《砂漠の旅:その二》
『そういえば、もう三日も何も飲み食いしてないのにお腹が空かないんだけど何で?』
最初は食べ物なんか無いしお腹が空かなくて助かると思ったけど三日も何も飲み食いしてないなら普通倒れてもおかしくない。
〈獣人族は一週間は何も飲み食いしなくても生きていけます。〉
『そうなんだ。え?じゃあ一週間以上たったら?このまま何も食べれなければ死ぬの?』
〈食べれば死にはしません〉
『食べればって砂漠だから何もないけど?』
〈この砂漠にはヘビや熊など生き物がいますので大丈夫です。これらは魔物と呼ばれており、食べる事が出来ます。他にも用途は様々で街ではギルドと呼ばれる場所で取引されていますよ。この砂漠地帯には他にも多くの魔物が存在しておりますので食べる事には困りません〉
つまり、魔物と闘えと?
『まだ魔法も使えないんだけど?武器もないから素手で倒せって言うんじゃないよな?』
〈オアシスがこの先にあります。オアシスを見つけたらそこに生えている木の枝で槍を作って下さい。マスターなら、それで弱い魔物なら倒せます。〉
倒せるって、簡単に言うなよ。けど、この先絶対必要な事だし、とりあえず彼女の言葉を信じて闘うしかないか。
『そういえば、さっきギルドって言ってたけどどういう所?』
〈はい。ギルドとは魔物の買取りや仕事の依頼の仲介等をする組織です。ギルドに登録すると様々な依頼を受ける事が出来るようになり、腕に自信がある者や普通の仕事には就けない者が登録して活動しており彼等を通称冒険者と呼びます〉
冒険者か。ファンタジーの定番だな!
『ギルドは獣人でも登録出来るの?』
〈基本的にギルドは誰でも登録が出来ます。ですが獣人族は場所によっては拒否される場合がありますので獣人族の冒険者というのは多くありません。また、ギルドは登録した者にランクを付けており依頼を完了する事やギルドに貢献する事でランクは上がります。ですが獣人族の場合、受けられる依頼も少なくランクを上げるのは難しいでしょう。〉
なんか登録するメリットはなさそうだけど、どうしようかな?まあ、ギルドに行ってみて決めるか。
『なあ、地球から来ている人達の事は何か分かる?』
とりあえず現状この世界の知りたい事は聞けたし、何か地球の人達の事を知らないか聞いてみる。姫華姉さんの場所は分からないだろうけど他の人の事は何か分かるかも。
〈居場所は記録しております。これから行く街に女性が一人居るようです。〉
それだけか。でも一人でも居るなら会いたいな。情報交換もしたいし。
もう少し歩くペース上げるか。
アルティアと話してから、既に一週間が経とうとしていた。そろそろ何かを食べないと体の限界が来ている事を感じる。歩くのが辛い。
この先にあるというオアシスはまだ見つからない。喉も限界だ。水が飲みたい。
暑さの事もあり、俺の体力はどんどん奪われる。その時、やっと前方にオアシスが見えた。
オアシスに向かい何とか歩を進める。
「水。水がある。」
ゴク、ゴク。水をすくいあげて喉を潤す。ああ~生き返る!
ぎゅるるるるる。
喉を潤す事ができたら今度はお腹がなった。
よし。殺ってやる!俺はオアシスに生えている木から太さがある枝を折り石で削る。
この石は道中で見つけた割れてたのを拾っといた奴だ。
尖らせた木の槍を持ち、獲物を探す。
オアシスには水を飲みに魔物も現れるらしい。俺は周りを見回す。
「いた!」
近くの岩場の影から現れたのは背中が石になっているイノシシみたいな奴。
この一週間の間に二回程見かけた奴だ!二回目の時は、熊みたいな奴と闘っていた!
丸まって背中の石で体当たりされた熊は岩場にぶつかって一撃で殺されていた。
あの時は怖くて居なくなるまで息を殺して隠れている事しか出来なかったが、今は違う。俺は餓えているんだ!
「お前はただの肉だ」
気付かれないようにイノシシが現れた方向とは逆側から回り込み隠れながら俺はイノシシに向け鑑定を行う。
{ストーンボア。レベル二十一。ランクD}
『ストーンボアってどんな魔物だ?』
〈ストーンボアは背中を石に覆われたイノシシです!体を丸めて繰り出す体当たりは強力で、今のマスターだと耐える事は出来ません!〉
『そんな事はどうでもいい!どうすれば倒せる?教えろ!』
〈攻撃は直線のみなので避けるのは問題ありません。方向を変えるときは鈍いので横を向いている間に石のないお腹を力一杯突き刺せば倒せます!〉
「よし、行くぞ」
サポーターからのアドバイスを受けた俺は作戦を決め飛び出した!
「!?」
ストーンボアは突然、飛び出した俺に一瞬驚いたが体の向きを変えると体を丸めて突っ込んできた。
「うわっ、あぶな!?」
あぶな!?思ったより速かった。でも余裕で避ける事が出来そうだな!身体能力が高いお陰だ。
「ブォォォォォン」
俺に避けられたストーンボアは向きを変えると雄叫びを上げ、体当たりを繰り出してくる!
避ける事、数回。砂を巻き上げながら俺はストーンボアを目的の場所に誘導した。
「よし。おい、俺はココだ!」
砂埃で俺の姿を見失ったストーンボアに声をかける!
「ブォン」
俺の声のする方に向きを変えたストーンボアは短く声を上げると、勢い良く突っ込んできた!
俺に向かって突っ込んできたストーンボアを軽く避け、木の槍を構える!
ズドォォォン
ストーンボアは俺が背にしていた岩場に勢い良くぶつかる。
岩場に激突したストーンボアは衝撃から動きが鈍る!
今だ!俺は勢い良く槍を突き刺した。
「ブ、ブォォン」
「うおぉぉぉ」
俺はがむしゃらに突き刺した槍を力一杯押し込んだ!
「や、やったぁ!」
槍が深く刺さったストーンボアはやがて力なく倒れ込む!その姿を見ながら体の力が抜けた俺は地面に倒れ込む!
「よ、よし!よし!よし!よし!」
初めて魔物を倒した俺は、その喜びを深く噛み締める。
しばらく休んだあと、立ち上がった俺はストーンボアをどうすれば良いか考えていた。
「さて、このままだと他の魔物が来るかもしれないし移動した方が良いよな?」
そして、ストーンボアをみる。かなり大きい。一メートル以上はありそうなコレを持っての移動は無理だ。どうしようか。
「もったいないけど、今は食べる分だけ運ぶしかないよな。」
よし、そうしよう!って決めたところで気が付いた!
あれ?どうやって解体すれば良いの?




