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2-3 どうすべきか考えようと思います

「では、本日はここまでにいたします」

「ありがとうございました。マーサ先生」

「……ええ」


 授業中、私は動揺を隠すのに必死だった。

 話を聞いた瞬間にいたってはあまりの衝撃に眼の焦点もあわず呆然としてしまい、マーサ先生にはかなり不審に思わてしまった。

 それほどに、今日の出来事は私の心を支配していた。


 知ってしまった事は3つ。

 ・この世界が乙女ゲームの世界であること

 ・自分がヒロインにとってライバルキャラの一人であること

 そして、


(このままだと、私は死ぬという事……)


 この世界が完全にゲームの世界と決まったわけでは無いが、あまりにゲームに酷似した諸々の事象に私は戦慄を禁じえなかった。

 このまま何もしなければ第二王子アインと婚約した後、学園の卒業時には断罪される可能性が高い。


「お嬢様、いかがなされましたか?お顔の色が優れませんが?」

「あ、いえ……そうですね、今日は少し疲れました。部屋に戻ります」

「さようでございますか。ではご案内いたします」


 シュナイダーに先導される部屋までの道のりは、水の底を這うかのように、私の足は重く感じられた。


「では、お嬢様。何か御座いましたら、すぐに私どもをお呼びください」

「ええ、ありがとうシュナイダー。少し横になれば落ち着くと思います」

「わかりました。では失礼いたします」


 扉の向こうで足音が遠ざかるのを確認し、机の引き出しから紙の束とペンと取り出す。

 まずは、ゲームに関し覚えている限りの情報を書き出すことにした。


「第一目標は生き残る事だな。それには断罪前にこの国から脱出するしかないか……」


 咲良の話では、ヒロインがどの攻略対象を選択しても、ヴァージニアは断罪される運命にある。

 ということは断罪イベントが開始される前、誰にも見つからぬうちに安全な場所まで脱出する必要がある。


「断罪は、お父様達も納得せざるを得ない形に誘導されてしまう。……侯爵家の力は頼れない」


 家を頼れないとなると地位も名誉も捨て、独りの力で生きていく必要がある。

 王立学院に入学するのが10歳、断罪イベントが15歳。

 15歳でこの国から脱出し1人で生きていく方法を模索しなければならない。


「水商売とかは……、うぅ、きもい。絶対に無理だ」


 幾人もの男に奉仕する自分の姿を想像し、あまりの気持ち悪さに吐き気を催す。

 ここにきて自分の自我が男である事を再認識した。


 自我の問題は置いておくとしても、実際に15歳の少女が1人で生きるという事は、それがたとえ現実の世界であっても簡単な話ではない。

 まして中世ヨーロッパのようなこの世界では、よほどの幸運か才能が無ければ、その日の食事さえ困る可能性が非常に高いだろう。


「才能……か」


 せめてもの救いはこの世界が中世ヨーロッパではなくファンタジー世界である事。


「女でも男に負けない才能……、例えば……魔法か」


 ゲーム【ピュラブレア】には魔法が存在する。

 攻略対象であるヴァインは王国魔術団所属だし、戦争においても魔法使いは重要な兵種だった。

 実際にヒロインも魔法を使っていたし、ライバルキャラである自分が魔法を使えてもおかしくは無いだろう。


 また、魔法と同時に、ある程度の身体能力も鍛えておく必要があるだろう。

 これは、魔法を必要とする職候補として[魔術師団][傭兵][冒険者]のような荒事に魔法を用いる職が上げられるからである。

 魔術師団であれば戦いの最中、魔力が切れれば部隊を一旦下げ、別の兵種でカバーすることも可能だが、傭兵や冒険者となると魔力が切れた後もある、継続して戦う事を求められる可能性が高い。

 魔力が切れたと途端、足手纏いになる魔術師より、常に戦闘が可能な人間のほうが、他のメンバーの負担も少なくてすむし全体の生存率も上昇するだろう。


「剣と魔法の技術……」


 独学では流石に困難だろう。

 学園に入学した後ならば、学園内で指導者を探す事もできるかもしれない。

 だが、学園に入学するのは今から7年後である。

 できればそれまでにある程度の実力をつけておきたい。


「やはり、お父様にお願いするしかないか」


 父と交渉するとして、どのように話を持っていくか。

 下手な言い方では、不信感を持たれかねない。


 結局、いい案も浮かばず、無為に数日が過ぎてしまった……。

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