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アイスバー

作者: 楽部

 朱かった八月が過ぎ、しかし、まだ暑さ残る九月。帰社途中、涼を求めてコンビニ店舗に寄った。ひんやりと汗は引いていき、さらにひんやりとしている冷蔵ケース周り。懐かしいアイスバーに目が行った。


 定番の銀紙の外装。


 涼むだけでは申し訳なく、気恥ずかしさはあるが、1本それを購入して外に出る。


 再会した熱気に当てられる中、白く細かい水滴に覆われるアイス。昔と変わらないのだろうが、手の大きさが違う、サイズは少し小さくなって思えた。丁寧に銀紙を剥がすと姿を現す乳白色。期待する口が、先端からガブリとそれを齧り付けば、広がる冷たさと甘さ、ここは記憶と変わらない。歯に滲みるを厭わず、溶けるより早く消費していく。もうアイスは棒を残すのみ、染み出してくるのは棒の木の味。


 うまかった。とてもおいしかった。


 久しぶりに食べたことで、上振れする感覚。しかし、昔食べた時の高ぶり、興奮には及ばない気がした。当たりが出ていたなら多少違ったかも、いやそんなではない。


 1本が今より大きく、でも1本では足らず。さらに欲して、ダメと窘められたあの時分。何本でも買え、何本でも腹に納められるものの、そんなに欲しなくなった今の自分。価値の差は、そのまま子供と大人の差。そういうことだろうか。


 終わる夏を少し寂しく思い、まだ暑い、しばらくは味わえるとも思い。棒はゴミ箱へ捨て、社に戻った。

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