子供は決して読んではいけない大人の為の童話 幸福はいつも貴男のすぐそばにいるってことを忘れないで
登場人物紹介
ふじわらしのぶ
主人公。伝説の勇者。カレーはそれほど好きではない。
兵士
しのぶを憎む愚かな男。カレーパンが大好き、ゆえにカレーパンマンが許せない。
聖騎士ガルベス
しのぶを慕いつつも任務から本当の気持ちを隠す男。
王
国王。しのぶの力を狙っている。スライムプレイを強要し、王妃に逃げられている。悪漢。
グレゴール王子
秘密結社クロノスの戦闘員。ヘルメットを取ると獣化する。隊長のヴァモアより強そうだが、部下の身分に甘んじている。
ルイーズ姫
グレゴールの妹。ふじわらしのぶの家に来ては冷蔵庫を漁り何かを食べていく悪女。この前もザンギを勝手に持って行った。
スタインバーグ
死神。自分の武器をデスサイズと呼ぶか、グリムリーパーと呼ぶか迷っている。
時は未来。一人の男の勇気が世界の運命を変える!
歌
悲しみは悲しみしか生まない。なぜならトンボの幼虫はヤゴだから。
怒りは怒りしか生み出さない。なぜならイカの塩辛の原料はイカだから。
しのぶ しのぶ センチメンタル 今日もどこかでフランクフルトのでかいヤツを食べている。
「囲め、囲め。この中に勇者がいるぞ。そいつの名前はふじわらしのぶ。世界を救う力を持った男だ!」
「うわー!」
「うわー!」
ある日、家のトイレでウンコをしている途中に兵士がやって来た。
その兵士は失礼なヤツで私がトイレに入っているというのにドアごしに用件を伝えようとする。
「もしもし、伝説の勇者ふじわらしのぶさん。王様が城に来いと言っています。めんどくさいからすぐに来てください」
「わかった。ウンコが出たらすぐに行く。あ、行くって言ったけどオーガズムに達するとかそういう意味じゃないぞ」
その兵士はドアに蹴りを一発入れてから出て行った。
私は思う存分、ウンコをしてからまたご飯を食べて寝てしまった。
私がひどいヤツだって?仕方ないだろう。
ウンコを出せばお腹が空く。
そしてご飯を食べればいつかのウンコが絶対に出る。これは自然の摂理だ。
私はその日、王様からいっぱい褒めてもらう夢を見ながらベッドで眠ってしまった。
何か頼まれていたような気もするするが思い出せないのでやっぱり仕方ない。
そんなに文句を言いたいなら君がやればいい。
私はあくる日の朝も新しいウンコを出す為にご飯を食べていた。
「もうご飯の為にウンコするのか、ウンコの為にご飯を食べているのかわからなくなってきたな。どっちか一種類でよくないか、コレ?」
私は朝カレーを食べながら呟く。
しまった。今のセリフをSNSに投稿すれば大人気間違いなしだ。
私が至福の時間に浸っていると招かれざる客がやってきた。昨日の兵士と仲間たちだ。
(やれやれ気忙しい連中だ。私にはカレーを食べて出す暇もないのか。トホホ)
私は居留守を使うことにした。
「おい、ウンコデブ!てめえ何ばっくれてやがるんだよ!さっさと出て来ないと家を焼くぞくらあっ!」
兵士は怒声を上げながら私の家の扉を何度も蹴った。
十回、十一回。私は横暴な兵士に見の程というものを教えてやろうと即死系の魔法を使った。
バタバタバタ。家の外で人が倒れている音が聞こえてくる。
例の兵士は同僚の突然の死に半狂乱になって何かを叫んでいた。
私はカレーを食べ終わると何喰わぬ顔で食器を洗い、棚にしまうと部屋に向かった。
ご飯を食べたら寝る。起きたらウンコする。
何と健康で文化的な生活だろうか。
兵士は諦めの悪い事に私の気を引こうと何度もドアを叩いた。
「おい!俺の仲間が勝手に死んじまったぞ!何とかしてくれ!お前、仮にも勇者だろうが!」
「…。信じていた兵士たちに裏切られ、自分の家の扉を何度もキックされましたが、仕返しに仲間を皆殺しにしてやりました。後悔してももう遅いです」
「そういうトンチの利いた問答はいいから!このままじゃ死体が腐っちまうよ!」
ダンダンダンダンッ!兵士は馬鹿の一つ覚えにまた扉を叩きまくる。
今さら言うまでもないが私はこういう乱暴なヤツが大嫌いだ。
しかしいつまでやられても五月蠅いだけなのでついに止めを刺してやることにした。
「じゃあお前の仲間をグールにして復活させてやるよ。後はどっかの聖職者にでも頼って何とかしてもらうんだな!」
