あなたは?
なんの問題もないはずだった。森に行って薬草を採るだけ。
そう思っていたのに‥‥
今日の朝、お母さんが倒れた。それは、人間の間ではかなりの重病らしいけど私達エルフにとってはそんなに大変なことではなかった。
だって庭みたいに知り尽くした安全な森で自生する薬草を採ってお薬にするだけ。
15になった私は大人達の警護を断り一人で行くことにした。私だってもう大人だもん。
でもそれが間違いだった。
普段立ち入るはずのない人間がいて、それが盗賊でましてや見つかってしまうなんて…
そして、追い詰められた自分。
目の前の盗賊がいやらしい笑みを浮かべながら手を伸ばしてくる。
もう駄目かと思ったときあの人が現れた。
容赦なく盗賊達を殺していくあの人をもしかしたら怖いと思う人もいるかもしれない。でも私はそうは思えないし思わない。
フレアを受けた時は正直にいうと駄目かと思った。
でも直ぐに思い直した。あの人の瞳の輝きが見えたから。綺麗な赤と蒼。
そして、あの人は盗賊を全員倒した。
またあの人は死体を見つめて固まってしまっている。火傷はあるものの命に関わる程ではない。
蒼色の瞳は赤に戻っていた。
でもすごく悲しそう。不謹慎ながらその瞳すらとても綺麗で私を魅了する。
ずっと見つめているとあの人はゆっくりとした動作で落ちた短剣を持ち上げる。
そして、それを自分の首にあてて‥‥え?嘘!?
「ま、待って!」
「ッ!?」
私は慌てて制止の声を上げた。
そのかいあって自殺?自傷を止めることができた。
しかし、代わりに短剣は私の首もとに‥‥
でも不思議と恐怖はない‥‥
「お前もか?」
鋭い眼光と放たれた言葉。
悲しさを奥の奥に隠した精一杯の強がり。こんなの怖がれるはずがない。ほっておけるはずがない。
だから。だからね、私はこう言うんだ
「ううん。あなたの味方だよ。」
その言葉は何かに触れたらしくあなたは涙をこぼしだした。
私はそんな泣き顔を抱えるように胸に抱く。こんな時もっと大きければ女として格好がつくのにとか考えてしまう。何がとは言わないけど。
抱き続けることどれくらい経っただろう‥‥あなたは泣き疲れて寝息をたてている。そんな寝顔を私はずっと見ていた。目を瞑っているからあの綺麗な瞳が見えなくて残念ですが子猫のように愛らしい寝顔なのでよしとします。
それと暫く抱いて何となく分かったのですがどうやらあなたは男の子です。まあ、だからといって可愛いには違いありませんので気にしませんが。
村まで戻って治療してあげないととか考えていると、どうやら目を覚ましたようです。
‥‥‥‥ん?様子が?
口をパクパクとさせ顔が赤くなって目が泳いでいる。
口からは「あの」とか「その」とかしか出ていない。
ここはお姉さん(見た目からの自称)がリードしなくては。
「おはようございます。」
「お、おはょぅ‥‥ござい‥ます。」
可愛いなあもう!
名前はミノカ。年齢不明。性別男の転生者。村までの道中で色々と訊かせてもらいました。転生者と聞いて驚きはしましたが、もうこの世界には実はそれなりにいたりする。人間の街一つにつき一人や二人ぐらいの頻度で。
しかし、その中でもミノカ程の戦闘能力を持った転生者は珍しい。ただ転生によるスキル追加というよりも過去に何かあったと考えられる。
訊くのは‥‥
チラリとミノカの方を見ると向こうもこちらを見る。「何ですか?」と首を傾げながら、にへらっと笑う。
‥‥訊けないよねえ。