は、ヤスの懐に収まっている「薄っぺらくて長方形で、先端に赤外線を発しそうな小窓がついた物体」の違和感に気づかないまま、ゆっくりと息を吐いた。


「兄貴……あの……」

「なんだ。いよいよ覚悟が決まったか」

「……さっきから、ずっと我慢してたんすけど……。なんか雨音聞いてたら、蛇口全開にしたくなっちゃって……トイレ行ってきていいっすか?」

「今かよ!!」

藤沢の怒号が、雨音にかき消された。


(……ああ、そうだ。こいつといると、緊張なんて長く続かねぇんだったな)

藤沢は、ほんの少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。


――この雨の夜が、自分とヤスの“終わり”であり、

そして“始まり”でもあることを、藤沢はまだ知らない。

読んでくれてありがとう。

藤沢は緊張、ヤスは立ちション。

この二人、まだ死んでないけど、だいぶ危なっかしい。

次回は、藤沢とヤスの“過去”が少しだけ明かされる。

引き続き、雨の夜を見守ってやってほしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