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エピローグ
朝。
窓の外では、鳥の声が遠くで鳴いていた。
世界が目を覚ます音。
それは、昨日と同じはずなのに――どこか違って感じた。
あなたはゆっくりと身体を起こし、
机の上のジョッキを手に取った。
目を閉じる。
そこにはまだ、あの宿の空気が残っていた。
木の香り。
パンの匂い。
誰かの笑い声。
そして、柔らかな風がカーテンを揺らす。
ふと、耳の奥で――泡がひとつ、弾けた音がした。
「せんぱい、がんばってね」
静かに目を開けると、
カーテンの向こうで朝日が差し込んでいた。
光の粒が部屋に満ちて、
まるで小さな泡が漂っているみたいだった。
あなたは微笑んで、窓を開けた。
冷たい風が頬を撫でる。
その風の中に、どこか懐かしい香りが混じっていた。
湖のほとりの宿。
木の扉。
青色の瞳のメイド。
あの世界は、確かに“あった”。
そして、きっと今も、誰かが観測している。
あなたは深く息を吸って、
そっと呟いた。
「また、行くからな。」
その言葉と同時に、
部屋の静寂の中で、最後の泡が――ゆっくりと弾けた。




