2-2 目を通してみようと思います
「7人の攻略対象ってのはこれか。」
俺はWikiの人物紹介ページに目をやった。
「あれ? 5人しか書かれて無いけど?」
「あぁ、あと2人はシークレットだから。開放条件を満たしてないと現れないらしいよ。ネタバレになるからそういう情報は別ページに書かれてると思う。どうせ1周目からだと攻略は無理だろうから今はいいよ」
そういうものか。とりあえず5人の内訳を確認することにした。
アイン=ファーランド
ギヴェン王国の第二王子にして白の封剣の守護を受けし者。容姿端麗、冷静沈着、文武両道というお約束な王子様キャラ。金髪碧眼。
ヴァイン=オルストイ
ギヴェン王国魔術師団長であるヴァイス=オルストイの息子。青の封剣の守護を受けし者。水の魔術と剣術の才能を有する陰キャなイケメン。髪は黒くて目つきが悪い。
ドライ=オーガスト
ギヴェン王国騎士団長であるアゼル=オーガストの息子。赤の封剣の守護を受けし者。熱血系なガチムチキャラ。燃えるような赤毛が特徴的。
フィーア=クィント
ギヴェン王国神官長セイン=クィントの息子。緑の封剣の守護を受けし者。おっとり癒し系で灰色の髪を持つ。少女と見紛う程の美しい青年。
ゼクス=クロイス
クロイス家の跡取り。黄の封剣の守護を受けし者。年上クールなイケメン。髪は緑色。
……残りはフンフとズィーベンだろこれ。安直なネーミングだなぁ、開発。まぁ、ワン、ツー、スリーよりはましか……。
さらにWikiのページを読み進めていると、男性キャラ以外に女性キャラの説明が書かれたページも見つける事が出来た。
「へぇ、ヒロイン以外に女性キャラっているんだなぁ」
「あぁ、それ? ライバルキャラだよ」
「ライバル? ってことは、男を取り合う相手か」
「まぁ、大体そうかな。乙女ゲームならそんなに珍しくないよ」
「ふーん」
ゲームでもリアルでも、うら若き乙女の戦いに終わりは無いってことか……。
とりあえずこちらもさっと目を通す。
ヴァージニア=マリノ
マリノ候爵家の長女。高飛車で金髪ツインドリルの少女。アインの婚約者。
リーゼロッテ=ヴェーチェル
ヴェーチェル伯爵家の三女。黒髪清楚でお淑やか。ドライの婚約者。
アンナ=クィント
神官長の娘。灰色の髪をした元気で明るい小動物のような女性。フィーアの妹。
ナターシャ=ミュラー
ミュラー伯爵家の次女。赤髪姉御肌で頼りがいのある女性。ヴァインの婚約者。
ブリジット=フォルカー
フォルカー候爵家の長女。知的メガネ学級委員長キャラ。ゼクスの婚約者。
「攻略対象の婚約者か身内か」
「そういうこと。攻略対象との仲を邪魔してくるからライバルキャラ。ライバルから攻略対象を完全に奪えば、めでたく恋人同士って感じね」
「えっ、ヒロイン悪女じゃね?」
「え、普通だよ?」
どうも略奪愛は普通の事らしい。
「学園パートの最後に断罪イベントってのがあって、そこで決着がつくの。上手くいけば、ライバルキャラとジニーちゃんの2人が断罪されるんだけど……」
「ジニーちゃん?」
「ヴァージニア=マリノの愛称。ジニーちゃんはアイン以外を攻略してても、ライバルと一緒になってヒロインを苛めてきたりするからさ。まぁ、いわゆる嫌われキャラかな? 他のライバルは修道院行きとか国外追放ぐらいにしかならないけど、ジニーちゃんだけは処刑されるって意味での断罪までされちゃう徹底っぷり」
「え、なにそれ酷くね?」
「本当はすべてのライバルで処刑するようなイベントを作ろうとしたらしいんだけど、やりすぎだって上層部に止められたらしいよ。開発者がTwitterで暴露してた。無念の開発はなんとか1人だけはと上層部に掛け合った結果、なら1名だけならいいよという判断になったみたい。という訳で、ジニーちゃんは彼らの生贄の羊となったのです」
「何がという訳だよ……。てか、侯爵家の娘を断罪するとか普通ありえないだろ。侯爵ってことは地方守護伯だし、下手すれば謀反が起きてもおかしくないレベルだろ」
「うーん、ジニーちゃんが魔族に誑かされた使途って扱いだから、それで侯爵家も納得したんじゃないかな。そのあたりちゃんとゲームには出てこないんだよね」
いいかげんだな。
俺なら自分の娘がそんなわけの訳が分からない理由で断罪されるなら、たとえ他国の力を借りてでも守ろうと考えるだろう。所詮はゲームだし、そのあたりは適当なのかもしれない。
「まぁ、メインの登場人物は攻略対象とライバルになるかなぁ。あとはNPCがそれなりに出てくるけど、特に攻略上問題ないから気にしないで。そーまには学園パートの後に発生する戦争パートをメインで手伝ってもらいたいかな」
「OK、了解した。そっちのWikiを重点的に読んどくわ」
「うん、お願いね!」
そんな感じで、俺は咲良と一緒にゲーム【ピュラブレア】の攻略に取り組んだ。
咲良と俺はこんな感じでよく一緒になってゲームをしていた。俺もゲーム自体嫌いじゃないし、むしろどちらかと言えば好きなほうだった。ただ社会人になってわざわざ無理してやるほどでも無いかなと思い、それまで手を出していなかっただけだった。
ゲームの手伝いはMMORPGのレベル上げの手伝いから、こんな感じの乙女ゲーム攻略まで様々に及んだ。
今考えると恋人同士でそれは無いんじゃないか?とも思うが、それはそれで咲良が喜ぶなら別にいいかとその時の俺は思っていた。