異世界とテンプレ?
短めとなります。
「・・・・・・っと」
目が覚めると同時に光が目に差し込んできて少し眩しい。さっきまで目をつぶっていたせいか目を開くことはできないが、ここが森の中だと言うのは分かる。
「へぇ、ここが異世界の森か」
目が慣れてきて最初に飛び込んできた景色に思わず感嘆してしまう。
見た目としてはジ〇リ映画の世界と言えば分かるだろうか。ああいう世界観にあこがれていた身としては非常にうれしいものがある。
「本当にここに魔物がいるのか? 」
おじ様はここの森には強くはないが魔物が住んでいるようなことを言っていた。だが、今のところ生物が近くにいるような気配は感じない。
「もしかしたら森でなにかが起きている可能性もあるか」
だが、今何かが起きているとして俺がそこに行くことはただの自殺行為と言える。まずは自分の体の動きと貰った爆発能力について考えるべきか。
「ふっ」
俺は自分の体の感覚をつかむかのように動かしていく。子供のころから武道をやっていた俺としては体の動きをみることは日常になっていた。
「うーん。体の感覚が少し違うな。普段より動き過ぎてる気がする。」
体を動かしていると小さな違和感を感じる。本当に些細な違いだけれでも、その違いを馬鹿にしてはいけない。
「・・・・・・ふー」
まずは基本の動作から入り、徐々に動きを複雑かつ実践的なものに切り替えていく。
・・・シッ・・・・・・シュッ・・・・・・。
「ふぅ。こんなもんかな」
体の動きに満足した俺は少し息を吐きながら近くにある木に寄りかかる。
この後にやることは決めてある。むしろこれからが本番でるといえる。
「ついに爆発を使うことができるのか」
表現が少々馬鹿っぽく感じるかもしれないがそれは勘弁してほしい。誰しも自分の夢が叶う時がきたら子供らしくなるだろ?
俺は期待をしつつも能力の使いかたが分からないことに気が付く。
「そういえばやり方を聞いてなかった・・・・・・。ま、やってみればいいか」
木から離れ、一応少し開けた場所に出る。
やり方は分からないが、おじ様は思考を読んで俺の使い方は面白いと言ったことがヒントになると考えている。・・・・・・いや、もうそれが答えかもしれない。
「それが正解なら・・・・・・」
俺は基本の構えをとり、一度目を閉じ今まで考えてきたイメージをより鮮明にしていく。
「はあぁ!」
振り切った拳が空をきる。なんの変哲もない正拳突き。普通だったらそこで終わるこの攻撃が変化を見せる。
ズドドドン
音と共に目の前が爆発する。さらにその爆発が先にある木にまで届き中心から破壊する。
「はは、こりゃやってることは環境破壊だわな」
結果を見ながら思わず笑いが込み上げてくる。ほんとは笑い事ではないんだが。
「これで俺の想像通りのことができることが分かったな。後は・・・・・・」
ふと感じた違和感に顔を上げる。
「これは生き物の気配か? 」
ここに来た当初は感じなかった生き物の気配が突然増えてきたことに本能的に警戒レベルが上がる。
「たしかテンプレというやつだったか? 人が襲われていたりするかもしれないしな」
俺は異世界のテンプレというやつについて熱く語ってくれた友人の知識をもとに行動を起こすことに決めた。
▽
「本当にテンプレって存在してたんだな」
俺は目の前に広がる光景を見て思わずつぶやいてしまう。
これぞ盗賊といったような恰好をした男五人に囲まれるようにして一人の女性らしき人がいる。らしきと表現したのは、その姿が布によって隠されているからである。
「おいおい。これは穏やかじゃないな」
明らかに男たちは女性に対してよからぬことを考えている。体に必要以上に触っているのがその証拠だ。
だがあの中のリーダーらしき男がそれを注意しているので、ある程度のところで終わっている。
「この感じだと大したことがないのが救いだな」
男たちの足の運びや、注意の仕方にいい加減さが多くみられる。大体こういう奴らは強くないのが経験上から分かる。それに、異世界に来てから鋭くなったのか強さを感じ取ることができている。
「今片付けてもいいが、ここはこのまま様子を見てみるか」
ここで女性に危険が迫るならここでやってしまうのも手だが、盗賊がこれだけだとは思えないから拠点まで行って殲滅してしまうほうがいいと俺は思う。
「すまんな。もう少しだけ待ってくれ」
俺は捕まっている女性に小さく謝り、男たちの後ろを付いていく。