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親愛なる兄弟子殿―お母さんと呼びたくなる貴方はガチムチ―

あー尻痛い、馬は尻が痛くなるのが難点だわ。

私は今、ロット領の冒険者ギルドに来ている。薬草等の採取から魔物退治まで幅広く扱う便利屋さん組合みたいなものだ、商人とかも定期的に立ち寄るので情報や必要な物を手に入れるのに適している。

うちの領のギルド、観光組合の本部に併設してるんで一見観光案内所ぐらいにしか見えないんだよね…。初めて来た冒険者は思わず道行く人に尋ねて確認するらしいし。

観光事業に関する依頼をよく持ち込ませてもらっているのでこれからもよろしくしてもらいたいお隣さんだ。

今日はギルド長とビジネスランチすることになっている。組合特製の焼き菓子詰め合わせも持参したので割とスムーズに話は纏まるだろう、あの人食い道楽だから。


「おお、お嬢じゃないか。元気だったか?」

「はい?どちら様ですか?」

入ったら無精髭の男性に声かけられたんだが、私と貴方知り合いだったっけ?

「おいおい、俺のこと忘れちまったのか?カクタスだよカクタス。フィナンで一緒に習ってた…」

「ああっ、カクさんでしたかっ!髭があったので解りませんでしたよ。見ての通り元気でやってますよ〜。」

カクさんことカクタスさんは同じ先生に武術の教えを受けた兄弟子にあたる人だ、5人兄弟の一番上だとかで面倒見がよく稽古の合間にお菓子をくれたり面倒見が良い人だった。私にとっては2人目のお母さん的な存在だ、体格はガチムチだからお父さんでも良いかもしれない。

数年前、遠方の実家を継ぐ為だとかで帰郷していったきりだったがまた弟子入りしに来たんだろうか?

「それは何よりだ、もう3、4年くらいになるか?確か、修行が終わったら実家の方を手伝うと言ってたな。ちゃんとやれてるか?」

「ええ、ぼちぼちです。」

最近はお父様からの課題と、観光組合の経理と書類の判子押しぐらいしかしてないけどなっ!

「そういやアゼル様にも久しく会ってねえなぁ…あー…そういやお嬢は苦手だったな。すまん。」

つい顔をしかめてたらしく、カクさんはそう言いながら頭をポンポンと叩いてくる。私は件のアゼル様が苦手なのだ、嫌いじゃないけど積極的に関わりたくない。

「すみません…。」

カクさんに謝ったら髪をわしゃわしゃされてしまった、後で整えねばならない。

「まあ、お嬢が元気そうで良かった。大丈夫だと思うが一人で出歩くなよ、色々物騒なんだから。」

「はい、気をつけます。」

「おお、じゃあな。」

カクさんはそう言うとギルドから去っていった。

そういえば、カクさんはどんな目的でギルドに来たんだろう?ロットのギルドは観光事業或いは農業に関する依頼が凡そ半分を占めているので仕事を探すにも情報を仕入れるにも分野が偏ってるんだが…。

…まさか、レグラントと同じくご当地ヒーローに目覚めちゃったとか?

そんな訳ない、ない、はず……どうしよう心配になってきてしまった。レグラント以外にもご当地ヒーローに目覚めた奴らがいるから可能性を否定できない自分がいる。

後で地場産業以外の 依頼や情報をチェックしよう、事の次第によっては残念男子が増える覚悟をしなくてはならない。うぅ、憂鬱だ。


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