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パーティメンバーが全員、ドッペルゲンガーなんですが。  作者: 山下兆
第零章 運命の始まり
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プロローグ

 その日、彼女達が直面した事件は、紛れもない奇跡であり、何の仕掛けも無い偶然でもあり。

 誰が望んだわけでもないという意味では、ある種の呪いとも捉えられただろう。


 いつかどこかの魔法の世。ジポーネ王国、王都トキヨト。

 その一角に構える巨大な屋敷にて、少女達は世にも奇妙な、衝撃的な出会いを果たした。


「………???」

 疑問、というよりは困惑か。少女は目の前の光景に、筋の綺麗な二重瞼をぱちくりぱちくりと繰り返し開閉させていた。

 尋ねるように、右隣に視線を渡す。そこにはメイド服を身に纏った女性、歳は自分の四倍はあるだろうか。

「アカネ・ホウジョウ様」

 女性は穏やかな笑みでこちらを見つめ、自分の名前を呼んできた。

「…はい」

 空っぽな心で返事をする。少女──アカネ・ホウジョウの理解は、すぐそこにある驚くべき光景に未だ追い付いていない。

「こちら、アカネ様とともにご入居されます。本年結成の『紫』等級冒険者トキヨト地区のパーティメンバーの方々──」

 女性は丁寧な口調で言葉を紡ぎながら、アカネの前に立っている三人の少女を一人ずつ、五本の指で指し示しながら紹介し始めた。


「──こちらから、イレイナ・アンダーソン様」


 エメラルド色の髪を肩甲骨の辺りまで垂らし、真っ白な肌にダイヤモンドの如く透き通った瞳を携えた少女。背丈は百五十に少し満たない程度で、凹凸の少ない小柄な体型。

「よ、よろしくお願いします……」

 イレイナ・アンダーソンは、自分と同じく困惑しながら、ぎこちなくも柔らかな笑みを見せた。


「ウノ・ミナモト様」


 エメラルド色の髪を後ろで一つに束ね、真っ白な肌にダイヤモンドの如く透き通った瞳を携えた少女。背丈は百五十に少し満たない程度で、凹凸の少ない小柄な体型。

「よろしくお願いしまーす!!」

 ウノ・ミナモトは、もはや全てを受け入れているかのような無邪気な笑顔を浮かべた。


「エリカ・アシカガ様」


 エメラルド色の髪を顎の高さで短く切り揃え、真っ白な肌にダイヤモンドの如く透き通った瞳を携えた少女。背丈は百五十に少し満たない程度で、凹凸の少ない小柄な体型。

「よろしくお願いします」

 エリカ・アシカガは、ただ深刻そうに眉を(ひそ)めていた。



「………アカネ・ホウジョウです、よろしくお願いします…」


 エメラルド色の髪を肩の位置で二つに結び、真っ白な肌にダイヤモンドの如く透き通った瞳を携えた少女。背丈は百五十に少し満たない程度で、凹凸の少ない小柄な体型。

 アカネ・ホウジョウは、きっと何とも言い表せない微妙な苦笑いを浮かべながら自己紹介をした。


 様々な人種が通りを歩くジポーネ王国。その中でも、この幻想的な髪色は比較的珍しいはずであり、この目の輝きもなかなか見られないものであるはずなのだ。それなのに。

 この空間には、それが同時に四つある。


 同じ顔、同じ身体、頭頂から脚の爪先まで一か所も異ならない色彩。

 目に見えて違っているところと言えば、髪型と服装、その程度。



 ──これは、四人の少女の物語。

 それは運命と享受すべきか、あるいは呪いと恐れるべきか。


 ──奇跡的にも巡り合ってしまった、同じ姿形をした四人の魔法使いの物語である。

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