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不老不死クラブ

作者: 前田剛力

予定の議題はすべて終わって、あとは新人紹介を残すのみになった。

指名され席を立った若者は深々と頭を下げてから話し始めた。

「まず、お礼を言わせて下さい。私を捜し出して下さって本当に有り難うございます。人と違うというのは恐ろしいことですね。同窓会で『お前はちっともかわらないな』と羨ましがられているうちはいつまでも若く見えることを喜んでいましたが、いつしか廻りの人間から変な奴と思われ始めました。

それで老化しないことを悟られないように何度も職を変えました。自分が歳を取らない特別な体質かもしれないということに気付いてから、ずっと怯えていました。家族にも打ち明けられませんでした。

もし人にこのことを知られたら、怪物として殺されたり、人体実験されるのではないか、などと一人で悩みました。自分の身に起こったことの意味が分からなかったのです。この先、どう生きていけばいいのか、不安でたまりませんでした。でも、」

二十歳そこそこに見えるその男は周りに座っている年齢、性別さまざまな出席者達に向かって急に輝くような笑みを見せながら言った。

「あなた方に見つけられ、仲間だと知らされて初めて、年をとらないことを喜べるようになりました」

それに対してリーダー格の四十歳位の男がうなずきながら答えた。

「初めて自分が不老不死かもしれないと感じた時は誰も同じように怯える。そして普通の人間たちに怪物扱いされ、妬みの的になるのでは、もしくは誰にも自分の正体を明かせず一人で永遠に生きていかねばならないのではという恐怖に囚われる。

しかしこれは誰にでも起こりうる、天から降ってきた幸運なのだ。普通の人間がある時、突然何の前触れもなく、その時点から老いることなく、不死の身体になる。我々の長い研究にも係わらず、不老不死人を生む特定の遺伝子もそれ以外の後天的要因も見つけられていない。

我々は病気になることはあっても必ず回復する。事故で身体が回復不能のダメージを受けない限り、永遠に生き続けるのだ。我々は遠い昔にこのクラブを作り、新しく生まれる仲間を見つけ、不死人として生きるすべを教えながら、秘密に生き続けている。

秘密にといっても決して世捨て人のような生活ではない。永遠の時間を持つ我々は望むままの富豪にもなれるし、芸術でも学問でも望みのままに極めることが可能だ。実際のところ、我らの多くはその両方を成し遂げている。

もう大丈夫、あなたはこれから我々不老不死人の仲間として安全に暮らしていける。一般人たちに怯えることなく、煩わされることなく、永遠の生命が楽しめる。我々は神に祝福された者だ。ようこそ、我らが不老不死クラブへ」

 しかし、リーダーの言葉が終わるか終わらないかのうちに、不満の声があがった。

「全く、いいよな。あんたは。その若々しい身体で不老不死になれるとは。それに比べて俺はなんて不幸なんだ。この歳で、老いぼれたこの身体で永遠に生きていかねばならないなんて」

その部屋の中で一番、年長に見える男が不平不満の口火を切った。その男は百歳を越えているように見えた。老衰した不老不死人とは。

「あんたはまだましだよ。少なくとも一度は青春を謳歌し、恋を楽しみ、結婚も出来たんだから」

隣の子供が甲高い声で、駄々をこねるように反論した。

「僕は五歳で不老不死になってしまったんだよ。あれから何十年たったのだろうか。この情けなさ。永久に生きながら、本当の恋も結婚も知らないんだよ。あんたは青春の楽しみの記憶が残っているだけでもいいじゃあないか」

 幼稚園にも上がっていない不老不死人がいるなんて。新人は目を白黒させたが、リーダーはまたかと言う顔をして好きなように喋らせていた。

「確かにそうかもしれない。しかし身体はあちこち痛いところだらけ、動きは鈍いし、始終病気に苦しんで情けないったらありゃしない」

年取った不死人の不満も真剣だ。


不老不死になることは夢のような幸運だが、自分が何歳で不老不死になるかで後の人生に大きな違いがでてくると言うことを新人は初めて悟ったのだ。

永遠に青春を謳歌できる、若い不老不死人が加わったばかりに、今年の会合はいつになく愚痴の多いものになってしまった。



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