外出先が地響き激しかったのでつい様子を見に行ってしまいました―震源地はお隣さん家―
領主館に着くと顔馴染みのメイドさんに出迎えられ、そのまま館内の一室に案内された。
「お久しゅうございます、先生。」
「おや、リーシェ。元気にしていたかね?」
「ええ、先生もお元気のようで何よりです。」
小さな頃から弟子として教えを受け、先生と呼び慕っている前フィナン侯爵夫人に挨拶する。
先生、館の西棟が切り取ったように無かったですけど、どうしたらあんな綺麗に破壊できるんですか?
一応アグレッシブなやり取りしてた場合に備えて、ロディアスを昏倒させて被害を抑える用意はしてきた。しかし、その出番は無かったようだ…
「仕事だったのに駆けつけてくれたんだってね。」
「いえ、大した事ではありませんでしたから。…それよりまた先生、ロディアス殿を題材にしたお話をお書きになったんですか?」
実名を使わず、ジョンとかゴンザレスといった名前にしたり、髪型とかも変えて『実際の人物にはいっさい関係ありません』とか一筆書いておくような配慮はしてるらしいが、思春期真っ盛りのロディアスは見る人が見ればモデルが誰か分かってしまうのを気にして、よく先生に喧嘩を売っては返り討ちにされてる。
「ああ。新刊はロディアスとリーシェの弟の悲恋物だよ、久々に良い物が出来たよ。」
そう言ってにっこり笑う、実の孫と近所の子(両方男)の恋愛話を生産し、孫からの抗議(時折物理的手段含む)を文字通り力業でへし折る先生…。
実はお隣同士なのにうちの領とフィナン領があんまり仲良くないんだが、その原因こそが先生の作品といわれている。その昔うちの父と現フィナン侯爵のBL小説が社会現象になるくらいヒットしたかららしい…先生の最長連載作品なんだと。そりゃお互い気まず過ぎるだろうな、直接先生を知ってる分凄く信憑性がある話だ。
「まあ、左様でございますか。」
実の弟を題材にしたBLに興味はないので、深くは突っ込まない。談笑して乗り切ることにする。
先生の話、9割はロディアス絡みのカップリング関係だった…疲れた。あ、前方からロディアスが歩いて来てるな、一応兄弟弟子だから挨拶しないとね。
「ごきげんよう、ロディアス。」
「ティアリーシェ。」
「お久しぶりですね、お加減はいかがですか?」
今日も先生に喧嘩売ったみたいだけどどうよ?
「…相変わらずだ。」
今日も負けた、と。祖母である先生は喜々として自分をネタにBL書くわ、先生の作品の読者様に腐った視線を向けられることもあるわグレても可笑しくない状況なのによく頑張ってるな、と感心するばかりだ。
「ロディアス、先生はああいう方ですから、ある程度は割り切った方が精神的には良いですよ?気分転換でもしては?」
「…ああ、有難う。」
心此処に在らず、といった風情で返された。割と落ち込んでるかもしれない。
「ストレスは溜め込まないのが一番ですから、誰かに話して楽になるなら愚痴をこぼすのも一つの手ですよ?」
私でよければ同門のよしみで聞きますよ、と付け加えると、
「…すまない、では愚痴を聞いてもらえるか?」
早速愚痴るんすかそうですか。
◇◆◇
先生と同じく、語り出したら止まらない所に血の繋がりを感じる。何だろうね…1日に二回もマシンガントークに付き合うことになるとは思わなかったので、切実にお家に帰りたくなってきた。
自分のBL小説書くばあちゃんにいちいち喰ってかかったら身が持たないから程々にいなしとけよー、とアドバイスするのに回りくどい言い方しないといけないから貴族社会って大変だ。舌噛みそうになった。




