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盗賊団のボスとご対面?

 ただただ薄暗く長く続く道。ひんやりとした空気が俺の熱くなった思考を冷ましていくような気がした。



「見慣れた光景だと思ったんだがなぁ」



 先ほどの自分を思い出しつぶやく。



「これも異世界に来た時の変化ってやつかね」



 かつて友人が言っていた。異世界に行くとよく主人公の性格やらなにやらが変わるんだと。

 俺のさっきの行動はまさしくそれだ。それしかない。

 決して力を試したかったわけではない。断じてな!



「っと、ここか」



 目の前にあるのは洞窟の中にあるには不釣り合いなほど立派な扉だった。この扉を見ただけでここの盗賊たちの羽振りがいいことがわかる。

 俺からしたらこれだけ弱いのに羽振りがいいのは違和感があるが。



「さて・・・・・・行くか」



 意識を意図的に戦闘モードへと返る。先ほどは自分の精神をコントロールできていなかった。まだまだ俺にも甘さが残っているということだ。



「次はもう少し歯ごたえがあるといいんだが」



 そう言いながらドアを破壊する。すると見えてきたのは一人の女性を取り囲みながら酒を飲んでいる男ども。

 しかしながら酒を持つ手は止まっており、一様に呆けた顔をこちらに向けている。

 おおかた、突然の襲撃に対応できていないのだろうが・・・・・・。



「揃いも揃って間抜けな顔をしているな。さらには襲撃に対し何も対応できないなど、ここの盗賊の程度が知れるというものだな」



 こういう輩には開幕に煽ってしまえばこちらのペースに持ち込める。



「な、なんだと!? つーかてめぇどこから入ってきやがった! 」



 するとこちらの予想通りに幹部と思われるうちの一人が叫びだす。



「んん? どこから入ってきただと? そんなもの入り口からに決まっているだろう。やはり貴様らは馬鹿なのだな」



「て、てめぇ! 」



「よせ。それで兄ちゃんよぉ、入り口付近には俺の手下どもがいたはずなんだが」



 ボスが他の男どもを手で押さえつつ俺の前に出てくる。

 てっきり問答無用で襲い掛かってくると思ったんだが、これは意外と冷静だとみるべきか。



「ふむ、安心しろ。殺してはいない。殺しては・・・・・・な? 」



「っち! 使えねぇ奴らだなぁ。だが、あいつらも俺ら黒曜盗賊団だ。このまま舐められるわけにはいかねぇのよ。分かるよな? 兄ちゃん、今なら遅くはねえぜ。おとなしく地面に這いつくばりな。そしたら痛みもなくあの世に送ってやるぜぇ」



 ボスも周りの幹部たちもニヤニヤとした表情でこちらを見てくる。


 もう勝った気でいるのかこいつらは。俺はこいつらがここらへんでどれだけ強いのかは知らない。だがそれはここだけの話だ。俺には適用されない。



「貴様らに一つだけ言っておこう。いつまでも貴様らが王者だと思うなよ」



「なに言ってn、っつ!」



 突如ボスの周りが爆発する。爆発と共に突風が吹き荒れ、砂塵が舞う。


 舞っていた砂塵が収まったその先に残ったものとは果たして・・・・・・。



「お、おい。なんだよこれはよぉ! なんで! 俺らがてめぇに何したってんだよ! 」



 広がる景色はまさに地獄と言えるもの。足が吹き飛んだ者、腕が吹き飛んだ者、お腹に風穴ができた者。いずれにしてももう助からないと分かってしまうような光景に、盗賊のボスは叫びだす。



「ん? 確かに俺は貴様に何もされていない。むしろこの状況を見れば悪役は俺だな」



「だったらなんで、なんで! こんなことをする! 俺たちはてめぇに不利益は与えてないはずだ! 」



 確かにこいつの言う通りだ。これは言わば俺の八つ当たりでもあるわけだし。なんにしても・・・・・・パチン



「貴様は少し言葉遣いに気を付けたほうがいいんじゃないか? いささか目に余るぞ? 」



 ボスの近くに置いてあった酒瓶を爆発で吹き飛ばす。



「ヒィッ! す、すいやせん! 」



途端に腰の低くなる盗賊のボス。その変わり身の早さに少しイラっとくるがこの際だから仕方が無い。



「今から少し質問をする。少しでも嘘をついたと思ったら、指一本ずつ爆破していく。いいな? 」



「へ、へい! 」



 さてさて素直に答えてくれればいいんだが。



では・・・・・・・・・・・・尋問といこうか。





 まああれだけ脅した後に逆らうとは思わなかったが、比較的スムーズに終わった。


 話によると、こいつらは盗賊を初めて六年ほど経つらしく、近くにある王国からは懸賞金がかけられる位には有名だったらしい。

 やってることといえば近くを通る貴族を狙ったり、村などから女子供をさらっては売ったり犯したりなど、端的に言えばクズの所業だ。



 今回のターゲットは近くに住んでいる引退した貴族で、最初は金目的だったのだが、噂でそこに新しく入ってきたメイドがこの世とは思えない程美しいらしいというのを聞きつけ、そいつも奪おうということになったらしい。



「犯そうと思った矢先に俺が来たということか」



「へ、へい! そうなりやす」



 ひきつった笑い顔を張り付けへコへコするボスを見る。握られた手は未だに存在していた。こいつ、もう少し嘘でもつくかと思ったらなんでもすぐに答えるから約束通り爆破は無しにした。



「でだ、そこにいる女と別の部屋にいた女達は俺が預かるがいいよな? 」



 優しいお兄さんからのお願いだ。コツは近くにあるものを爆破しながら笑顔で聞くのがコツだぞ!



「ひぃぃ。も、もちろんでさぁ」



 俺の顔を見ながら盛大に後ずさるボス。そんなに俺の顔が怖かったのかな? 


 まあなんにしても



「貴様はよう済みだ」



 俺のつぶやきにボスは何のことを言っているのか理解したのか、一気に顔が白くなる。



「なっ! 全部ちゃんと答えたじゃねぇか! 」



「ああ、確かに貴様はしっかりと答えてくれた。だからこそ俺は貴様の指を飛ばさなかった。約束だからな」



 だが、お前たちは今まで何をした? 正直話を聞いている最中に何度も殺してやろうと思ったほどだ。



「俺は確かに約束した。質問の時のな。しかし、その後のことについて俺は何も言っていない。そうだろう? 」



 ボスは俺との会話を思い出しているのか少し考え込む。そして、みるみるうちに表情が崩れていく。



 俺は細かいことは分からない。だが、最初の部屋で起きていた惨状を見て、お前の話しを聞いた。お前たちは悪だと。お前たちからしたら俺のほうこそ悪だろう。いきなりやって来て破壊し尽くす。理不尽だろう。だがそれは、今までお前たちに襲われてきた人々にとっても同じだ。だから俺はその人々に変わりお前を裁こう。



「貴様は、貴様らは、名も知らない男に名も語れぬまま滅びる。そこに誇りや価値などない。あるのはただ死という言葉だけだ」



 ボスの目の前まで進み拳を握る。



「沈め」



 握られた拳が振り抜かれ、ボスの上半身がはじけ飛ぶ。



「ふぅ。終わったか」



 元の姿勢に戻り俺はボスに向かって合唱する。すまんな前の世界からの癖なんだ。



「で、君はどうしてそんな恰好をしてるのかな? 」



 俺が振り向いた先にいたのはまるで主人に仕えるもののように膝まづく、捕らえられていた女性だった。


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