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ー46ー 

 開始時間直前になって、ようやくシャル様がやってきました。


「なんだか二人で話が盛り上がっていましたね。何を話していたのですか」

「別に、大したことじゃないわ。それよりここの食料支援はどのくらい行う予定なの?」


 大したことでない話で盛り上がれるなんて、それこそ気が合う証拠です。私は心の中でガッツポーズをとりました。私にとって大切なお二人が仲良くなることが、こんなに嬉しいものだとは。


「そうですね。予定では二時間ほどです」


 本当はもう少し長く行いたいところだが、初めての事だしほどほどがいいでしょう。

 しかし殿下との会話でなにか奮起したのか、彼女はやる気満々でした。


「大丈夫よ。必ず最後まで頑張れるから!」


 なんということでしょう。失礼ながら、殿下がこういった形で誰かによい影響を与える日がくるとは思ってもいませんでした。本当に、二人はいいコンビなのかもしれません。真剣な顔で決意を固めているシャル様に、ますますほんわりとした気持ちになりました。


 今日の事は、きっと彼女にとっていい経験になるはずです。私も何度も参加していますが、毎回たくさんの方々に喜んでもらえているので、とても楽しみにしている予定の一つでした。この時間だけは平凡で取り柄のない自分が、少しは人の役に立っているのだと実感が出来るのです。

 シャル様は弱い立場の人間の気持ちに気がつかない面がありますが、この経験を通してきっと新たな視点を持てるようになると信じています。


 ただ、過去に何度か別の令嬢をお誘いした時は嫌な顔をされてしまいました。


『まあ、こんなに汚い場所でおこなわなければならないのですか?』

『アデライド様はすごいでわね、こんな彼らにも情けをかけられるだなんて』

『応援していますわ、私には無理ですけれども』


 そう言って立ち去ってしまった令嬢たちを責めることは出来ません。戦場で多くの怪我人や苦しむ人々を見慣れている私と違い、普通の令嬢には少し刺激が強いのでしょう。

 ですが、きっとシャル様なら最後までやりとおして下さるはずです。


「それでは始めましょうか」


 シャル様の顔色が青くなったような気がしましたが、おそらく光の加減でしょう。

 彼女は目の前の相手を観察し、幸せに導く才能に恵まれています。しかしそれだけでは足りません。多くの経験を味わい、深い洞察で物事を考えられるようになってほしいのです。

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