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ホラー短編作品集

ビデオの中の人。

作者: 候岐禎簾

「ここけっこう雰囲気出てるな…」


「だろ??来て正解だったろ?」


廃墟マニアである俺達二人はまだ見ぬ廃墟を探してS県北部のある山間部へと来ていた。

この地域には昔、T村という村があったのだが市町村合併で他の市や町と一緒になり地図からは無くなった。その後、少子高齢化と過疎化の波に呑まれ今では住んでいる人もほとんどいない。

俺達はこの地域にオススメの廃墟があるという情報を耳にしてここまでやって来た。

なんでもかなりのいわくつきの廃神社らしい。

自然と神社へと続く階段を上がる速度が早くなる。

早く見てみたい。そしてその姿をビデオカメラに残したい。

カメラを手に持った手が震える。

俺は早く廃神社を見たいという衝動で興奮していた。

階段を上がりきった俺達の前には朽ちるに任せたかなり大きな神社がそこにあった。


「建物も取り壊されておらず、当時のままだな…」

一緒に来ている友人の良平がそう言った。


「あぁ、本当だ。いいな。ここ。さっそく周辺を探索してみよう!」


俺達は廃神社へと足を踏み入れた。


一通り神社の周りをビデオカメラで撮りながら歩いてみる。

手入れがされてない神社の敷地内はれ放題だ。

ビデオカメラをゆっくりと廃神社の境内へ向ける。


その時だ!!!


ガサガサ…。


中になにかがいる。


俺と良平にとっさに身構えた。


「にゃーお!」

黒猫が飛び出してきた。


「なんだ、猫か…。驚かすなよ」


猫は雑木林の方へ消えていった。


「本当にビックリした。幽霊かと思った」


「幽霊なんていないよ。ほら、ここから良平ビデオカメラ撮ってみろよ!ほらっ!将来の夢カメラマンだろ」


俺は良平にカメラを渡した。


その後、俺達は一時間ほど境内と神社周辺を探索して家路についた。

たっぷり廃神社を映像に残すことができて、俺達はとても満足した。




一週間後、俺のアパートで撮影した廃神社の映像を見ることになった。


「いやぁ楽しみだな!」

良平は笑顔でそう言った。


「あぁ、廃神社ってなかなか映像に残す機会ないもんな。俺達、廃墟マニアにとってこんな嬉しいことはないよな」

俺は良平にそう言った。


ビデオを再生する。


最初は何の変化もない廃神社の映像が続く。

我ながらよく撮れてるなと思った。


映像も後半に差し掛かったその時だ。


最初にその「異変」に気づいたのは良平だった。


「あれ?お前、いつから黒いリュック背負ってたの?持ってきてた?」


「何言ってんだよ。良平。俺、リュックなんて背負ってなかったぞ」


「いや…。だって……。このビデオの映像見てみろよ」

良平はテレビを指差しながらそう言った。


「俺はビデオに映った自分を注意深く見る」


背負ってる。たしかに俺は途中から黒いリュックを背負ってる。


いや、これはリュックじゃない。


人だ!!


黒っぽい着物を来た老婆ろうばだ!!


その瞬間、ビデオのアングルが変わり、俺の背中がアップで映った。


老婆の顔がぐるりと曲がりカメラを見つめてくる。


目がない。


目がないのだ。


目がある部分はただくぼんでいるだけだ。

そしてその老婆はカメラを見ながらニヤリと笑った。


その途端、ビデオの映像が消えた。

良平がリモコンでビデオの再生をオフにしたようだ。


「も、もう見るのやめようぜ…。なんかの見間違いだよ。きっと。映像に映ってたおばあさん、あの時いなかったぞ。あぁもしかしてお前、俺を驚かそうと思ってビデオになんか細工でもしたんだろ?」


青白い顔をして震えながら良平は俺にそう言った。


その時だ!


「オイ、お前ラさイゴマデ映像ミロよ」


ビデオに映ってた老婆が俺の耳元でそうささやいた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 短い、シンプルなシーンながらも、ぞっとしました。 果たして最後には何が。 評価させて頂きます。
[良い点] 深夜に読むと怖さ倍増ですね。自分も廃神社に行っている気分になっていたので、最後はぎょっとしました。
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