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そろそろ開始時間だというのに、シャル様は第二王子殿下と話し込んでいます。話が盛り上がっているのか、時々声が大きくなったり、からかうような笑い声が聞こえたりしました。
「意外な組み合わせだけど、案外気が合うのかしら」
「えっ……。アデライド様は、あれが気が合っている様に見えるのですか?」
つい口に出していたらしく、近くを通っていた騎士に驚かれてしまいます。
「あれはどちらかというのいがみ合っているというか……殺伐としているように見えますが」
「そう? でも本当に仲が悪かったら会話自体しないのではないかしら」
「う、うーん。どうでしょうか」
彼は納得しかねているようだけど、私は自分の勘を信じる事にしました。あんなに見つめ合い、微笑みあっているのですもの。きっと和やかな会話を楽しんでいるに違いありません。
「……それより、こんなことで本当にシャル様が反省されるのでしょうか」
その騎士は私の馬車が襲われた場面を見ていたようです。不信感を露わにし、ここで慈善活動を行うことにも反対のようでした。
しかし彼女の問題行動のすべては、弱者に対する無理解からきているのです。辛い目にあって苦しんでいる方々を前に、なにか少しでも感じ取ってくれることを祈るしかできません。
「私は彼女を信じているわ」
「そうであってほしいですね。シャルロット嬢がおかしな行動を取った際は、最優先に貴方様をお守りするよう厳命されておりますので」
「まあ」
第二王子殿下の冗談を真に受けている騎士に、思わず苦笑した。
「そこは国賓であるシャルロット嬢をお守りするのが当然でしょう? なにしろ彼女になにかあったら戦争にまで発展しかねないもの」
「貴方になにかあっても戦争に発展すると思いますけどね」
「ふふっ、そんなわけないじゃない」
騎士はまだなにか言いたげな顔をしていたけれど、別の場所から呼ばれて行ってしまいました。
それにしても、シャル様と第二王子殿下はいつまで話し込んでいるのでしょうか。ちらりと目線を送ると、二人が無言で微笑み合っているのが見えました。
あらあらまあまあ、本当に仲良しなのね。
しかし殿下はシャル様の圧倒的な存在感にひれ伏すタイプではないし、そもそも彼自身が強烈なカリスマの持ち主。もしかしたら案外うまがあうのかもしれないと、ほのぼのとした気持ちになりました。