運命を変えるための作戦
夜、亜子ちゃんが寝てしまったあと私は机に向かい、羊皮紙にインクを垂らしていた。
私がこの世界に転生してから数日、いつ物語が進んでもおかしくはない。今のところ亜子ちゃんの悪い噂は流れてないけど…、流れてから行動したって遅い。
だから今のうちに作戦を練ろうと思い、その作戦をメモするためにこの羊皮紙を買ったのだ。
まず、作戦1
『町の人の好感度上げちゃおう大作戦!!』
そもそも、私や亜子ちゃんの好感度が町の人から低いから、変な噂が立っても沈静化せず広まってしまった節がある……と思う。
ほら、誰だってどうでもいい人の悪い噂話なら嬉々として喋るけど、仲のいい友達の悪い噂はしたがらないでしょ? 学校でも性格悪い人の噂話は皆結構してたもん。だから、まずは好感度を上げることを優先。
……でも、はっきりいって私は兎も角、亜子ちゃんの町の人の好感度を上げるのはかなり難しい。亜子ちゃんのあの特殊な容姿もそうだし、亜子ちゃん自身も……、その生い立ちの不幸さから人を避けてるところがある。
だからまず、亜子ちゃんを外に連れ出すことから始めなくては。
作戦その2
『戦力及び――あの人を見つける』
戦力……、というか、あの悪魔に勝つだけの『何か』が必要なのである。
私がこの教会の最高責任者とかなら簡単にロキに冤罪着せて、因縁付けて無一文で教会から追い出したり出来たけど、今の時点で私はただの凡庸なシスター…。さすがに最高責任者のロキを追い出すことは出来ない。
かと言って、純粋な腕力でロキに勝てる訳でもない。……ってゆうか、悪魔の弱点は聖水のはずなのに! あのクソ悪魔、毎日の日課が聖水を浴びることってどうなってんの!? しかも毎日ふつーに十字架の首飾りを首に掛けてるし!! そういう悪魔の撃退法って全部迷信だったわけ!?
……権力も腕力も悪魔祓いも駄目。例え私が少ないお給料で傭兵やらを雇ったとしても、あの悪魔、魔法を使うから意味がないかもしれない。
となるとやっぱり――あの人たちを見つけるしかない。
あの人たち、とは、『探偵と蛇』に出てくる亜子君とロキの同僚たちである。
そもそも、『探偵と蛇』という漫画は探偵とは名ばかりの警察署の物語だ。
主人公の亜子君はまだ刑事になって数日のピッチピチの新米刑事! そんな亜子君に、『元探偵』であるロキが手取り足取り捜査のノウハウを教えていくのだが――…、凄く、健全です。間違ってもR18なんかには突入しない。
……。
そんな原作からここまで物騒な二時創作を作っちゃうのもある意味凄い気がする。……嗚呼、でもこの二時創作の作者、『二次元に活きる』先生、本当に尊敬しています…。
あ、話が逸れちゃった。こほん! そう、その原作の方では、超絶頭のキレるロキだが、刑事としては冷酷なところがあるため、その冷酷なところを同僚たちがカバーしていたのである。
だからこそ、私はその同僚たちを仲間にしたい、と思った。
しかし、かなり不安があります…。寧ろ不安しかない。
前提として、ここは二時創作の世界。亜子君やロキがいるからといって、それ以外の原作キャラクターが存在しているかも怪しい。私が寝る前に読んだ時はシスター亜子と牧師ロキのことしか書いてなかったから、それ以外のスポットライトの当たらないキャラの中に原作キャラは存在していないかもしれない……。
「考えてても仕方ないよね……。明日、町に行った時に探してみるか……」