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残月夜の誘惑  作者: 霧生神威
【一次接触・第一章 】~現実か夢か、それとも異世界か?~
12/30

【第十話】 隠された闇

✳︎サツキの衣装が軍服から和服に変化させました。プロローグから書き直してしまいました。


物語には影響ないので、脳内映像化は和服にしてもらえると嬉しいです!



「この違法ストーンを持っていたというわけか。」


「はい、そのようです。ローレン国とは別に、宗教組織【オメルタ】』の事も調べられた方がいいかもしれません。」



夜更けの王室で、今回の事件の詳細を説明するアルトロは怪訝な顔をし、イザエルへ報告を告げた。


アルトロから提出されたファイルを1ページずつ丁寧に読み終え、最後のページに書かれていた【死体について】の項目を指さし、イザエルは顔を上げる。



「この一人は、死体確認不能状態となっているが………どういうことだ?」


「記載内容の通りです。一人は両足を刃物か何かで切断され、身体図形の通り左耳は剥がれ落ちていました。おそらく引き千切られたと見ていいと思われます。ですが、着ている服などからローレン国の者だと思われます。もう一人は、頭部がなく、周辺に飛び散っていった肉片や眼球、脳の一部が発見されているため、その場で頭部をなんらかの形で破壊されたとみています。該者は、おそらく今回のターゲットとされていた男だと思われてはいますが、報告に上がっていたキューブなどは発見されていない状態です。」



後ろで手を組み、淡々と前だけを見て報告を告げるアルトロは、この残虐な現場を作った犯人に関する情報を、一切伏せていた。


もちろん嘘は記載していない。


元帥からの直々の命令とあって、アルトロも逆らえる立場にはおらず、その事に関する記載を全て省いた状態で、イザエルに書類を提出していた。当然のことだが、理由などは知らされておらず、ただ「この事は報告するな」と一言あっただけだ。



「分かった、もう下がっていいぞ。」



イザエルの言葉に、深く一礼をしてからアルトロは部屋を出た。アルトロ自身も何故伏せる必要があるのか、その理由さえもよく分かってはいなかったのだ。


イザエルは深くため息を漏らし、クラウスが言っていた言葉を思い返す。



【父上!! サツキは異常者だ! アイツらを殺したのはサツキだ! 何故そんな者を騎士に迎えれたりしたんです?! どうしてなんです?! 】



昨晩のクラウスは明らかに動揺していた。


だが、もしクラウスが真実を述べているなら、何故他の同行していた者達は「知らない」と口を(つぐ)むのか。


クラウスの様子から嘘を言っているとは思えない。ならば、そうしなければならない理由が何かあるということに他ならなかった。



「サツキという少年を守る訳か…………。大事だから守るというわけではあるまい?のぅ、元帥よ。」




********


事件から三日経った頃、城内が一際騒がしくなっていた。


現状何らかの形で【ファルス国の滅亡】に加担しているとみられている【ローレン国】から、一躍成功を収めたとされる【ラジータカジノ】の客人が、セムナターンに入国してくるとの知らせがあったからだ。


ローレン国といえば、セムナターン国の真上の位置に国を構えている賭博国家だ。

街中は、カラフルで鮮やかなネオンで彩られ、世界中から集まるセレブが惜しみなく大金を注ぎ入れているため、とても裕福な国の一つとされている。だが、実際は煌びやかな表舞台とは別に、治安が悪い場所としても有名だった。


人口もセムナターン国の1/10も住んでおらず、主に観光地区として成り立っている国だといえた。

その中でもラジータカジノのメンバーは、ファルス国王のデニスと非常に折り合いが悪かった事が知られている。ここ数年で、異常な大金を手にしている事に違和感を覚え、デニスは独自に調査を進めている旨をイザエルに告げていた。


