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断罪された元公爵令嬢

いつだって私は周りの注目の的だった。

お父様やお母様からはお前は世界一美しいと言われ、知り合いの貴族達からはまるで宝石のようだと持て囃された。

私が笑えば男はその気になり、私が話しかければ女は我先にと声を掛けようとする。


みんながそうなるのも無理はないわ。

だって、私は公爵令嬢マリン・スワロフ・ビードリア。

この世界で一番美しく、社交界の宝石と呼ばれる存在だもの。

みんなが私に夢中になっても仕方ないわ。


それに....私が一粒の涙を流せば、誰だって私の心配をしてくれる。

そして、誰もが私の味方をする。

私が嘘を並べれば、周囲に居る人達は私のために動いてくれる。

....全ては私のために。


そもそも、みんなから愛される名門貴族の令嬢である私の話を信じない人は一人もいない。

私の涙やお涙頂戴の話をすれば、みんなコロッと騙される。

家族やメイド達、そして私の婚約者であり王太子であるウィリアム様でさえも。

そうすれば、勝手に目障りな人々を排除してくれる。

その光景を見る度に、私はやっぱり女には愛嬌が必要なのだと実感した。


周囲の人々はよく私とお姉様を、を比べていた。

お姉様は私の血の繋がらない姉、世間一般的に言うところの異母姉なの。

だけど....ハッキリ言ってお姉様は私よりも綺麗じゃない。

何だったら私よりも地味だしブスだから、みんな方々にこう言うの。

私が宝石なら、お姉様はただの石ころだって。


ここで一緒に悪口を言ったら、私が悪いように見えてしまう。

だから私はあえてお姉様を庇い、擁護する。

そうすることで私の評判や価値が上がるのなら、利用しない手はないわ。

それに、お父様やお母様はお姉様よりも私を愛してくれる。


あぁ、可哀想なお姉様。

あなたは妹である私の引き立て役として、ただの添え物としての務めを果たせば良いのに....いつも私をイライラさせてるから、つい手を汚してしまうの。

でも、私の周りにはあなたの味方が居ない代わりに私には味方がたくさん居るの。

だから、私を怒らせたらどうなるか....分かってるわよね?

私は、よくお姉様にそんなことを散々言っていた。


それが私自身に返ってくるとも知らずに。


「マリン・スワロフ・ビードリア!!貴様がアイリスにしたことは決して許されることではない!!」


あの日....いつにもなく酷くイライラしていた私はウィリアム様の力を使って、お姉様を国から追放した。

その時はとてもスカッとしたし、清々しい気分にもなった。

けれども、それから数ヶ月後にお姉様はこの国に帰ってきた。

隣国のジョワイオン王国の王子....リュビ王子の婚約者として。


私は許せなかった。

隣国の王子様の、リュビ様の婚約者となったお姉様が。

地味でブスなはずなのにリュビ様の寵愛を受けるお姉様の姿を見る度に、私の気分はより一層最悪なものとなっていき....私は意を決して、リュビ様にお姉様がいかにダメなのかを伝えた。


その結果....リュビ様は私の言葉に激怒しただけではなく、私がお姉様を虐めたという罪で逆に断罪し始めた。

おかしい、こんなのはおかしい。

どうしてリュビ様はお姉様を信じるの?

どうしてリュビ様はお姉様を愛しているの?

許せない。

許せない許せない許せない!!


私がそうイラついていた時、更に衝撃的なことが起きた。

何とウィリアム様がお姉様を追放したことを良く思っていなかった国王陛下によって、アイシュ様と私の婚約が破棄された。

更に、ジョワイオン王国との関係性を考慮した国王陛下達によって?あっという間にウィリアム様の廃嫡と名門一族であるはずのビードリア家の取り潰しが決定し、お父様やお母様はお姉様を虐めた罪の他に様々な罪を犯したことで逮捕され、私は修道院に送られることになった。


もちろん、私はこの処遇を決めた国王陛下に抗議したわ。

でも、国王陛下はこれはお前自身が招いたことだと言って私を一喝し、私の修道院行きは揺るがないものとなった。


その修道院に向かう馬車の中で、私は頭の中でグルグルと考え事をしていた。

....私は悪いことはしていないわ。

ただ、お姉様を躾けていただけ。

それだけのことなのに、どうしてこんなことに? 


.....そうよ、私は悪くない。

悪いのはリュビ様を誑かしたお姉様の方よ!!

挙げ句の果てには無実のお父様達を牢に入れるなんて....お姉様には情が無いのかしら。

ウィリアム様でウィリアム様で廃嫡された後、どこに居るのか何をやっているのかが分からないし....私、これからどうすればいいの?


「助けて.....お父様、お母様、ウィリアム様」


そう呟いたところで、馬車の中には私一人しか乗っていないので誰も返事をするわけもなく....私はただただ馬車に揺られながら、お姉様に対する怒りとこれからのことに関する絶望するしかなかった。


....おとぎ話ではこういう時に白馬に乗った王子様が助けに来てくれるけど、どうして来てくれないの?

お姉様がジョワイオン王国で幸せになっているのなら、私にも幸せになる権利があってもいいじゃない!!

お姉様だけが幸せになるなんて許せない!!

本当は私だけが幸せになるはずだったのに!!


唇を噛みながらそう思っていた時....目的地にである修道院に到着したのか、馬車はいつの間にか止まっていた。

そして、御者によって私は荷物と共に乱暴に降ろされたかと思えば、御者はそのまま来た道を戻るように帰っていった。


....いくらお父様達が捕まったからって、これはないでしょ!!

私、公爵令嬢なのに!!

そう思いながら私は服についた土を払うと、私が振り向くと....そこには、シスターの服を着た壮年の女性が立っていた。


......これから始まるのは私の第二の人生の物語。

そして、私が自分の罪と共に本当の幸せを見つけるまでの後日談だ。

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