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泡の向こうの夢
気づいたら、音が消えていた。
波も、火の音も、笑い声も。
ただ、ゆらゆらと光の泡が宙に漂っていた。
目の前に湖が広がっている。
昼間見たはずの水面よりもずっと深く、青く、まるで空を逆さにしたみたいだった。
その水面の中に――人影が見える。
「……誰、だ?」
近づこうとすると、足元がふわりと浮いた。
泡の中をゆっくり沈んでいくような、不思議な浮遊感。
水の中の人物が、ゆっくりと顔を上げる。
青い髪が水に揺れる。
「……シャーロット?」
いや、違う。
彼女は確かにシャーロットに似ていたが、どこか幼い。
その瞳には、懐かしさと、寂しさと、何かを託すような強い光があった。
「……また、会えたね」
その声が、泡の向こうから届いた瞬間、あなたの胸が締めつけられた。
理由も分からないのに、涙が出そうになる。
「夢の泡が割れる前に、思い出して。
……あなたが“観測した”世界は、まだ終わってないから。」
ぱちん、と小さな音がした。
世界が弾けるように泡が消え、視界が白く染まる。
――そして、目を覚ます。
ソアラが心配そうに覗き込んでいた。
「お兄ちゃん、大丈夫? 顔が真っ青だよ」
「あ、ああ……夢を、見てた。すごく、リアルな」
シャーロットが少しだけ視線を逸らした。
グラスの中では、泡が静かに弾けていた。