その矢先に、デニスが死んでしまったのだ。


イザエルがラジータカジノのメンバーを警戒するのは、当然といえば当然の出来事だった。


厳重な警備体制の中、表向きは観光目的として入国してくるメンバーの到着を騎士はもちろん、兵士までも緊張した面持ちで、全身鋼鉄に輝く鎧に身を包んで待ち構えていた。



「………凄い、そんなに偉い人が観光に来るんだね。」


「ユキも警戒態勢が街中に引かれている間は、あまり出歩かないようにね。」



クラウスが危惧し、忠告の意味も兼ねてユキに告げるが、当の本人は理解しているのか、覚束ない様子に見える。



「本当に街へ出かけたりしたらダメだからね?」



ここ数日、ユキは輪をかけてご機嫌だ。

理由は不明だが、クラウスはあの少年がユキに関わってない事を心から願っていた。


いくら騎士は別塔で生活していると言っても、所詮は同じ土地の上。

いつユキと出くわすか、分かったものではない。


クラウスは、ユキと少年が出会ってしまう事に恐れを抱いていた。少年と関わることで、残酷な世界へとユキを引きずり込むのではないか、という懸念が強かったからだ。



「あ!! クラウスちょっと待ってて!!」


「え?ユキ?」



ほら、少しでも目を離してしまうと、すぐにどこかへ行ってしまう。



「こんにちは!!」



ユキが駆け寄って行った先にいた相手に、クラウスの表情はみるみる固まっていく。



「あぁ!!あの時の………」



ユキの目の前にいたのは、あの残酷な夜の出来事を共に経験したイツカとシルヴィーの姿だった。何故ユキと知り合いなのか、どうやって出会ったのか、疑問が一気にクラウスの頭の中を駆け回った。



「絶対また会えるって思ってました! 問題は解決しましたか?」


「あぁ………うん。まぁ、解決したかな」



イツカは、意味深な目で見てくるシルヴィーの視線を払いのけるように、ユキと向かい合うと、その後ろにクラウスの姿があることに気付く。


イツカが突っ込んで聞こうとする前に口を開いたのは、シルヴィーの方だった。



「おやおやおやぁ~~?後ろにいるのはクラウス様じゃないですか?!」



シルヴィーの声に、クラウスの背中には一気に電流が流れたような緊張が走る。



「やぁ………シルヴィーさん………」


「あれ、クラウス知り合いなの?」



ユキの質問に、嘘の笑顔を貼り付けて「ちょっとね」と流すクラウスに合わせ、イツカも避けるように次の話題を振る。



「そんなことより、クラウス様の事を呼び捨てるなんて、あなた何者なの?」



ふとした疑問に答えたのはユキ本人ではなく、何故か再びシルヴィーだった。



「サツキに熱視線を送ってた子だよねぇ~~?」


「ん?サツキに? あなた、サツキと知り合いなの?」



クラウスは動揺を隠せないでいた。

その様子にいち早く気づいたシルヴィーは、ニヤリと口角を上げ、質問を重ねる。



「違うのかなぁ~?サツキをじーーっと見ていた事があるよね?ワタシずっと気になってたんだよねぇ~、あの時のアナタ、嬉しそうな悲しそうな、不思議な表情をしてた。ねぇ、サツキとどんな関係なの?まさか、ラァ~~~~ブな関係じゃないよねぇ~~~~?」



