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ー14ー

「アデライド様、貴方がいらっしゃるのをお待ちしておりました」


 真剣な面持ちのクロエ様が、じりっと一歩、前ににじりよりました。その迫力に、思わず後ずさりそうになります。


「どうか、シャルロット様と仲直りをさせて頂けませんか?」


 身構えていたより、かなり平和な内容にホッとしました。しかしクロエ様の異様に緊張した様子は変わりません。


「何度お手紙を差し上げても返事は無く、どうしてもお会いできなくて! もう貴方にすがるより他に方法がないんです!」

「クロエ様、落ち着いて下さいませ」

「落ち着いてなどいられません! あの日以降お友達にも遠巻きにされますし、婚約者にも……ああ、私が全て悪かったのです、申し訳ありません」


 感情が高ぶったのか、令嬢はたまらずわっと泣き出しました。


「私がいけなかったのですわ。至らない点があったから、さぞかしシャルロット様も不快に思われたのでしょう。ああ、あの時は本当にどうかしていましたわ」


 人気が少ないとはいえ、王宮の廊下。もちろん無人ではありません。ちらちらと様子を伺う周囲の視線に気がつき、クロエ様を人目のない中庭に連れ出しました。


「さあ、涙をお拭きになって」

「グスッ……ありがとうございます」

「こんなところで待ち伏せするだなんて、さぞかしお悩みになられたのですね」


 一旦は止みかけた涙が、再びぶわりと湧き上がって流れました。


「なんてお優しい言葉……。感謝しますわ、力になって下さること!」


 ええと、まだ力になるとは一言も言っていないのですが。まあ、わざわざ待ち伏せするほど思い詰められているようですから、知らんふりするつもりもありませんでしたが。


「アデライド様はすっかりシャルロット様のお気に入りでしょう? 貴方様が口添えして下さればきっと許して頂けますわ!」

「貴方はシャル様がご自分を許してないと感じられているのですね。そして自分の過失を、改めて謝罪したいと」

「過失……? ええまあ、そういう言い方も出来るかもしれませんが」


 訴えを再確認するつもりで復唱すると、クロエ様はなんだか妙な顔つきで笑いました。


「違うのですか?」

「いえ、だって……。いいえ、シャルロット様は我が国にとって大切なお客様ですもの。私が折れるしかないでしょうね」

「では、本当はシャルロット様に非があるとお考えで?」


 クロエ様は手をもじもじと交差させながら、妙な笑いを続けています。


「私の口からはとても言えませんわ。そんな……シャルロット様が噂と違い、あんな方だったなんて……」

「そうですか、ではこれ以上は聞かないことにいたします」


 私はペコリと頭を下げ、その場を去ろうとしました。すると何故か、クロエ様が大慌てで追いかけてきます。


「は……? えっ、ちょ、ちょっとお待ち下さいませ!? 貴方、少しは気になりませんの!?」

「いえ、別に」


 幼い頃から、私だけ知らされないのは良くあることです。私だけ呼ばれない妹のパーティー、こっそりデートして仲良くなっていく二人に、いつの間にか決められていた婚約破棄……。もう本当に、そういう事には慣れているのです。


「お、お待ち下さい! どうしてもというのならお話しないでもありませんわ」

「いえ、そこまでは」

「お聞きくださいませ!!」


 えっと、結局聞いて欲しかったということでよろしいのですか?


「いいですか、あのシャルロット様が心の美しい素晴らしい女性だという噂は嘘八百です! それどころか、片っ端から男性に色目を使う、とんでもない悪女なのですわ!!」

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