《Side:遠藤あき》
放課後の生徒会室
室内では幼馴染みである生徒会長の松本姫華と副会長の遠藤あきが書類をみて何やら話している。
「ヒメ。とりあえず、部活動の予算も決まったし今日提出する書類も終わったわよね?」
あきはそう言って机に顔を伏せる姫華に声をかける。
「うん。手伝ってくれてありがとう、あきちゃん」
顔を上げて返事をする姫華をみて呆れた様子をみせるあき。
「生徒会長だからって色んな仕事抱えてると体調崩すわよ?少しは周りに任せて楽をしなさい」
そう言って姫華と自分の鞄を取ると姫華を引っ張って部屋を出る。
「あ~あ、今日もケンちゃんと話せなかったな~」
二人で連れだって廊下を歩いていると姫華がそう言ってため息をつく。
ケンちゃん。姫華がそう呼ぶのは一人しかいない。昔から弟の様に可愛がっている剣斗の事を彼女はそう呼んでいる。流石に途中で剣斗から人前で呼ばないでと頼まれ他の人前で呼ばない様に気をつけているが。
服装検査の日からも、剣斗を見かける度に声をかけようとしている彼女だが何故か見失ってしまうのだ。
そんな幼馴染みを見ながら苦笑い浮かべるあきはもう一人の幼馴染みから入学して少しした後に聞いた事を思い出していた。
佐藤剣斗。私達の二つ下の男の子で小さい頃にヒメと遊ぶ内に仲良くなった大事な幼馴染み。
小さい頃から何をするにも一緒だったし、中学の頃もよく三人で遊んでいた。
高校も私達の学校に来ると聞いた時は嬉しかったし三人でお祝いしたりもした。
そんな剣斗が入学して明らかに私達を避けている。何で急に私達を避ける様になったのか分からない私達は凄く悩んだ。
特にヒメは剣斗を凄く大事に思っている。私も剣斗の事は大事だけどヒメには敵わない。ヒメは剣斗が生まれた頃から一緒にいるし弟の様に可愛がっている。剣斗もヒメを実の姉の様に思っているのは以前聞いた事がある。
そんな剣斗が私達を避けてる事に我慢出来ないヒメは剣斗を見つける度に追いかけている。ただ、その度に何かしらの邪魔が入った。先生だったり生徒だったり。
生徒会長であるヒメは先生や生徒に頼み事される事も多い。生徒会長として無碍にも出来ず話を聞いている内に剣斗はいなくなってしまうのだ。
昔なら放課後に剣斗の家に問い詰めに行けば良かったけど今は私達も生徒会が忙しかったりバイトがあったりと学校以外で会うのは難しくなってしまった。特に剣斗が入学してから突然忙しくなってしまったのだ。
そんな事もあり剣斗と話せないでいたある日、剣斗が私の所へ会いに来た。
突然の事もあり驚いたけど剣斗に何故私達を避けるのか聞いてみた。
すると剣斗は新しく出来た友達が出来た事。実は中学の頃は友達がいなかった事なども教えてくれた。
中学の頃は剣斗は私達とよく遊んでいた。そのため、剣斗に嫉妬した先輩や同級生から文句を言われたりと苦労したらしい。
そんな事を新しく出来た友達に打ち明けたら、一旦距離を置いたら良いと言われたらしい。
あれだけの美人と仲良くしてれば嫉妬されるのは当たり前。別にずっとじゃなくて良いから学校に慣れるまでは距離を置いて後で謝れば良いと。
私に会いに来たのはヒメを止めて欲しいと協力を頼みに来たらしい。
そんな事を言われて正直腹が立ってしまったけど友達が出来たと喜ぶ剣斗に怒る気になれず、ヒメを止めるのは協力はしないけど逃げた後のフォローだけはしてあげると約束して、必ず後で謝りにくる事を約束させて別れた。
結果、入学してから二ヶ月くらい立っているけど剣斗とはろくに話せてないヒメは不満そうにしている。
「剣斗も入学したばかりで忙しいんだろうし余り構わないであげたら?それに嫌われてる訳じゃないだろうし。その内謝りに来るでしょ?」
そう言ってヒメを慰めるけど不満なのは私も同じだから剣斗には後で必ずお仕置きしてあげる。
剣斗のフォローしつつ職員室に書類を届けて下駄箱に向かう。
「ヒメ、この後バイトよね?私もバイトだから駅まで一緒に行きましょ?」
そう言って二人で話しながら駅に向かって歩いているとヒメが足を止めて周りを見渡す。
「どうしたのヒメ?」
そう声をかけると不思議そうに
「今、何か聞こえなかった?気のせいかな?」
そう言って首を捻るヒメ。特に何も聞こえない事から気のせいだと再び歩き出す。
やがて駅に着くと別れを告げて別々の方向に進む。そんな時、なんとも言えない不安を感じてヒメの方に振り返る。
既にヒメの姿は見当たらない。感じた不安に少し心配にもなるが気を取り直してバイト先に向かって歩き出す。
この時は、まさかヒメが目を覚まさなくなんて夢にも思わなかった。




