手紙・9
小さな笑みを浮かべていた。
ソファに座りゆったりと文面に目を通しながら佐恵子は笑っていた。心から由紀子からの手紙を喜べるようになってきていた。現実の世界の人々よりも、より由紀子の手紙のほうが自分のことをわかってくれているように思えた。
あの夜、修平は出て行ったきり2日過ぎても帰ってきていない。祥子ともあれ以来、連絡がとれない。
今、佐恵子は「孤独」という言葉の意味を肌身で感じ取っている。
ねえ、私も佐恵子もいったい修平さんにとってどんな意味があったのかしら。
なぜ、私は死んだのかしら。
不思議な疑問だけど、私の死がどんな意味があるのかわからなくなってきちゃった。もちろん、自分の死を悔やむつもりはないわ。私は自分で死を選んだんだもの。私にとって生きるということは死ぬこと以上に意味がないことだから。
佐恵子にも同じことが言えるんじゃないの? 佐恵子がそこにいることにどんな意味があるっていうの?
私たちはみんな入りこんではいけない世界に入りこんでしまったのよ。
私がまず第1にそれに気づいて、佐恵子が次に気づいた。それだけのことよ。
もう悩まないで。
もう悩む必要なんてないのよ。
FROM YUKIKO
由紀子がそばにいる。
佐恵子は今はっきりと由紀子の存在を感じ取ることが出来た。
「ねえ、そこにいるんでしょ」
答えはなかった。
佐恵子は今、話し相手が欲しかった。自分の言葉を信じてくれる相手が欲しかった。今、それが出来るのは一人しかいない。
「ねえ、由紀子……話をしようよ」
ふらりと立ち上がった。
由紀子に会いたい。由紀子と話がしたい。
「ねえ……由紀子……あなたの声を聞かせて」
由紀子の心が感じる方へ向かい、ゆっくりと歩みはじめていた。窓から吹きこんでくる風が心地好く自分を包みこんでくれるような気がした。




