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ー24ー

 私はかつて、なんの価値もない子どもでした。


『まったく、お前の顔を見ているだけで憂鬱になる』

『可愛げのない子ね。ニコリともしないで、薄気味悪い』

『お姉様。みんながお姉様のこと嫌いなんですって。私は可哀想だからやめてあげてって言ったんだけど、ふふふふっ!』


 頑張って、せめて嫌われない存在になろうとしましたが、結局最後まで意味のない努力でした。その後この国に親戚を頼って来たものの、それまでの間に失ったであろう人間関係構築する機会は、取り戻しようがありませんでした。

 そんな私にとって、シャル様の言葉はとろける蜜のように甘く耳に響きました。




「必要……? 私、なんかが……」


 思わず呟くと、シャル様はこくりと頷きました。


「これまでもずっと大切なお友達だと思って来たわ。だけどこれからは、唯一無二の存在として私のそばにいて欲しいの」


 唯一無二。

 これほど光り輝く言葉がこの世にあるでしょうか。

 ……ですが、私にも譲れないものはあります。


「この国には、行くあてのない私を受け入れて頂いた恩があります。それについこの間には母方の親類にもお世話になっていました。第二王子殿下には仕事を与えて頂き、大変感謝をしているのです」


 我が国にとって大切なお客様であるシャル様を、平穏無事に帰国させる。それがこの国に住ませていただいている私の責務だと思っておりました。だからこそ彼女の行動に疑問を持っても、今日まで何も言わずにいたのです。

 今もシャル様を大切に思う気持ちは大きいですが、だからといって不義理はできません。


「私を懐柔しても無駄です。お世話になった方々に恩を仇で返すつもりはありませんので」


 これまでに得た知恵や知識、経験は私一人のものではありません。

 かつての祖国では何者でもなかった私を、暖かく迎え入れて頂いたのです。いくら欲しくてたまらなかったものを目の前に差し出されても、食いしばって耐えるしかないのです。


「何がお望みなのですか。人脈? 知識? 王家の方々とも交流はありましたから、そちらでしょうか。だけど私が得た情報を漏らすつもりはありません、絶対に」


 私の断固たる拒絶に、シャル様は大きな目をさらに大きくさせました。そして……。


「なんのことですの?」

「え?」

「懐柔とか、恩を仇で返すとか。私たちが親友でいるのに、なにか関係ありますの?」


 演技などではなく、本当にわからない、という様子でこてりとクビをかしげられます。


「わ、私が持っている重要機密を欲しがっていたのでは……?」

「最初から言ってるじゃない! 私はただ、私に相応しい完璧なお友達が欲しいだけ。それが貴方なのよ」


 ……え?


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