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プロローグ

作品内に

暴力・病気・奴隷・娼婦

などの描写を含みます


ひとによっては不快に感じることもあり得るかと思いますので

苦手な方、お嫌いな方は自衛にご協力下さいませ


 

 

 

「う、ううぅ~……」


 ヒトコは持ったカゴを見つめて、情けない唸り声を上げました。

 可愛らしい声、見窄らしい服、荒れた肌に、ひび割れた唇、骨と皮ばかりの身体と、汚れた藁束のようなざんばら頭。

 絵に書いたみたいに薄汚れた貧しい子ですが、瞳だけは大粒のペリドットのように美しく澄んでいました。


 けれどそんな宝石の瞳でどんなに見つめても、目の前のカゴの中身は金貨にも食べ物にも毛布にも変わらず、ただ安っぽいマッチが山のように入っているだけでした。


 諦めたようにカゴから目を離し、雑踏を眺めるも、クリスマスの夜を歩くひとびとは、道端の哀れな子供になんて目もくれず、幸福そうな顔で足早に歩き去ります。


「ううぅ……」


 もういちど唸って、ヒトコは悲しげに眉を歪めました。


「こんなの、無理だよ……」


 カサカサに乾いてひび割れて、もう血すらも乾いた唇から、愛らしい声で、そんな弱音がこぼれ落ちました。


 小さな声は誰に拾われることもなく闇に消え、星さえ見えない淀んだ空からは、追い打ちを掛けるかのごとく、真っ白な雪が降り始めます。

 降り出した雪に絶望を濃くして、ヒトコはまた泣き言を口にしました。


「マッチ売りの少女をハッピーエンドで終わらせろ、なんて、どうすれば良いのかわかんないよぅ……」


 弱々しい嘆きは雪に吸われ、また、誰にも拾われることなく消えました。

 

 

 

拙いお話をお読み頂きありがとうございました

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