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08



ほら、後悔。




×××08×××




「リアっ、第四騎士団の隊長と恋仲だったの!?」

「結婚が決まってるって本当!?」

「………………」

「式はいつなの!?」

「何処で知り合ったのよ!?」



洗濯場の片隅でひとつの集団ができていた。

その中心に居るのはリア。彼女を取り囲むのは彼女と同じ下女達である。


「……………付き合ってない」

「えー!?嘘だぁ!」

「貴方と隊長が二人で会っていたって言ってた子がいたけど?」

「それは、私が落した花を拾ってくださっただけ」

「えー!でも、リアなら美人だし」


その言葉に、リアは手からずり落ちそうになっていた替えのシーツを抱え込む。

かれこれ下女仲間に話しかけられて10分は経過しただろう。

今日の仕事をすべて終え、宿舎へ帰ろうとした矢先の出来事だった。

正直、疲れていて、まともに相手をするのもキツイというのに。



「あのねぇ……もし、仮に私が美しかったとしても、騎士隊長ともあろう方が、親もいない、どこの出かも解らない娘と付き合う筈がないでしょ?」

「えー…でも…」

「じゃ、私そろそろ宿舎に戻るから。皆も、早くしないとお風呂閉められちゃうわよ?」

「あ、本当!もうこんな時間!」

「急ぎましょ!」


リアの言葉に窓の外を見た下女達は駆け足で廊下を進んでゆく。

それに対してリアはひとりぽつんと、ゆっくりと廊下を歩いた。




脳内に蘇る昨日の記憶。

実際、助けてしまったあの人のその後が気にならないとは完全には言いきれなかった。

だから、あの日、あの庭で出会ったときは正直ほっとしたのだ。

彼は生きていた。

ただ、心臓が不協和音を奏でたのが今でも忘れられない。

金色の瞳がまっすぐにこちらを見つめてきたときは、見透かされているのかと思うほどで。




「………これで、よかった」



呟いた声は、月が昇り始めた闇夜に消える。


白い花を髪の毛につけられた時は何事かと思ったが、彼はその後ゆっくりとした足取りと無表情のまま戻っていってしまって。

その真意を聞きとることはできなかった。




「っ………!?」


何か視線を感じて、振り返れば一羽の鷹が巨木にいるのが目に入る。

その瞳は皮肉にも、彼と同じ美しい金色。


「……………、」


言葉を発しようとしたが息を吸い込んだ段階で止める。

リアの目にはその鷹が普通の鷹には見えなくなっていた。明らかに、魔術の類。



「リア!」

「……マーサ」

「どうしたの、こんなところで?」

「ううん、何でもない。今から宿舎に戻るところ」

「明日は、王妃様のご出発が早いから…私達も早いでしょ?早く行きましょう」

「うん、そうね」


マーサの言葉に相槌を打ちながらも、ちらりと横目で鷹をみる。

しかし、もうそこには鷹の姿は跡形も無かった。













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