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俺が奴隷契約?

ボスを倒したあと振り返ってみると、捕らえられていた女性が跪いていた。

 うん訳が分からない。



「よく分からないけど立ってくれ」



 俺の言葉が聞こえたのか、少し間を空けてからその場に立ち上がる。



「へぇ」



 あらわになった女性の容姿を見て、思わず感嘆の声が出てしまう。


 長く伸びた金髪は緩くウェーブがかかっていて優しさを感じさせ、少し垂れがちな瞳は涙ぼくろと相まってどこか大人な雰囲気を醸し出している。さらには女性を感じさせるような大きな胸。男だったら目線がくぎ付けになってしまうだろう。スタイルも良く、胸の大きさがバランスを悪くしているということもない。まさに奇跡だ。

 身長は俺の胸くらいだから百七十センチぐらいだろうか。ちなみに俺の身長は百九十センチある。これは前の世界にいたころと同じだ。



 おっと。俺としたことが女性相手にジロジロと見てしまうとは失礼だったな。



「この度は助けていただいて感謝の言葉もございません」



 女性は完璧なお辞儀とともにそう口にした。



 ここで友人ならテンプレヒロインきた! とでも言った後、気の利いたセリフの一言二言口にするんだろうけど、あいにく俺はそこまで気を使うタイプではない。



「まあ無事みたいだったから安心したよ」



 だから当たり障りのない言葉を投げかけておく。



「あのままでしたら、私は奴らに辱めを散々受けたあと殺されていたことでしょう」



 まあその通りだろうな。ここに来る前に通ってきた場所もそんな感じだったし。



「そしてあなた様の強さ。私はあなた様の戦いを見て仕えるのは、いえ、契約を結ぶのはあなた様しかいないと感じました」



 契約ね。思いつくのは、よくあるような奴隷契約とかだが・・・。



「契約か」



「はい」



 そう答える彼女の目には強い意志を感じる。そしてどこか、契約できることを確信しているような雰囲気がある。



「それはなんの契約で、どんなものなんだ? 」



 すると、彼女の顔が何か未知の生物を見るような表情へと変わる。



「なんだ? 君の常識が万人に通じるとでも思っているのか? それは驕りというものだ。それに今の君の命運は私が握っているのだぞ。もう少し気を付けたほうがいいのではないか? 」



 短気かとも思われるかもしれないが、先ほどの表情にイラっとしてしまった俺は少し殺気を纏いながら問いかける。


 大人げないとか言わないで欲しい。人を馬鹿にするのは好きだけど馬鹿にされるのは嫌いな子供なんだよ俺は。



 すると彼女は不快感を漂わせる俺に気が付いたのか、顔を青くしながら弁明を始める。



「い、いえ。その、申し訳ございません。私も契約について知らないとおっしゃられる方にお会いするのは初めてでございまして。少し驚いてしまいました。不快に思われたのなら申し訳ございません」



「まあいい。それで契約のことについて教えてもらおう」



   ▽



「ふむ。なるほどな」



 説明が終わったので少し整理してみよう。


 まず契約について。これは俺が想像していたのと少し違っていた。俺が想像していたのはいわゆる奴隷契約というもの。物語では主人公が最初に助けるか、買うかしてハーレム第一号となるもの。正直なことを言うと、これだった場合は俺は断ろうと思っていた。だって、めんどくさいし、レベリングとかしなきゃならんし、俺にとっては邪魔にしかならない。


 しかし、今回の契約は主従契約ということには変わりがない。ではそういうことなのかというと、この世界には主従契約をすることで力が覚醒する者たちがいるらしい。そして、この者たちを覚醒するというところから覚醒者と呼ばれているらしい。まんまかよ。


 では全ての人がこの覚醒者と契約するかというとそうでもないらしい。まずは覚醒者がこの人だと認める必要があるらしい。また、覚醒者よりも強くなければならないという条件もあるのだとか。そしてこれが一番難しいとのことだった。

