4 朝起きたら、
――ムニムニムニッ
翌日、ベットの上でうつ伏せになって寝ている僕の頬に、2つのとても柔らかな弾力が返ってきた。
ああ、なんて素敵な枕だろう。
弾力満点のこの枕で、熟睡していたい。
――スリスリスリッ
というわけで、僕は柔らか枕に頬ずりをする。
「ああんっ、ううんっ」
するとなぜか、喘ぎ声が返ってきた。
「……おはよう、リゼ」
「もう起きられるのですか、シオン様?」
「うん」
柔らか枕だけど、リゼの胸だった。
とっても寝心地のいい、弾力ある胸だね。
――モミモミ
つい、手が自然に動いてしまう。
「シオン様、よろしければもう少し私の胸でお眠りください」
「もういいよ」
「もうっ、つれないですわね」
頬を膨らませて、上目遣いで僕を見てくるリゼ。
とっても妖艶な仕草だけど、10歳児にしか見えない背丈の幼女が、絶対に醸し出してはいけない艶がある。
もし生粋のロリコンがこんな姿を見たら、
「貴様、本物の幼女ではないな!この年増め!幼女とは12歳までの幼い女の子専用の呼び名。そんな年増染みた笑いが出来る貴様は、幼女ではない!」
なんて弾劾されるだろう。
ま、僕は幼女趣味ではないので、弾劾するつもりは一切ないけど。
「……絶、それとヤヌーシャもどいて」
腕枕ならぬ、胸枕をしているリゼだけど、それ以外にも僕の右腕を絶が枕にして、スヤスヤと寝息を立てている。
ヤヌーシャに至っては、僕の左足に抱きついて、抱き枕にしていた。
「ううっ、あと少し。10分だけ、15分、1時間だけこうさせてー」
「絶、時間が増えていってるよ」
「ムーッ」
スヤスヤモードで眠っているように見えて、ちゃんと僕の声に返してくる絶。
「ヤヌーシャも、いい加減僕の足から離れて」
「クンカクンカ」
「匂いを嗅ぐのもほどほどにね」
ふうっ。
起きたと思えば、(見た目だけ)幼女3人組が、朝から僕に張り付いてきていた。
なお、「お前ら別々の部屋で寝たんだろう!どうして同じベットで寝てるんだ!」って突っ込まれるかもしれない。
けどリゼは有言実行で、昨日の夜に僕の部屋にこっそり侵入してきていた。
絶とヤヌーシャも、ちゃんとその後に続いてたし。
それに僕は気づいていたけど、いつもの事だったので、そのまま起きずにベットで寝たままでいた。
「もう朝ですのね、残念」
「おはよう、皆ー」
「ポリポリポリ」
そしてボク以外の3人も、起きていく。
リゼは銀色の髪を櫛で梳いていく。
絶の黒髪は、あちこち寝癖になっている。
ヤヌーシャは相も変わらず、無表情にポッキーを取り出して噛り付いていた。
朝からチョコレート菓子を食べてると、虫歯になるぞ。
まあ、ヤヌーシャは虫歯になんてならないだろうけど。
「うわー、それにしても相変わらずベットの乱れ方が凄い」
そして僕たちが起きると、あとに残されたベットのシーツが凄いことになっている。
いや、別に夜中の間に僕ら4人で、ふしだらなことをしたわけじゃないよ。
ただ寝相が凄かったようで、シーツが揉みくちゃになっていて、凄いことになっていた。
「片づけを」
「畏まりました、リーゼロッテ様」
そんな中、いつの間にかリゼの傍にメイドさんが現れていた。
メイドさんはリゼに命令されるまま、あっという間に乱れていたシーツを整えていく。
このメイドさんだけど、秋葉原にあるメイド喫茶のメイドさんと違って、紺と白を主軸にした、本物のクラシックメイド服を着用しているメイドさんだ。
「身支度をお願い」
「はい、マザー」
さらにリゼの傍に、どこからともなくメイドさんが4人現れる。
そんなメイドさんたちが、櫛を取ってリゼの銀髪を梳いていき、さらに絶とヤヌーシャの2人も、メイドさんたちがそれぞれ世話をしていく。
「シオン様の御髪も梳かせていただきます」
「うん、よろしく」
突然現れたメイドさんたちだけど、それに驚く必要なんてない。
僕はメイドさんにされるがまま、髪を梳いてもらい、その後着替えも手伝ってもらった。
