美少女顔の弟よテロリストになりたまうかことなかれ
ゲームでレグラント=ロットというキャラクターは柔らかいミルクティー色の髪澄んだ琥珀の瞳の、一見美少女と見紛ってしまう美形で誠実と穏やかさが特徴な貴公子だ。
しかし価値観の違いから父親と折り合いが悪く愛情に飢えており、選択間違えたらヤンデレたりする。最終的にテロリストに転職し、主人公以外の人間を虐殺してゲームの舞台である都市を壊滅させたり、実家のロット領を革ジャン着たモヒカンとかゾンビが似合いそうなレベルに荒廃させたり、反逆罪で一族郎党処刑フラグを建設しやがることもある。
普通そんな奴が弟だったら「迷惑になる前に危険思想を実行させないよう躾るしかない」という考えに至り、行動に移しても可笑しくはないと思うのだが……どうしてこうなったのか?
誠に遺憾だ。
◇◆◇
『鼻からクルトン喰わせてやろうか?』
『ま、待て!固いクルトンを鼻に突っ込もうとするな!』
『おめーが食べ物を粗末に扱う限り、クルトンの化身であるこの俺が粗末に扱ってやるよ?よく味わいやがれ!クルトーンショット!!!』
『ぐわぁぁぁ』
◇◆◇
いきなりだが、ヒーローショーの真っ最中だ。敵に鼻からクルトン喰わせてる、クルトンの被り物したガンマン風のヒーローやってんのが弟だ。
ええ、テロリスト候補生な弟ですとも。何か色々間違って今に至ってる。元々弟がグレて転職した程度でぐらつかないようにしたいという思いから、町起こし的な効果を狙ってご当地ヒーローとか作ってぼそぼそ活動してたんだが気づけば領地の名物になっていた。
父に許可を貰うために何度も企画書を作り直したり、色々掛け合って集会所借りてやってたのが昨日のことのよう…
今やうちの領はご当地キャラの聖地扱いで、名産である小麦の消費と観光客数がここ数年で鰻登りに上がっている。何で弟がクルトンの化身をやってるかというと、元々ヒーロー的存在に憧れてたんだそうだ。そこに私が被り物ヒーローという燃料を投げいれたら自然発火したまま燃え続けている模様。
◇◆◇
『よい子のみんなー、食べ物を大事にする心を持って好き嫌いなくしっかり食べてくれよ?ポタージュやサラダからみんなを見守っているからなー』
『今日は有難う、クルクルトン。それじゃあみんなー、最後にクルクルトンにありがとうを言いましょう!せーの、』
『『『ありがとー!!!』』』
◇◆◇
「姉様っ!」
ノリノリで舞台を終えた弟…いやクルクルトンが駆け寄って来やがった。
「スープの中に帰りなさい。」
思わず出た言葉にそんなぁ、とかいいながらクルクルトンはしょんぼりしている。
「せめて、クルトンの被り物は外してからいらっしゃいな。」
そのままだと怪しいクルトンっぽい被り物の変質者にしか見えない。
「はいっ、姉様!姉弟の語らいに被り物は無粋ですものね!」
別に姉弟の会話でなくても日常的にクルトンの被り物はしないと思う。
当たり前だがゲームの中で女子に持て囃されていたイケメンの面影はない。
公爵家子息で美形、性格も良しという好物件なのに、嬉しそうにスーツアクターしてる弟を見ていると、テロに走る危険思想を持つ以前に女の子が近寄りがたい残念男子に進化させてしまった感が否めない……。しかもクルクルトン役は他にもいるんだが皆レグラントみたいな奴ばっかだ。
まあ、テロリストになる過程で「この国をなんとかしなくては自分を含め皆幸せになれない、その足掛かりとしてまず身近な権力者から殺すべきだ」と危険思想に走る豆腐のようなメンタルの脆さは感じられないので少しは安心だ。
例え残念過ぎて女子にモテなくてもテロリストフラグは回避出来た、そういうことにしておこう。
残念男子を量産してしまった気がするが きっと気のせいだ、多分。




