ー18ー
王宮から馬車に乗り、疲れたと息を吐く間もなく我が家に到着しました。
まったくもってこの立地の良さは最高です。
窓から帰宅する姿が見えたのでしょう、すぐに家政婦長が出迎えに来てくれました。その後ろにはもちろんララもいます。
「おかえりなさいませ、アデライドお嬢様」
「ええ、ただいま」
我が家に帰るというのは、本当にいいものです。張りつめていた気持ちが緩まり、ホッと息を吐きました。
「そういえば例の準備は進んでいる?」
私は以前から予定していた大切な用事について確認しました。
「はい、なにもかもアデライド様の手はず通りに。……ですがよろしいのですか? シャルロット様がお帰りになる前ですし、今回は欠席されてはいかがですか」
「ううん、先に約束していた予定ですもの」
最近、シャル様はますますべったりなのですが、ここ数日ですっかり慣らされてしまった私は当然のものとして受け入れるようになっていました。なので家政婦長は予定を変更するかもしれないと考えていたようです。
「どんなに大切な方でも、先約を破るようなことは出来ないわ」
約束を破られるということは、仕方ない理由があったとしても悲しい気持ちになります。
だからこそ私自身は、自ら約束を破るようなことがないようにしたい。それが、頑固な奴だと第二王子殿下に笑われる原因の一つだとしてもです。
「かしこまりました、予定通り準備をいたします」
「お願いね。ララもやることが多くて大変だろうけど、力を貸してちょうだいね」
「……はい」
いつもなら明るく返事をしてくれるはずのララが、何故か少し元気がないようです。ここ数日無理をお願いすることが多かったので、疲れているのでしょうか。
「毎日ばたばたしていて悪いわね。全部が終わったら、たっぷり休暇をあげるから」
「あっ、いえ! 大丈夫ですよ、アデライド様」
「遠慮しないで。貴方たちには感謝しきれないほど助けてもらっているのだもの」
「アデライド様……」
ララは心なしか涙目になっています。
「そうですよね、あと数日のことだもの……。大丈夫です、私ちゃんと頑張れますから!」
ようやくいつものララの笑顔をが見れ、私はようやく安堵したのでした。