宵闇のオークション
オークションが始まり、ガベルの音とともに次から次へとと商品が落札されていく。
今日、一緒にいた子も売られていったのを遠目から見ていた。
いかにも下衆なことをしていそうな男や、愛玩奴隷が欲しがってた女など。
なかには私と年齢が変わら無さそうな少女でさえも購入をしていた。
そして、オークションに参加している獣人たちが今日の目玉商品にざわめき、期待を膨らませている熱気がこの控室にまで伝わってくる。
オークションも終盤に差し掛かり、競売人はガベルをより高らかに鳴り響かせる。
「紳士淑女の皆様!大変お待たせいたしました!!本日の目玉商品の登場です!!!!」
合図とともに私は無機質な台車ごとステージに入場し、参加者たちの目にさらされる。
――あぁ、私はこの瞬間に恐怖を抱いていたんだ…。
登場とともに、競売人が私の元へ近づき、解説を始める。
私をじろじろと檻の外から品定めするように見る。
「本日の目玉商品は、齢16の少女!美しく煌めきのある銀髪に月をも思わせるような金色の瞳そして陶器のような肌!なんと珍しい人間の少女です!」
「さぁ!この商品は15ルムから!」
会場がざわめきはじめ、多数の獣人男性の声が響き渡る。
「20ルム!」
「いいや、25ルムだ!」
「28ルム!」
蛇族の男と虎族の男が競い合っていた。
どんどんと跳ね上がっていく金額から会場内もどよめき始めた。
「人間の少女にそんな高値だなんて…。」
せりあがっていく値段にひるむ人もいた。
「30だ、30ルムでどうだ!」
「あの娘は母親のようにダラム神聖国のために働かさなければならん…競売にかけられるとは予想外だったがなんとしてでも…。」
ひとりごとのように小さくつぶやく。
誰が聞いているのかわからないこの会場で蛇族の男はぽつりとつぶやいた。
「35ルム!」
蛇獣人の近くにいた男が大きな声を出し、会場がまたざわめく。
「なっ…!37ルムでどうだ!」
「40ルム。」
「42!」
「45ルムだ。」
黒曜石のような漆黒の髪に青い瞳を持つ狼獣人が席からゆっくりと立ち上がり、競売人の方を見る。
「こんな高値見たことがない」
「幻の宝石より高いぞ、そんなに価値のある少女なのか…。」
などと会場内のざわついた声聞こえてくる。
控室にいる7番の少女を連れてきた施設員は跳ね上がっていく値段ににやにやと笑っていた。
狼族の男性が45ルムと希望価格を出すと、蛇獣人の男女ペアはこれ以上は出せないと苦い顔し競売から手を引くように着席していた。。
「おや、もう競り合いがなさそうです!では、そこの狼紳士により45ルムで落札です!」
競売人のガベルとともに私には「新たな主人」が決まった。
この時の私は自分に何が起きようとしているだなんて、予想もつかなかった。
この宵闇のオークションに、ほんのかすかな一筋の光があることさえも。