 この世界は冒険者という職業がある(なかったら泣く)。年齢制限はあるものの、誰でもなることができ身分証としても使うことができる。そして成功すれば貴族などにも負けない暮らしができることもあり、多くの若者が夢のために冒険者となる。だが、現実は甘くなく成功できるのはその中でも一握りらしい。これはどこの世界でも同じだな。

 冒険者という職業があるため戦闘が普通という世界において、覚醒者たちは卓越した戦闘能力を有している。普通の冒険者よりもはるかに強いために、冒険者の中でも契約者は非常に少ないらしい。ゆえに、契約者というのはそれだけで社会的地位が高くなる。

 これらのことから、人々は契約者となるために必死になるそうだ。しかし、どこの世界にも悪い奴がいるわけで、覚醒者とバレるとあの手この手で契約を迫る者たちも多いのだとか。



 なんにしても今の俺には何の伝手もなくどこに行けばいいか分からない状態だったからちょうどいいタイミングだった。これが世に聞くご都合主義というものなのか?

 契約することで目立つと言うのは仕方が無いが、聞けば実力主義らしいので何かあれば抵抗すればいい話だ。もちろん、こぶs・・・・・・古いな。

 聞けば今まではメイドとして働いていたらしく、家事から料理から大抵のことはできるらしい。こういう言葉で表現するのはどうかと思うが、非常に優良物件だと思う。



 ただ、俺に利益しかないんだよなぁ。この人にとってのうま味があまりないと思うのは俺の気のせいだろうか。

 よほど大事なことなのだろうか。必死な顔で俺を見る女性を俺は眺める。


少し前に言った通りこの女性非常に美しい容姿をしている。前の世界の女優やモデルたちも真っ青なスタイルと整った顔をしている。いかに覚醒者として強かろうが人数には勝てないし、権力にも勝つことはできないだろう。きっと今回のように狙われることもあったと思う。

今回俺は偶然から助けることにした。結果は成功して助けることはできたが、それは結果としてだ。この後俺が助けた人々に盗賊たちと同じことをしないとも限らない。特に目の前の女性はそれほどの魅力を持っている。



「君は俺がどのような人物か分かるまい。なぜそこまで信頼できる。君が覚醒者と知った今、俺は高値で取引等だってできるのだぞ? 」



「確かに私はあなた様のことは非常に強いということ以外は知りません。しかし私はメイドという職業柄、人を見抜く力は人並み以上にあると自負しております。」



「ずいぶんと抽象的な基準だな」



 俺が思っていた答えからずいぶんと離れていたので思わず苦笑してしまう。



「ふふ。これでも私はこの力のおかげで生き抜いてこられたのですよ? 」



 こちらの苦笑を見て少し緊張が解けたのか、幾分か表情をやわらかくしたその表情に不覚にもドキッとしてしまったのは内緒だ。



「ふむ。まあいいだろう。正直俺もこのままでは行く当ても土地勘もなかったのでな。これも運命というものだろう」



「で、でしたら! 」



 嬉しさによるものか、今まであった距離を一気に詰め寄りつつ聞いてくる女性にまたも苦笑しつつ、一番気になっていたことを聞く。



「ああ。契約の件は了承しよう。だがこれから主従関係になろうとしているのだ。お互い自己紹介くらいはやっておいても良いのではないか? 」



 俺の言葉を聞きハッとした表情をする女性。

 最初は大人の雰囲気で落ち着いた印象だったが、本当によく表情が変わる。



「も、申し訳ございません。自分のことばかり押し付けるような形になってしまいました」



「まあ、こんな状況だ。仕方がないだろう。さて、俺の名前はジンだ」



「申し遅れました。私はクラリアと申します」



「いい名だな。ではさっそくではあるが契約をするとしよう」



 この洞窟に入ってからどれくらい時間が経ったか分からない今、やることやってさっさと出て行くのが最良だ。



「分かりました。では契約の印として私の額にキスをお願いします」



 これは契約するときに必ず必要な手順らしい。額にキスぐらいで動揺するほど俺も子供ではないから、ためらいもなくクラリアの額にキスをする。


 突然の光が俺の視界を奪う。だが、その光も長くは続かずに収まりを見せる。


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