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ー19ー

 ララが元気を取り戻したことを確認した私は、部屋で着替えを済ませました。それから、さてどのタイミングでお声がけしようかと考えていると、向こうの方から声をかけて下さいました。


「王宮はどうだった? ちゃんと褒めてもらえたかしら」


 もうすっかり気安い口調になって下さっているシャル様が、悪戯っ子のような笑みで聞いてきました。


「はい、シャル様のおかげで国王両陛下も大変お喜びでした。つきましては後日、感謝の意を表するために宴の席を設けたいそうです」

「そんなのいらない。アデリーと過ごす時間が減っちゃうだけじゃありませんの。適当に断れないかしら」


 シャル様らしい天真爛漫なお答えですが、両陛下の招待を断るのはあまりよろしくありません。


「ちなみに功労者ということで私も招待されております。残念ですね、お揃いのドレスをコーディネートしようと考えていたのですが」

「行くわ!」


 彼女は行動原理がはっきりしているので、非常にやりやすいです。どこかの第二王子殿下も是非見習うべきでしょう。


「ところで、話の内容のわりにずいぶん帰りが遅かったのね」


 無邪気な言葉にドキリとしました。

 あの後クロエ様を自宅に送りがてら、相談役になって愚痴や弱音を吐き出させました。彼女にはまだケアが必要だと感じたからです。お陰で別れ際にはすっきりとした顔になっていました。

 しかしそれを説明するわけにはいきません。


「両陛下と話が盛り上がったのです。第二王子殿下の子どもの頃の話など、興味深い話を聞かせていただきました」


 もし長話の内容を詳しく話を聞きたがっても、王族のプライベートな話なので外部に漏らすことはできないと言い張るつもりでした。

 ――しかし、シャル様は私が想定していたよりもはるかに上手だったのです。


「あらそうなの。アデリーは謁見の間をでた後、クロエに捕まっていたと聞いたけど?」


 とっさに、驚きの表情を出さずにいるのが精一杯でした。確かにあの場は無人ではありませんでした。しかしそれにしたって耳が早すぎます。

 一体誰が……と考えて、わかるわけがないと諦めました。だってクロエ様が言っていたではありませんか。庭師に執事に、誰もかれもが彼女に魅了され、彼女を喜ばせようと動き始めるのだと。今度はそれが警備の兵士だったのか、通りがかりの若い貴族だったのか、それともメイドの誰かなのか……。容疑者はとても一人に絞れないでしょう。


 シャル様はそこにいるだけで誰も彼も魅了し、味方にしてしまう。そんなセリフをクロエ様が呟いた時は、気持ちが不安定になり過大にシャル様を恐れているのだろうと軽く考えていましたが……。


「ねえアデリー、どうしてクロエに会ったことを隠すのかしら」


 クロエ様には、お会いしたことを秘密にすると約束しておりました。ですが目の前の少女は、すべてわかっているかのように確信にみちた目をしています。


「うふふ……言いにくいなら、私が当ててみせましょうか?」


 その笑みは、ゆるぎない強者の自信に満ちていました。

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