白ウサギは満月にのみ生息するのか
潰された色彩は多次元宇宙の、戦争区域で少女を見る。失われた視界で、エラー画面は生命維持が困難に近しいと、空間情報から近似し、夢に伝えるだろう。
月ウサギは存在せず、ミクロの世界では光線銃を持った青少年の凱旋。あまりに稚拙な、爆弾魔は世界に紙吹雪のパレードを臨み、自らの行いに非を求めない…。
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「誰だ…?」
「…。」
真白の姿をした、少女はペインティングされた街並みと対照的に、薄っすらとしか色づいていない。頬に触れようと、手を伸ばしたらノイズが走った。
「…?」
君は生命体として、俺を手招くのか…?
「それとも…?」
背景では祝祭。それと共に劈く銃声。湧く民衆。
楽しいだろう、データの集合体。デジタルのケロイドで道を拓け。
「何処の世界に連れて行ってくれる…?」
「…。」
ゲーミングチェアには飽き飽きだ。君の世界へ連れて行ってくれ。手を伸ばしたらディスプレイにはClearが表示された。
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「素晴らしいなぁ。」
「そうでしょ?」
宇宙ロケットは、少年の夢を乗せて、収束した博士と共にブラックホールの特異点を探す。未知の現象でもあるまいに、重力に惹かれてやまないのさ。
「この操作パネル。」
「ん?」
「…スキャンしたら、色々見えて楽しいよ。」
その言葉を聞いた俺は、目の前のカラフルなボタンを見つめる。白骨化した透明のボタンを押した。
「ミジンコ…?」
「やっぱ、最初の生物に相応しいよね。」
白髪の輝きが俺の手に触れた。顕微鏡で見る、其れと同様に管から栄養を受け渡して、脳みそのない身体を後世に繋ぐ。発光するパネルには、モノクロに蠢く微生物…。
「人類は海から始まったって?」
「違うよ。」
青く澄み切った瞳…。まるで、見たことのない新生の誕生のように輝きを放つ。失ってしまった…俺自身を探すように、狡猾な表情をした。
「私は君だからね。」
「それは、それは…。」
その言葉を聞いてやれやれと首を振った。コントロールパネルを中心に、宇宙ロケットは丸い円筒形の空間へ、真白のソファやベットを配置。序に、何を思ったか望遠鏡なんて置いて…。
「それなら、Eveを探したいって?」
「私たちの誕生は、そこに由来するからね。」
青いボタンを白いボタンと同時押しして、コマンド入力にはネットワークの接続を確認しておく。
「稀に見る、命の発現。」
「白ウサギは満月にのみ生息するのか。」
緊急を知らせよう。赤いボタンを彼女と共に入力したら、全てのウィンドウは消え。そこは、全て銀河系を映し出す、特別なスクリーンとなった。
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「なるほどね…。」
「まだ眠っているじゃないか…。」
やれやれと、肩をすくめて。満月を中心に、その白い身体を抱きしめて…。届かない星を掴むように手を伸ばしたら、隣で見ていた少女に笑われた。
「大好きじゃん。」
「君もね。Adamの片割れ。」
青い瞳が細められて、俺をじっと見つめる。二人の指は赤いボタンの上で重なったままだ。
「DNAで言う、異端者かな?私たちは…。」
「螺旋構造は、一人では生まれない。」
ただ見つめ続ける夜空で、全ての母体となる少女が安心して夢の中に居ること…。
それだけを願って。