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#? Family

 目を覚ますと白い天井が見えた。

 わたしは、大きなベットに横になって寝ていたみたい。

 起き上がりたいけど、身体が気怠くてまったく力が入らない。

 仕方なく頭だけを動かしてまわりを見てみると、わたしの右腕に点滴が打ってあり、小タンスの上には寄せ書きの色紙が置いてあった。

 ここは病院……? どうして、わたしここに……。

 今いる場所を把握したところでドアが開かれ、白衣をきたおじいさんが入ってきた。

 目を見開いて、ずっこけそうになりながらもわたしのところに来て、わたしの目の前で手を振った。


「ソアーヴァちゃん、先生が見えてる?」


 答えようとしたけど、口の中がカラカラでうまく声が出なかった。


「何だい! 何を言いたい!」


 今度はわたしの口元に耳を近づけて、わたしの言葉を必死に聞こうとした。


「……み……ず……」


 なんとか絞り出して言葉にして出すと、おじいさんは慌てて水を取りにいった。

 おじいさんじゃなくてお医者さんかな? 白衣着てるしそうなんだろうなぁ。

 少し待っているとお医者さんがコップ一杯に水を入れて戻ってきた。


「ゆっくり飲むんだよ」


 起き上がろうとしたけど、全然力が入らなくてお医者さんに起こしてもらった。

 水もお医者さんに飲ませてもらうことでやっと口の中が潤った。


「今、お父さんとお母さんを呼んだからもう少し待っててね」


 お医者さんは、わたしの両親を出迎えるために一旦部屋から出ていった。


「一人になっちゃった……」


 ぼぉっとしていると、あるものがないことに気が付いた。

 あたりを見渡しても見当たらず、ベットの中にもそれらしきものがない。

 

「クローンにもらった楽譜がない……」

 

 どうしよう……。 せっかくもらったものなのに、こうもあっさりとなくしてしまった。

 自分の情けなさに落ち込んでいると、部屋の外からドタバタと騒がしい足音が聞こえた。


「ソア!!」


 ドアが一気に開かれるとわたしのパパとママがいた。

 二人とも顔に笑みを浮かべて涙を流した。


「よかった、本当によかった!」


 二人はわたしをきつく抱きしめて何度も「よかった、よかった」と涙を流してつぶやいた。

 わたしは、今の状況がつかめないのだが……。




 落ち着いたパパとママの話を聞くと、どうやらわたしは交通事故にあって意識不明の重症に陥ってたみたい。 半年も目が覚めないまま、ずっと寝たっきりだったらしい。 植物状態というやつ。

 植物状態ってことは、半分死んでたことになるのかな?

 いまいちピンっとこないけど、わたしの状況はわかった。

 それに、身体もだいぶ動かせるようになった。

 

「大事をとって今日も入院させますが、大丈夫そうなら明日にも退院できますよ」


 お医者さんはパパとママにそう伝えると部屋を出て行った。

 

「そういえば、パパの部屋にピアノあったよね?」

「あぁ、あるぞ。 パパの仕事道具だからな。 どうした、弾きたいのか?」

「うん、ちょっと弾きたい」


 ぱぁっと子供のように顔を輝かせるとママの手を握って喜んだ。


「聞いたか、ママ!! ソアがピアノ弾きたいって! 今までずっと弾きたくない、弾きたくないって拒絶してきたのに……とうとう弾きたいって!!」


 ママはそんな子供っぽいパパに優しく微笑み「よかったですね」と一緒に喜んだ。


「っで、ソアはどんな曲が弾きたいんだ? パパ、なんでも用意するぞ!」

「弾きたい曲があったんだけど、楽譜……なくしちゃって……」

「なく……した?」


 頭を傾げて言葉の意味が分かってないみたいだ。


「あっ! んん、何でもないの。 楽譜はいいから自分で作りたいの」


「作るのはいいけど、ソアはピアノ弾けないだろ。 まずはちゃんとした楽譜から練習した方がいいんじゃないか」


 わたしはとびっきりの笑顔をつくるとこう言った。


「明日、聞かせてあげる」


 楽譜はなくなっちゃったけど、何もクローンの世界に音を届けるための楽譜ではない。

 だったら、自分で作った曲を響かせよう。

 時間はかかると思うけど。約束は守らないといけない。

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