満員電車は悪意の塊
携帯投稿なので、多少読みづらいかもしれません。
定刻通りに電車がホームにやってきた。田中が普段乗る電車だ。
この電車は快速で、たくさんのサラリーマンや学生が乗っている。田中もその一人だ。
扉が開くと、人が激しく乗り降りする。田中は人の流れに乗って電車に乗った。
電車内は毎日と変わらない顔ぶれだった。満員電車にはよくあることだが、ほとんどの人が毎日同じ車両に乗る。名前こそ知らないものの、顔なじみである。
いつも朝刊を読んでいる眼鏡のサラリーマン。立ったまま眠る禿げたサラリーマン。携帯をいじくる女子高生。チャラチャラした格好の若者。
電車に乗って次の駅に着くと、若者の前の席が空いた。すかさず若者が座る。若者の隣にいた女子高生は悔しそうな表情を見せる。
禿げたサラリーマンはむっとしながら、電車内に独特の体臭を振り撒く。
「んっ」田中は思わず息を止める。
眼鏡のサラリーマンは朝刊を大きく広げた。その紙の端が田中の顔に当たる。
(ちくしょう……)田中は顔をしかめる。
しばらくして若者が電車を降りた。空いた席に女子高生が座る。田中は思わず舌打ちしてしまう。
その時、女子高生の隣の席の人が立ち上がり、他の車両へ移動を始めた。田中の目の前の席だ。
しかし先に席に座ったのは、禿げたサラリーマンだった。思わず睨みつけてしまう。
(くそ、チャンスだったのに……。今日はついてない……)
禿げたサラリーマンは体を女子高生にあずけて眠る。女子高生は嫌そうな顔で携帯をいじくる。
女子高生は嫌々ながらも席を立つ。しかし空いた席には誰も座りたがらない。禿げたサラリーマンが倒れこんで眠っているからだ。
周辺の人たちが一斉に舌打ちをする。初めて息があったように思えた。思わずハイタッチをしたくなってしまうほどだ。
「次は東京ー。東京ー。終点です」
(ああ、今日も長い通勤だった。乗り換えはあるけど一駅だけだ。今日も勝ったんだ)
田中はこうして電車を降りた。乗り換えをしようと、別のホームにいくと人だかりができていた。どうしたのかと思った時、アナウンスがあった。
「○○線、人身事故の影響で大幅に遅れが出ております。お忙しいところ、ご迷惑をおかけしております……」
今日も長い一日になりそうだ。田中は深いため息をつき、人だかりの中に入っていった。
ありがちな光景。