僕って魔界のプリンスなので、王子様らしく身の回りの世話をしてくれる人がいるんだ。
まあ、このメイドさんたちは見た目が人間なだけで、本物の人間じゃないけど。
「では、わたくしたちはこれで失礼いたします」
「ええ、ご苦労様」
僕たちの身支度を一通り済ますと、メイドさんたちは頭を下げてお暇する。
それまで人間の形をしていた輪郭がみるみる間に崩れて、半透明のゼリー状の物体になって地面へ崩れ落ちていく。
そして地面の上をはいずって、リゼの足へ触れる。
――ズズズッ
リゼの体の一部が透明なゼリー状になったかと思うと、そのままメイドさんだった物体が、リゼの体の中へ吸収、融合されていった。
リゼとメイドさんたちは見た目は人間の姿をしているけど、その正体はスライムだ。
スライムが人の形に擬態して、リゼとメイドさんの姿をしているだけだ。
リゼの体には、このメイドさんたちだけでなく、他にもたくさんの子供たちが同化して、住み着いていた。
リゼはそんな子供たちを状況に応じて体外に出し、世話をさせたり、戦いに活用したりしている。
僕は魔界のプリンス。
そんな僕の友達であるリゼが、人間であるはずがなかった。
そしてスライムと言っても、リゼは某国民的人気を博したRPGに出てくる、青くてつぶらな瞳をしたスライムとは全く違う。
姿形を自由自在に変化させることができ、TRPGに出てくる凶悪極まりないスライムに近い存在だった。
むしろ体内に無数の子供たちを抱え、姿形を自由自在に変えることが出来るリゼは、TRPGのスライム以上に、厄介な魔物だった。
何しろスライムはスライムでも、僕の世界では"魔王種"と呼ばれている、魔王クラスの力を持った魔物。それがリゼの正体だからだ。
――コンコン
「勇者様、起床のお時間です」
そんな一連の行動を終えた後、ドアをノックする音がした。
これは城で働いている、"本物の人間"のメイドさんの声だ。
「おはようございます」
僕たちを起こしに来たメイドさんに、僕はドアを開けて挨拶を返した。
もっとも部屋の中には僕だけでなく、リゼたち3人の姿もあったので、それを見てメイドさんが少し驚いた顔をしていた。
でも、何を驚いたんだろう?
ベットのシーツはとっくに直して、僕たちは着替えを済ませている。
何かやましい勘違いをされる光景ではないけどなー。
「勇者様たちは、もう身支度まで終えられていたのですか」
「ええ、そうですけど。それがどうかしましたか?」
「いえ、随分起きられるのが早いと思いまして」
とは、メイドさんの言い分。
早起きと言っても、別に僕たちにとっては普通だ。
僕は魔王と大天使の間に生まれたハーフ。
リゼはスライム。
絶とヤヌーシャも、人間ではない。
人間みたいに睡眠時間をそれほどとる必要がない。もしくは全く必要なかった。
なので夜遅くに寝ても、朝早く起きれるのは当然だった。
あとがき(その1)
作者『ヌオオォォォッッッ!鎮まれ、鎮まれ、嫉妬の炎よー!いくら自分が書いたキャラがリア充してるからって、それで妬み、恨み、つらみ、嫉妬の炎を宿すでないー!』
書いてる筆が、おかしな方向に行っちまうだろうがー!
ってなわけで、自分で書いたキャラのご乱交ぶりに、作者が嫉妬している有様です。
「なんなのあの子。マジでリア充ハーレムしやがって……う、羨ましくなんてないんだからねっ」
あとがき(その2)
ロリコンA「ロリコンは年齢一桁までの女の子のことだ。10歳過ぎたら、あとは全員ババアなんだよ!」
ロリコンB「お前、バカだろう!幼女ってのはな、小学校低学年までなんだよ。小学三年生になった時点で、残酷だが幼女の賞味期限が切れてくんだよ!」
ロリコンC「フッ、愚か者どもめ。幼女とは小学生未満の幼稚園までの女の子たちの事。見てみたまえ、あの穢れを知らない姿。俺たち大人と違って、幼女とは穢れなき純粋な存在なのだ」
シオン 「お巡りさーん、ここに犯罪者予備軍がいまーす」