09
赤く、染まる景色に何度絶望したことか
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あの戦から帰ってから、どうしても気になっていたことがあった。
自分らしくないとも思った。
血だらけになった自分
脳内に響く無数の呪いの言葉
「裏切り者」
「その咎は二度と許されることはない」
「許さない、許さない、許さない!」
「死んでしまえ」
もう、意識を保つことができない
身体も重くて動かない
閉じようとする瞳
真っ赤に染まった視界
それでも、いつも
最後に見える、美しいエメラルド色
そうして、何度も目を覚ます。
「っ……は、っ…………」
暗闇の中、髪を掻きあげ枕元に置いてある剣に手を伸ばした。
騎士として剣を自らの近くに置くのは当然。
しかし、此処まで頻繁に手にとるのは家族と共に住んでいた幼い頃、盗賊が近くに出たと聞いた時以来だろうか。
「…………らしくない、な……」
ベットからゆっくりと抜け出し、鞘に収めたままの剣を持ち、近くのテーブルに置いている水を一気に飲み干す。
喉を通りすぎてゆく水の感覚が妙に自分を浄化させるような感じがした。
最近は、何かと夢見が悪かった。
しかも見るのは同じ夢。
あの戦の時の記憶のような、そうでないような。
ローベルトは自らの掌をじっと見つめる。
あの言葉は、きっと自分を恨んでいる者たちの声なのだろう。
この手で何人の命を奪い、そして犠牲にしてきたのか。
そもそも、始まりは自分の家族を―――――
「……………何を、今更…」
ぽつりと呟いた声は、自分以外誰もいないうす暗い部屋に消えてゆく。
月明かりだけが、手元にある剣を鈍く光らせる。
「………あの、下女…」
そうして夢の後思いだす、あの日の庭園で見た光景。
真っ白の花を沢山抱えた彼女。
エメラルドの澄んだ瞳。
『――――――を――――――――呼び――――――せ』
「っ、……」
『――――――――――音を―――――――』
「………、っ、……」
『―――――――――す―――――再生せよ』
脳内に響く美しい声と、同時に襲ってくる頭痛にローベルトは掌に自らの爪を食い込ませた。
金色の瞳が歪められ、同時に、手にしていた剣が床に落ちる音が響く。
胃から全てが逆流してくるのをなんとかこらえながら、壁に身を預けずるずると座り込む。
鼓動が痛い
息をゆっくりと吸い込んで、自らの腕を自らの掌で抑え込む。
脳内にちらつくエメラルド
「…………何か、知っているのか」
窓の外は、降り始めた雪に月光があたりきらきらと静かに輝いていた。




