映画の世界
植物のツタに覆われ、目覚めると一面は真っ白な雪で沈み込んでいた。写真家が星の繋がりにロマンスを覚え、飛び立つワタリドリが置き捨てられた、1羽の仲間を待ち続けたように。冷たい真四角。真白の時計が影を落とす、僕の部屋とは似ても似つかない。銀色の世界がそこには拡がっていた。
1歩足を進めると、広大な大地と連なる山脈に自分の存在価値を失くしてしまったように感じる。登山家が僕へ手を振った気がしたけれど。そんな訳はないと、首を振ったら連星は、僕に微笑む時間をくれた。
夕焼けに、誰もいない事。谷底へと落ちていく太陽を見つめているだけで、心は憂いを帯びて止まない。登頂の感動を待ち侘びて、今か今かと期待する胸中を、少しだけ抑えるように息を吐けば。その白さに、美しい陰影を見た気がした…。
焚き火は夜の雰囲気を増して、僕の頬を赤く染める。毛布にくるまってしまおうと、美しい少女がキルトチェックの暖かさへ誘うけど。たったそれだけで、僕の心拍数は正常なものではなくなる。
ただ現実、僕はたった1人小さな炎を見つめているわけで、それを少し寂しいと感じた。
朝焼けはもう一度。ツタ植物に覆われて目覚める。写真家はワタリドリを一眼レフに収めきれないし。僕は部屋に閉じ込めた、方眼用紙をグラフで埋められない。冷えた朝のコーヒーを、温め直す程の時間でもう一度、君の頬にキスをしたい。それすらも叶わない。
焼けていく夜空に煌めく、僕の連星が消えてしまうまで。この世界の映画館で上映された予告編に浸っていたい。そう願って綴った、白色に煌めく光景へ…。