私は人間がグールになる薬を家の前に転がっている死体の山に撒いてやった。
すると死体は全てグールになって他の死体を食い始める。
(これが食物連鎖というものか…)
私はかつての仲間たちが食い合う姿を見て泣き叫ぶ兵士を見ながら扉を閉めてトイレに向かった。
次の日、王様が近衛兵と聖騎士を連れて私の家までやって来た。
私はトーストにカレーをつけて食べている最中だったので居留守を使うことにした。
ご飯の時は居留守を使う。社会人のマナーだな。
私は以前ジャンプで連載していた将棋漫画「紅葉の季節」を読みながら怒声をあげる例の兵士の声を無視する。
「紅葉の季節は、連載第一話にヒロインのハダカを出したのが失敗だったな。あのお姉ちゃんのハダカのせいでちっとも将棋の事が頭に入って来ない…」
私はカレーの入った皿に食パンを直接つけて食べた。
朝食のカレーは肉の入っていない野菜カレーというものだったが、特製スパイスのおかげで美味しく仕上がっている。
クミンシードだけはすり鉢を使って自分で粉にした方が格段に美味いのだ。
そして、この黄土色の物体は胃と腸を通ってウンコになるのだ。
うえっ、言っていて気持ち悪くなってきた。
私はカレーの為に用意したミルクティーに口をつける。
インドのヨーグルトドリンク、ラッシーの方が美味いという人間もいるがカレーにはやはりロイヤルミルクティーだろう。
茶葉を牛乳で煮出して作る、この飲料の芸術作品に勝てるものなどありはしない。
私は紅茶花伝と書かれたペットボトルからカップにミルクティーを注いだ。
「聖騎士ガルベスだ。お尋ね者ふじわらしのぶよ、お前は罪なきお城の兵士たちを殺害した挙句グールにしたという罪で逮捕する。神妙にお縄につけい!…そして俺宛にサインを書いてください」
聖騎士ガルベスはご丁寧に色紙を出してきた。
私はこういう時の為に用意しておいたエロゲーの予約特典のようなイラスト付きサイン色紙を聖騎士ガルベスにプレゼントしてやった。
ガルベスはよせばいいのに部下や同僚、果ては上司に私の色紙を自慢している。
私はそのまま家の中に戻ったが、今度は聖騎士ガルベスが仲間たちと私のサイン色紙を巡って血みどろの殺し合いを初めてしまった。
(やれやれ。人気者は辛いね)
私は携帯電話の時計で時間を確認した後、家の外に出る。
玄関先ではガルベスが部下に袋叩きにされていた。
私も勇者と呼ばれた男だ。何とかしてやろうじゃないか。
「これこれ君たち、イジメはよくないよ?これ以上俺の家の前で騒ぐようなら念力でキンタマを破裂させてから殺すけど続ける?どうする?」
私は一番平和的な手段を提案する。
ガルベスを人間サンドバッグにしていたファッキン共は私の慈愛に満ちた笑顔に敬意を表して次々と股間を抑えながら気絶していく。
ガルベスは鼻水を垂らしながら私に命乞いをした。
「おおおお願いします。どうか!どうか!キンタマだけは勘弁してやってください!このキンタマはいつも袋の奥に隠れているけれど…本当は気の優しい良い奴なんです!」
ガルベスは恐怖のあまり泣き出してしまった。
(これが聖騎士と呼ばれた男の末路か。何とも憐れな事よ。ならばこれ以上醜態を晒す前に殺してやるのが慈悲というもの…)
私はガルベスの肩を叩いてニッコリと笑った。
「ガルベス、よく聞け。例えキンタマが無くなってもお前はお前だ、俺が保証してやる。だから潰す以上」
ぶしゃあッ‼‼
私は通りすがりの腕力家の人に頼んでガルベスのキンタマを潰してもらった。
ガルベスはその時に悲鳴を上げることは無かった。とても勇気のある男だ。
こういう男が勇者を名乗るべきなのだろう。
私は腕力家の人に私が書いた”自分の子供と仲良くなれる本”をプレゼントした。
腕力家の人はあり得ないくらい大きな声で笑いながら消えて行った。
私はキンタマを失ったガルベスを瓶、アルミ缶、ペットボトルと一緒に袋に入れると近くのファミリーマートのゴミ箱に捨てた。
ガルベスは知人ではないのでこれは生活ゴミではない。えっへん!
私はガルベスのことを全て忘れて家に帰り、晩ご飯に肉無しゴーヤーチャンプルーを作ってから食べて寝た。
次の日、王子と姫が軍隊を連れて私の家にやって来た。懲りない奴らめ。
便秘を解消する秘訣を私がタダで教えるとでも思っているのか?
