アジトへと突入。俺の行動は?
茂みの前に来た俺は盗賊がやったように手を二回叩く。すると茂みが分かれ洞窟の入り口が開く。
「普通は見張りを置いとくものなんだがな」
おそらく今までここがバレたことがないんだろう。先ほどの盗賊の手慣れた様子と、この少しの油断。おそらくこの盗賊はある程度の規模を持っているんだと思う。だが、その大きさがゆえに末端まで教育ができていないからこうなっているのだと思う。
「だとしたら、盗賊の大部分は強くないだろう。問題は一番上とその側近あたりか」
組織というのは大きくなればなるほど制御が聞かなくなり、特に暴力からなる組織というのはそれが顕著に表れる。ボスが強ければなおのこと。
俺たちのボスは強いんだ。だから何をやっても大丈夫。そういう考えにたどり着くものが出てくる。だから、末端というのは大体が弱い。
「・・・・・・っと」
かすかに聞こえた音に歩く速度を落とし、息をひそめる。
耳に意識を集中しつつ音のするほうに少しずつ近づいていく。次第に大きくなる音に嫌な予感を感じつつも原因であろう部屋の前に行きついた。
「っち、クソどもが。胸糞が悪い」
聞こえてくるのは何かがぶつかり合う音と嬌声。何が行われているかすぐに分かる。
俺は込み上げてくる怒りを抑えつけながらも扉を開く。
開けた瞬間にまず匂いが俺に襲い掛かる。男と女の匂い。次に女の嬌声と嫌がり泣き叫ぶ声。そしてそれを聞きながら笑う男どもの声。
中にいる男たちの誰もが行為に集中しているのか俺に気が付かない。見れば女たちは体を拘束され逃げられない状態にされている。中には死んでなお犯されている人たちもいる。
ブチィィッッ
どこかが切れたかのような音が聞こえた気がした。
「俺の考えが甘かったのかもしれんな。貴様らなど生きている価値もない」
俺の口から無意識に出た言葉。それが近くにいた男に聞こえたのかこちらを見る。
「って、てめえはだrグボハァッ」
「貴様にしゃべる権利などない。誰が話していいと言った? 」
俺を見て叫ぼうとした男の声を遮り拳を突き出すと、男はそのまま吹っ飛んでいき壁にぶつかった後動かなくなった。
「お、おい! 敵襲だ! てめぇら準備しろ! 」
流石に騒ぎに気が付いたのか男たちは近くにあった武器を手に取り俺を囲み始める。
「てめぇなnガハァッッ」
「だから言っているだろう。しゃべる許可はしていないと」
口を開いた男に接近し殴り飛ばす。
「いいか。貴様らはこれから俺によって蹂躙される。貴様らには地獄を味わってもらう」
「なにw」
「だまれ」
そう呟くとともに俺の起こした行動は指を鳴らすということ。
起きた現象は・・・・・・。
ズドドドドドドドドドドドドンッッ
男たちの顔が爆発し、腕が爆発し足が爆発する。見ているだけでおぞましくなるような光景がそこには広がっていた。
「ギャアァァ! 」「イテェ、イテェよ」「死にたくねぇ」「だ、だずげでくれぇ」
まさに阿鼻叫喚。だが、こいつらのやってきたことはこれぐらいで償われるわけがない。
まあ、何をやってきたのかなんて俺は知らないが。
「おい」
男たちの中から比較的被害の少ない、意識のある奴に声をかける。
「っ! な、なんでしょうか」
「ここにいる奴の他にはどれだけの人数がどこにいる? 」
「それはっ」
「ん? なんだまだそんなに元気なら、もう一回喰らっとくか? 」
「ひぃっ! いえ! 残りは幹部連中とボスが奥にいるだけです! 」
「それだけか? 数が少ないように思えるが」
「う、うちの盗賊団はボスと幹部が、つ、強いんでこの人数だけでも大丈夫だったんです」
「そうか、だったら俺のやる仕事も少なくていい」
「そ、それで! あっしらはど、どうなるんで・・・? 」
俺はそんな問いかけをしてきた男を見て思わず笑ってしまう。それを見た男は何を勘違いしたのか安心した顔をする。
「何を勘違いしてるんだ? 」
表情を引き締めながら問いかける。
「・・・・・・へぇ?」
「はっはっは。貴様は何を勘違いしている? この期に及んで助かるとでも思ったのか? それは都合が良すぎるというものだ」
俺の言葉に男の表情が絶望に変わる。
「なっ! 何言ってやがんだ! 」
「んん? 貴様こそ何を言っているんだ? では聞くが、貴様らは泣く者たちを、拒む者達を見逃したことはあるのか? 」
「そ、それはっ」
「ないんだろう? だったらなぜ自分たちの時は助かると思っている? 」
ああ、せっかく怒りが収まってきたというのに・・・・・・
「そもそも、貴様らは盗賊だ。ならばこれまで人を数えきれないほど殺してきたんだろう
? 人を殺し、物を奪い、女を犯し生活している。そんな者たちがなぜ命乞いをする? 貴様らは舐めているのか? 貴様らが今まで狩る側だったように、今度は貴様らが狩られる側になったというだけだ」
「う、うるせぇ! ごちゃごちゃ言いやがって! そうだ俺たちは盗賊だ、今もこれからもなぁ! 」
男は怒りに身を任せたのか、一本しかない腕で剣を持ち突っ込んでくる。
「どこまでも愚かだな。接近戦なら勝てると思ったか? 」
振り下ろされた剣をかわし、カウンターの拳を男のお腹に突き刺す。
「貴様に綺麗な死に方は許さない。粉々に散れ」
ドパァァッッンン
爆ぜた男から目をそらし周りを見渡す。
「大方の男どもは死んだか。・・・・・・ん? 」
男たちの様子を見ていると、意識のある女たちが一か所に集まりこちらを見ていることに気が付く。
近づこうとすると、女たちの体か少し下がる。中には震えているものもいる。
「・・・・・・まあこれだけやったんだ、仕方が無いか」
話すだけでビクつく女たちをみて少し申し訳なさが込み上げてくる。俺はできるだけ刺激しないように集団から離れる。
「俺はこいつらを倒しに来ただけだ。あなたたちに危害を加えることはしない。これから俺は盗賊のボスのところに行ってくる。あなたたちはここから逃げるなりなんなりしてくれ」
言うことだけ言ってここから出て行くことに決めた俺は、扉に向かって歩き出す。これ以上ここにいても無駄に刺激するだけでいいことなんてないだろうから。
「あ、あの! ありがとうございました! 」
背中越しに聞こえてきた小さな声に思わず嬉しさが込み上げてくる。俺は彼女たちを助けることができたんだと。
だからこそ俺は行かなければならない。あの連れていかれた女性を助けるために。そして、盗賊をつぶすために。