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ー42ー ※公爵令嬢視点

 私が、なにもわかっていない?

 そんな風な指摘を受けたのは初めてのことで、思わずなんと返したらいいのかわからなくなった。


「ごめんなさい。でもそれで普通なんです。シャル様はまだお若くて、これからたくさんのことを経験するのですから」


 普通、それは私が最も嫌う言葉。私は生まれつき特別な能力を持った、特別な人間だ。それなのによりによってアデリーにわかってもらえないのは嫌だった。


「私は、特別な人間だわ」


 彼女以外にこんなこと、絶対に言わない。

 馬鹿にされるか、酷く傲慢な人間だと誤解される。自分の狭い了見の中で判断して、嘲笑されるのが関の山だ。


「わかって。説明はできないけど、他の人間のような大言壮語じゃない。私は他の人たちとは違う」


 顔を覗き込んでも、アデリーの顔の上に蔑みの色は無かった。表情だけの話ではない。心の隅にでも感じていれば、私にはちゃんとわかるのだ。


 言葉でだけは親友だとうそぶく、友人だと思っていた令嬢。評判を聞きつけ、利用しようと近づいてくる大人たち。愛してると言いながらしだいに気味の悪さを感じはじめている両親だってもういらない。


「アデリー、私には貴方しかいらないの。他の人が地獄に落ちたって、貴方だけは助けてあげる」


 彼女は微笑みも怯えもせず、ただ一つ頷いた。


「貴方は特別な人間になりたい。そのために私が必要だとお考えですよね」


 そうではないと言いかけたが、ある意味では彼女の言う通りかもしれない。私が正気を保つためには、彼女のような人が必要だ。彼女を側に置くことは、私が神になるための必要条件なのだろう。


「私は普通の人間じゃない。」


 アデリーは素晴らしい人間だ。先日、彼女にいつか神になりたいと言った時だってそうだった。

 私を馬鹿にしたりしない。気味悪がったり、嫉妬もしない。だからといって過剰に崇めたてたりもしない。


「シャル様のお気持ちを聞いて、私も安心しました」


 アデリーは怒っていない。

 私にはそれがわかる。


 その時馬車が止まり、目的地に到着したようだった。


「さあ行きましょう、シャル様。貴方に必要なものを得るために」


 私を害そうとしているのなら、絶対に色が滲み出る。どんなに巧妙な詐欺師だって私には隠し事は出来ない。

 だから絶対大丈夫なはずなのに……私は生まれて初めて、不安でいっぱいになっていた。

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