異世界転生ってこういう事例もあるのか…いいやレアな事例とみた
『ウィーティの大祭』というゲームがある。
RPG系を多く売り出している大手ゲーム会社が、女性向け恋愛ゲーム所謂乙女ゲーを売り出している会社の有名なプロデューサーを引き抜いて作り上げた恋愛RPGだ。
今までにない新しいRPG―冒険と恋愛と複雑に絡んだ人間関係が織りなす貴方だけの異世界生活―が売り文句で、私を含む一部のゲーマーは大きな期待を寄せたものだ。
内容はぶっ飛んだものだったが…
ゲームでは主人公は軍に入り、クエストをこなしレベルやスキル技術を上げていき、成長していく育成RPGにありがちな内容だ。最初攻略キャラと仲良くなっても友人止まりだが、特定イベントを成功させることで恋愛出来るようになる。
しかし、前情報無しで挑むと大体死人が出まくる鬱展開になる初見泣かせな仕様になっている。
今までパーティーに入れてた仲の良いキャラがガンガンお亡くなりになり、戦力的に詰むこともあるし、特定のキャラを死亡させないと攻略出来ない攻略対象もいるので、良心の呵責や戦力低下の不安を抱えながら恋愛するプレイヤーが多数発生した。実は力業で解決できるイベントが多いのだが、力業に持ち込むまでが大変だ。
レベルだけではなく、スキルを上げまくり死亡フラグをべし折れるだけの圧倒的な技量を持たないと力業解決は出来ない仕様になっている。
主人公は日本のごく一般的な高校生という設定だったので、基本的に仲間の力を借り、数十時間かけて鍛え上げることになる。
一部の特殊嗜好な方々には大変好評だったが、鬱展開の表現にCERO:D(年齢制限18歳以上)が付き、「恋愛しなきゃ一応RPG、恋愛すると大体ホラーか昼ドラ」、「レベルとスキル上げまくれば大体解決できるヌルゲー但し上げるまでが鬼畜ゲー」といわれるようになった。
私も遊んでたが、キャラごとの攻略条件が難し過ぎて全部コンプリートは出来なかった。
攻略本も出版されず、詰んではネットの攻略情報を頼りにしていた。はっきり言ってクソゲーの類だろうが、一度始めたら出来る所はコンプリートする主義だったのでレベルとスキルだけは頑張って上げた。私も特殊嗜好だったという訳だ。
だが、そんな特殊嗜好の持ち主でも裸足で逃げ出したくなる事態に陥っている。
説明するにはまず、私について語らなければいけない。
私はティアリーシェ=ミーメ=ロット。前世は日本でOLをしていた。
会社帰りに信号待ちしてたら車が突っ込んで来たところで記憶が途切れてるので、多分死んでこの世界に生まれ変わったと思われる。
5歳の時、前世の記憶が戻った。買ってもらったばかりの絵本を読もうとページを開いたら内容に既視感を覚えた、その事を不思議に思いつつもその日はそのまま休んだ。起きたらするっと前世の記憶が蘇っていた。
この世界が前世遊んでいたゲームの世界で、キャラとして登場する弟が将来テロリストに転職してお家滅亡フラグが立ったり、イベントで死傷者が出る可能性がある、と知っても知らなくも嫌な知識ばかり浮かんできてひとしきりパニクった。
地味にショックだったのが、私という存在はゲーム中に弟に「家族とは折り合いが悪い」と表現される程度の、名前出しも登場もなかった人物、モブなポジションにいるということだ。
私の容姿は人混みに紛れると見つからないレベルで、美人で有名な母親に似た一見美少女にしか見えないテロリスト候補生の弟と比較しても天と地程差がある。地味顔な父に似たらしいが、母の遺伝子はどこに消えたのか、ライトノベルとかでよくある「生まれ変わったら美人」の設定にちょこっと憧れてた自分がやるせない。
とりあえず、弟をテロリストに転職させたら自動的に領地荒廃、そして反逆罪によるお取り潰し+処刑フラグが成立するのでそれだけは避けようと頑張ってきたけど…どうしてこうなったんだろう…。