言葉の意味が分からないユキは、ただ首を傾げ、返答に迷っていた。



「あ!サツキをこの場に連れてくれば、分かるんじゃなぁ~~~い?キューブで呼んじゃおっかなぁ〜」



愉しそうにユキを見つめ、ニヤニヤと笑うシルヴィーの視界に割って入るように、クラウスがユキを守る形で視線を遮断する。



「ユキは、サツキなんか知らないから。もういいだろう!!」


「本当かなぁ~?確かに見てたんだけどなぁ~~、この子ぉ~~! それとも何かなぁ~?サツキを知ってたら困る事情でもあるんですかねぇ~~?」


「そ、そんなものはないから!!!!」



クラウスは、これ以上ここにユキを居させてはならないと直観的に感じ、力強くユキの腕を握りしめ、強引にその場から立ち去ろうとする。


激しく取り乱したクラウスの様子にユキは何かを感じたのか、その行為に逆らうことなくイツカ達へ軽く一礼しながら、その場からクラウス共に姿を消した。





*********


一方その頃サツキはというと_____。



「ねぇ、ねぇ、キミがサツキ君かっな?」



銀色に輝く長い髪を風に揺らし、見るからに妖しげな一人の男に話しかけられていた。

王城を出た後すぐに囚われるように腕を掴まれ、入口から遠く離れた路地へと連れて来られたのだ。



「………あんた、誰?」


「噂通り、ツンケンさんなんやねぇ~! お兄さんね、君にすこぉ~し聞きたいことあるんやけど、ええかなぁ~?」



一本の線を引いたように細めた目でニコやかに笑う男は、まるでピエロのように奇態な雰囲気を醸し出し、様子を窺うように少し腰を折ってから、強引にサツキの顔を引き寄せる。



「ほんま可愛い顔しとんやねぇ♡ お兄さん惚れてまいそうやわぁ〜、 ちゅっちゅ~〜 」



サツキは不可解な言動と、他愛もないセリフを並べる男に軽く舌打ち、掴まれている顎の手を払いのける。



「そう怒らんといてって! あんまり引き留めるとサツキ君本気でキレちゃいそうやから、本題ね!! コレなぁーんだ?」



目の前に出されたのは、なんの変哲もない透明な立体正方形の箱である通称『キューブ』と呼ばれるものだった。



「このキューブメモリなんやけどぉ~、何が入ってると思う~~?多分君のすっきなメモリやと思うんやけどなぁ~?」



勿体ぶる口調にサツキは再び舌打ちをし、きつく睨みつけた。



「分かった、分かった、このメモリなんやけど、手に入れたのは君が先日グチャグチャに脳みそ潰したあのペテン師のコートの中から手に入れたもんなんやけどねぇ~」


「……あんた、回収屋が来る前に、あそこにいたのか?」


「んにゃ、ちゃうよ?君がオメルタの男を追い詰めた時からおったんよぉ~?」



男の言葉に、サツキは空を切り裂くように体内の魔力を放出させる。淡く揺れる青い炎のような揺らめきを身に纏うサツキの髪は、魔力磁器によりふわりと浮き、その瞳もまた血色へと変化し、鋭く男を射抜く。



「ちょ、落ち着いてな? キミと喧嘩したらお兄さん死んじゃうから!! ね?! 別にバラしたりせーへんし、邪魔したりもせーへんよ? キミに協力したいと思てんのよ。」


「あ?」


「いあいあいあいあ、だから怒るのまずやめて、な? キミに何かしてもらおうと思ってない。一方的に情報を提供したいねん。それで君の動向をストーカーのように見つめたい。これだけやねん。」


「………必要ない。お前の情報に信用性はないし、価値もない。」


「そうやろかぁ? なら、ひとまずこのメモリあげるから中見てみ? あんたの探している男もそこにおんで? ファルス国にはおらんかったんやろ?そいつ。ええ情報になると思うねんけど。」


「……………あんた、まじ気持ち悪いね。」


「ひどいなぁ~、お兄さんはねぇ~、キミの~た・だ・のファンなんよぉ~。もし聞きたいことあったら、呼んでな?ジルちゃん、来てって!」



男は名刺をサツキに手渡すと、陽気に投げキスを繰り返しながら、路地裏へと曲がって行った。



「…………情報屋ねぇー。」








最後までご拝読頂きありがとうございましたぁm(_ _)m


前書きにも書きましたが、サツキの衣装が軍服から和服にしたくて、衣装をプロローグから着物に書き直しました。


特に物語には影響ないので、和服で映像化してもらえれば嬉しいですm(_ _)m

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