「おい、しのぶ。昨日父上がここに来たはずなんだが、どうした?」
王子の名前はグレゴールというのだが、このグレゴールという男はフレンドリーなところがあって他人の家に入ると冷蔵庫を漁るクセがある。
今日も私の家の冷凍庫から勝手に牛乳の棒アイスを出して食べていた。
私の中でグレゴールへの殺人優先度が1アップする。
グレゴールは何を勘違いしたかピースサインを返してきた。
俺の堪忍袋の耐久レベルは最大で3までだ。忘れるなよ。
「この辺にはファミマとイオンしか無いからなあ…。札幌のマツキヨにいるんじゃないの?」
私はアイスの入っていた箱を冷蔵庫に戻し、ビニール袋をゴミ箱に捨てる。
グレゴールと一緒に私の家にやって来た妹のルイーズ姫はテーブルの上に置いてあったタクワンをボリボリと食っている。
グレゴールは2、ルイーズは1というところだ。
兵士たちは外で待っているようなので、こんな時の為に合成しておいた人食いスライムに始末させることにした。
「ぎゃあああああ!!!溶ける!溶けるううう!!王子、お逃げ下さいいいい!!」
外から兵士ったいの悲鳴が聞こえる。
グレゴールは馬鹿なのでこんな時でもイヤホンをつけて携帯電話で人生相談をしていた。
一日に数回はやるそうなので人生相談センターの人もさぞや迷惑していることだろう。
私はこれからグレゴールとルイーズを闇に葬るつもりだが、それはやはり正しいことをしているのだ。
「しのぶ、外がうるさいわよ?静かにしろって言ってきてちょうだい…。まったくもう少しおいしいタクワンは用意できないのかしら」
ルイーズはかつおタクワンを平らげ、次はかぼちゃ漬けをバリバリとやっていた。
おのれクソ女、タダだと思って食いやがって。
私は漬け物入れに予備のかつおタクワンと野沢菜の漬物を補充する。
こうしてストックを用意しておけば食事の…、ルイーズがまた食っている。
ルイーズのレベルが3になった!
「死ね」
私は漬け物をバリバリやっているルイーズの首を手刀で飛ばした。
ルイーズの首は回転しながら空の花瓶の上に乗った。
それを見ていたグレゴールが手を叩いて喜んでいる。
私は指を立てクルクル回してグレゴールの注目を集める。
トンボのように目を回してグレゴールが油断した隙に私は…ビシャアッ‼…グレゴールの首を飛ばした。
そして首だけになったグレゴールは見事にルイーズの頭にオン‼王族のダブルアイス、一丁あがりぃ‼
私は外に徘徊しているグールと人食いスライムに馬鹿兄妹の身体をプレゼントしてウンコをしてから寝る。
ここだけの話、人食いスライムの正体が王様なんだが別にみんな興味ないでしょ?
もうびっくりさせないでよ。
あくる朝、グールたちは人食いスライムと壮絶な戦いをした結果として全滅していた。
スライムも都合よく死んでいる。
ドロドロになったスライムの死体からは二人分の人骨が出ていた。多分知らない人たちだろう。
「俺の名前は死神スタインバーグ。しのぶよ、今日は至高神の命を受けて、お前を殺しに来た。この私の死神の大鎌を受けてみるがいい!」
やれやれ今日は朝から死神かよ。
黒い燕尾服を着た爽やか系のハンサムボーイが私の家のトイレから現れた。
私は毎朝トイレを使う前に掃除をしているので入れ替わりに入ったという気分になる。
幼なじみのファーストキスを奪われた主人公とはこういう気分だろうか。
私は人差し指と中指に渾身の力を込めて男の脇の下にねじ込んだ。
陣内流柔術でいうところの雷電光だが、私の使う骨子柔術では胴崩しという技術の一つである。
漫画「真島君すっ飛ばす」では独型として表現されていたが、私の知る技のほうは対手つまり演武的な技巧に近い。
相手が陽の動作から陰の動作を終えた時に無防備な状態を持続させる、これが胴崩しの術理だが雷電光タイプは筋肉の硬直を持続させる技なのである。
感覚的に言うと笑いすぎて筋肉が強張るような状態を想像してもらえるといいだろうか。
スタインバーグは二指(私の使う流派では二本拳という)を脇下にねじ込まれ、驚いた様子になっていた。
私はヤツの顔から胴が締まった(筋肉が硬直状態にあること。陰という動作になる)ことを確認し、ヤツの鎖骨を肋骨に指をかけた。
そしてヤツを持ち上げ地面ででんぐり返しをさせるように投げた。
これが現代柔道で禁止されている方の俵投げである。
普通ならば前回り受け身を使って事無きを終えるのだが、ここで胴崩しが決まっていると別の現象が発生するのだ。
腹筋と背筋が強張って着地した瞬間に耐えてしまうのだ。
生物の危機察知の習性なのでこれは仕方ない。
つまり、今スタインバーグは地面に背をつけた状態で完全脱力したことになる。
スタインバーグはハッとして顔を十字受けで庇おうとするがもう遅い。
「こんな演武でしか使えない技にひっかかるなんてお前、格闘技に向いていないんじゃないか?じゃあな、スタインバーグ」
私は渾身の力でスタインバーグの人中を踏みつける。
スタインバーグの顔面は踏み砕かれて大地に紅い花を咲かせた。そして、残心。
「戦う前から勝負は決まっていた。俺のウンコルームで勝手にウンコするヤツは殺す‼」
私は大きなダンボールの中にスタインバーグの死体を収納し、金曜日の古紙回収の日に出す事を決意する。
さらば、スタインバーグ。