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※話の展開が急すぎたのと、もう一つエピソードを入れておきたくなったので11話を大幅に修正しております。
結論は同じですので『何度も同じような話を見たくないよ』という方は次の13話よりお読み下さい。
優美な曲線を描く硝子の中に、いくつものお菓子が詰め込まれている。それらを真っ白な生クリームでつむぎ合わせ、最上段にはドンと大きな氷菓。さらにそのてっぺんには、赤くてつやつやした赤い果物が鎮座している。
うっかりスプーンをつきたてれば最後、数日は節制した食生活を求められるだろう。だがその代償を払ってでも、この悪魔的な魅力に抗うことは出来る者などいないに違いない。
「うん、美味しい。これは評判以上だわ、ねえアデリー?」
キラキラの苺パフェを食べ、笑顔がこぼれる。
スイーツに負けず劣らずキラキラしたシャル様が顔をあげました。
「こ……」
「こ?」
「こんなに美味しいものがこの世にあっただなんて……!!」
思わず呟くと、シャル様は一瞬目を丸くし、それから吹き出しました。
「すみません。このような栄養上必要のないものは、あまり口にしたことがなかったので」
「栄養上って……。あはは、面白いことを言うのね」
令嬢達の間で評判になっている、とあるお店のパフェを食べに行きたい。シャル様の一言で急きょ街に遊びに出てきた私たちは、散々買い物を楽しんだ後にようやく目的を果たしたのでした。
目の前のパフェの美味しさはもちろん、こだわりぬいた店内の可愛らしい装飾や、店員さんたちの丁寧な接客。食べに来ている気合を入れた服装のお嬢様がたたちまで、ここの場にある要素の一つ一つが味を上乗せしてくれている気がします。
「じゃあ、アデリーが一番美味しいものを食べた瞬間に立ち会えたのね。ラッキーだわ、私」
こんなに可愛らしく美しいものに囲まれた中で、その中でもひと際輝いていたのは、間違いなく目の前のシャル様でした。ほとんどが女性ばかりの店内だというのに、チラチラとこちらをうかがう視線がやみません。言うまでもなく、ここに来るまでもずっとです。護衛の方を五人も連れていくと聞いた時は多いと思いましたが、今は少ないかもしれないと思い直しています。
「そうそう、貴方に渡したいものがあったのよ」
買い物の荷物を店の外の護衛に持たせていた彼女が、何故か一つだけ持ってきていた小さな包みを私に差し出しました。
「もうすぐ誕生日だと聞いたの。その頃には私はいないから、先に渡しておくわ」
「えっ……!? わ、私にですか」
包みを開くと、そこにはとても美しい栞が入っていました。
ちょうど最近、長年使っていたものを無くし、買いなおさなければと考えていたのです。
「……綺麗……」
薄く金箔を張った表面に、意匠を凝らした模様が入っています。一目で熟練の職人の技が込められた特別な品だとわかりました。
「気に入っていただけた?」
元の家族に、こんな風に祝ってもらえたことは一度もありません。
この国に来てからは、母方の祖父母にあたる公爵家でお世話になっていましたが、ただでさえ居候をしている身だからと公爵家ではお祝いを断っていました。それでも共に暮らしている以上無視は出来ないようで、ささやかなプレゼントを受け取ることはありましたが、あの家を出たからにはそれも無くなったと思っていました。
なのにまさか、私の誕生日を祝ってくれる人がいるなんて。
「……っ……ありがとう、ございます」
「どういたしまして。ふふっ」
感謝の気持ちでいっぱいで、なんだか上手く喋れません。そんな私を、シャル様は嬉しそうに見守っています。
ああ、なんて可愛いらしい方なのだろう。
こんな私を受け入れて、素直な好意を示してくださっている。一緒にいると楽しくて、大切な、大切なお友達。
……なのに私は、何が引っかかっているのでしょう。
『あの女には、絶対に近づくな』
私の上司は、野生動物のように勘のするどい方です。
その彼が警告してきたことが、なんだか妙に強く思い返されました。




