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【完結】異世界で猫になったからのんびり暮らしたい  作者: 猫柳渚
第三章:人見知りの魔法使い
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転移魔法について

 エクルーナには自信満々にミクロアのサポートを引き受けたものの、転移魔法の研究に関しては俺が出来ることはほとんどない。魔法についての勉強は引き続きやってはいるが、未だに自力では初級魔法陣すら作成できていない有様だ。


 なので、魔法学については一旦離れてミクロアのメンタル面や参考になりそうな資料の収集、そして他の職員たちとの関係構築に対してのサポートに徹することにした。


 モータルとのやり取りを見た感じだと、魔法学に関係することであればギリギリ最低限の会話は出来るようだし。相性なんかもあるだろうが、仕事上の関係であればなんとかやっていけそうに思う。そろそろ他の協力者候補も探しておいてもいいだろう。


 ミクロアも三回、一緒に食事をしたことで、モータルに対しては警戒心もなくなってきた。まだ訪ねてきた時に自分から迎え入れることは出来ないようだが、毛布にくるまることはなくなったし、着実に前進しているのは確かだった。


「ミクロアさんの考案した転移魔法について、考えてみたんだけどぉ」


 そう前置きしつつ、モータルは以前に俺がミクロアに提案した『二点間の距離を圧縮する魔法』についての見解を述べ始める。


「色んな人にも意見を聞いてみたんだけど、理論上は可能だって」


 マジか、と驚いたのと同時に”理論上は”という言葉が引っかかった。


「魔法陣を二つ用意して、その間の空間を圧縮して魔法陣が重なるようにすればいいわけでしょぉ」


 モータルは近くにあった紙を引き寄せ、図を記入していく。

 〇↔〇


「〇が魔法陣でぇ、この↔が魔法陣二つの間にある空間ね。要はこの↔部分を省略できれば、魔法陣が二つ重なった状態になるから、転移ができるわけじゃん」

 〇↔〇→◎


「で、↔の省略を圧縮魔法でするわけだけどぉ、大きな問題点が三つ、あるのぉ。なにかわかる?」


「えっと、まずは、圧縮する空間にある物質をどうやって排除するか、ですか……?」


「そう、例えば魔法陣の間に壁があったとして、圧縮魔法で空間を圧縮しちゃうと壁にも影響が及んじゃうの。転移ができたとしても、家の壁に穴を空けちゃったら問題だよねぇ。人が巻き込まれでもしたら、もう大変なことになるしぃ」


 空間を省略できるほどの圧縮……確かにそんな力に巻き込まれでもしたらひとたまりもない。


「二つ目は、使用魔力量が、膨大になる」


「そうだねぇ、一、二メートルくらいならどうにかなるだろうけど、実用性を考えるならキロ単位で転移しなくちゃならなくなる。そんな距離を圧縮するとなると、人間が操れる魔子の量じゃ到底、補えないんだよねぇ」


「三つ目は、使用者の肉体の問題」


「さすが立案者、問題点はきっちり把握してるねぇ。その通り、使用者……というよりは転移させる対象が転移に耐えられないだろうってこと。転移する対象は必ず圧縮された状態の空間を通らなくちゃならないから、それに耐えうる耐久力がないと通り抜ける際に空間ごと潰されちゃうのは当たり前だよねぇ」


「……逆に、その三つをどうにかでにれば、転移魔法は実現可能、ということですか」


 ゆっくりとした、まるで聞いてはいけないことを聞いているような問いかけに、モータスは曖昧な笑みを浮かべる。


「まぁ、理論上はねぇ。もしかして、なにか策があったりぃ?」


 逆にモータルは楽しそうに、談笑の延長線のような軽い口調で答えていた。そんな返しにミクロアは慌てて首を横に振る。


「い、いえ! いまのところ解決の糸口すら……でも、わたしのお父――マ、マーロック博士は転移魔法を、あと一歩まで完成させました」


 ミクロアの方から父親の話をするのは意外だった。それはモータルも同じだっただろう。昼食を一緒にするようになってから一度も父親の話題はしようとしなかった。

「……まさか、研究資料が残ってる、とか?」


 探り探り、と言った風に問いかける。


「い、いぇ……転移魔法についての資料は家にも置いてなくて……。でも、実現自体は可能、ということです」


 そこで初めて、ミクロアはモータルの眼を真っすぐに見た。いつになく真剣な表情で口を開く。


「わたしは、どうしてマーロック博士があんなことをしたのか、その理由が知りたいんです。だから、転移魔法を完成させて、真相を究明したい。いえ、しなくてはならないんです。モータルさん、協力、してもらえませんか」


 決意の籠った力強い言葉に、モータルは驚いた様子だったが、即座にいつもの調子に戻ってミクロアへ笑いかける。


「もちろんだよ。あたしにできる精いっぱい、協力させてもらうね。絶対、完成させよう!」


「は、はい!」


 ミクロアの行動によって、二人の距離はグッと縮まった。まさかミクロアがここまで積極的に動いてくれるとは思ってもみなかった。これでこの二人に関しては俺が何かしなくても大丈夫だろう。俺も他のことに時間を割ける。


 モータルが帰って一時間後、冷静になったミクロアが自分の行いを思い返して悶絶するのを横目に、俺は今後、さらに円滑に研究を進めるにはどうすればいいか逡巡するのだった。

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